この記事で以下の内容がわかるようになります。ボリュームがありますが、介護保険に関連するものを網羅的に解説しています。介護保険制度に関するものは介護福祉士国家試験では、毎年確実に6問ほど出題されるので重要です。
- 介護保険制度のしくみ
- 介護サービスってどんな種類があるのか
- 介護サービスの具体的な内容
- 介護サービスの利用開始までの流れ
- 指定サービス事業者とは
- 介護保険法改正の歴史
まずは介護保険制度のしくみについて理解しておきましょう。
介護保険制度のしくみの基礎的理解
保険者
保険を運営する側を保険者(ほけんしゃ)、わたしたちのように保険料を納めている側を被保険者といいます。
介護保険の保険者は、市町村及び特別区とされ、介護保険特別会計を設置して介護保険に関する収入と支出を管理することとされています。ただし、小規模な市町村については、広域連合や一部事務組合など特別地方公共団体である広域自治体も保険者となることができます。
広域連合と一部事務組合について補足説明しておきます。
一部事務組合
一部事務組合というのは、 2つ以上の地方公共団体が、その事務の一部を共同処理するために設ける特別地方公共団体です。
例えば、ABCという3つの村があって、その各々が、ゴミ処理のために、ゴミの回収ルートを設定したり、可燃ごみの焼却施設を運営してるとします。ただ、どの村もやってる内容は似たようなものになるので、3つの村が別々にやるよりも、ごみ処理業務に関しては、まとめて、別の組織を作って一括で管理したほうが効率よいのでは?ということで作られるのが一部事務組合です。ABCゴミ処理一部事務組合みたいな感じです。
実際に存在する一部事務組合の例をあげると、”東京23区清掃一部組合”なんかがあります。東京23区すべてが入ってる清掃に関する一部事務組合で、可燃ごみの焼却施設の運営管理などを行っています。
広域連合
廃棄物処理や地域振興など、都道府県や市町村の区域を超える広域行政需要に対応するために設立できる特別地方自治体です。
広域連合と一部事務組合は同じに見えます。
基本的な目的は同じですね。違いは、文字通り広域連合の方が「より広いエリア」をカバーすることを想定されていて、このために広域連合の方がより強力な権限を持つことができるという点です。
強力な権限を持つために、広域連合には次のような特徴があります。
- 議会がある。
普通の地方公共団体の区議会や市議会と同じように議会があって、議決権や調査権などがあります。議会があるんだったら、その議員はどうやって選ばれるのか?というと、参加している各自治体の 議会の議員(つまり市議会議員や区議会議員なんかですね)その中から 各自治体の議会の中で選挙を行い、決められます。選挙カーで周りながら住民の皆さんに一票お願いしますーというような選挙ではありません。 - 広域連合の長(市長や知事のようなもの)がいる
- 住民による直接請求ができる。
広域連合は地方公共団体なので、その構成団体の住民(例えば、葛飾区が参加している広域連合なら葛飾区民ですね) その住民が議会の解散とか職員のリコールなんかを直接請求できます。
被保険者
介護保険は、40歳になった月から全ての人が加入することになり、支払い義務が生じます。年齢によって区分が分かれており、介護保険の被保険者は次の2種類です。
- 第1号被保険者
市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者 - 第2号被保険者
市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者
第1号被保険者は、原則として年金からの天引きで市区町村が徴収します(特別徴収)。ただし、介護設備の整備状況や要介護者の人数など、自治体によってさまざまなので、自治体ごとに金額が違います。
第2号被保険者は加入している健康保険と一緒に徴収されます。
第1号被保険者の利用者負担割合は、収入に応じて1割~3割と変わりますが、第2号被保険者は、1割で固定されています。
また、在日外国人は、市町村に住所を有していると認められればその市町村の被保険者となることができます。
被保険者の資格喪失の時期と届出
資格喪失の時期
- 市町村の区域内に住所を有しなくなった日の翌日から
- 市町村の区域内に住所を有しなくなった日に他の市町村の区域内に住所を有するに至ったときは、その日から
届出
- 第一号被保険者は、被保険者の資格の取得および喪失に関する事項などを市町村に届け出なければなりません。第一号被保険者に限定しているのは、第二号被保険者は 健康保険組合で把握できるので届出の必要がないからです。
- 第1号保険者の属する世帯の世帯主は、第1号被保険者に代わって届け出ることができる。
住所地特例
介護保険施設、特定施設(有料老人ホーム、軽費老人ホーム)、養護老人ホームに入所することにより、施設所在地に住所を移した者は、施設入所前の住所地の市町村を保険者とします。2か所以上の施設を移った場合は、最初の施設入所前の所在地の市町村を保険者とします。
足立区に住んでいた人が、墨田区の特養に入所した場合は、保険者は足立区になります。
保険給付
介護保険給付の対象となるのは、被保険者(第1号被保険者または第2号被保険者)のうち、要介護状態または要支援状態と認定された者です。
介護保険の給付対象となる受給権者(要介護者・要支援者)は次の2種類があります。
- 要介護・要支援状態にある65歳以上の者(第1号被保険者)
- 要介護・要支援状態にある40歳以上65歳未満の者(第2号被保険者)であって、その要介護・要支援状態が特定疾病(末期がん、脳血管疾患、関節リウマチなど、16種類の定められた疾病)によって生じたものである者。
第2号被保険者は特定疾病でなければ、介護保険を利用できません。例えば、50歳の人が何らかの事情で要介護状態になったとしても、それが特定疾病によるものでなければ、介護保険を使うことができません。 この場合は、障害者総合支援法による障害福祉サービスを受けることになります。
特定疾病は16種類で、丸暗記する必要はありませんが、病名をみて特定疾病かそうでないかは判断できたほうがいいと思います。特定疾病で、過去問の選択肢などでみかけたことのある病名を紹介しておきます。
末期がん
関節リウマチ
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
後縦靭帯骨化症
骨折を伴う骨粗鬆症
初老期における認知症
パーキンソン病
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
糖尿病の三大合併症(具体的には、糖尿病性網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害)
脳血管疾患
慢性閉塞性肺疾患
あたりです。このへんの病気に関しては障害の理解や発達と老化の理解という科目で詳しくやります。
保険給付は、
- 介護給付
要介護状態の被保険者が受けられる保険給付 - 予防給付
要支援状態の被保険者が受けられる保険給付 - 市町村特別給付
その他、要介護状態または要支援状態の軽減または悪化の防止に資する保険給付として、市町村独自のサービスを条例で定めるもの
となっています。
市町村特別給付は、オムツの給付とか、配食サービスとか、各自治体で独自に条例を定めているので、細かい内容は試験には出しにくいと思います。なので、介護給付と予防給付以外にも自治体が独自に行える特別給付がある、と覚えておく程度でいいと思います。
介護給付も自分の好きなだけ受けられるわけではなく、上限があります。要支援1,2 要介護1,2,3,4,5の順に限度額は高くなります。その人の要介護状態の区分の支給限度額を超えないように、必要な介護サービスを選んでいくことになります。
介護保険サービスの自己負担額
要介護認定を受けた人が、介護保険サービスを利用すると、その対価として介護事業者に行政から「介護報酬」が支払われます。介護報酬は、利用者の「自己負担」と「介護給付」から成り立っています。
原則1割負担なので、介護報酬として1000円支払わなければならないなら、900円が介護給付として支払われ、自己負担は100円ですみます。
原則1割負担なのですが、ある程度の収入がある高齢者は自己負担割合が増えます。
一定以上の所得のある場合は2割、その中でも特に所得の高い場合は3割となります。
ちなみに第2号被保険者は、収入によらず、自己負担割合は1割です。
介護給付の財源の構成割合は
みなさんの給料から天引かれてる介護保険料が半分の50%、国の負担額が25%、都道府県と市区町村がそれぞれその半分の12.5%を負担しています。
次に、介護サービスの利用開始までの流れをかんたんに説明しておきます。
介護サービスの利用開始までの流れ
- STEP1申請
介護保険を利用してサービスを受けるには、介護が必要かどうかの認定を受けるため、市区町村に申請を行わなければなりません。
被保険者本人が申請に行けない場合は、代行も可能です。
この場合、法律上は申請代行できるのは家族のほか、居宅介護支援事業者と介護保険施設ということになっています。
また、委任を受ければ、地域包括支援センターや民生委員等が代行することも可能です。
- STEP2認定調査と主治医意見書の作成
新規認定の場合は、市区町村から認定調査員(役所職員や委託を受けたケアマネジャー等)が被保険者を訪問します。
現在受けているサービス状況や頻度、家族の状況などの概況調査、本人や家族から74項目にわたる調査票による聞き取りを行います。この調査票はマークシートで全国一律の内容です。
また、特別に配慮すべき点があれば、特記事項として記録します。
本人や家族から74項目にわたる調査票(マークシートで全国一律の内容)による聞き取りを行います。
これと並行して被保険者のかかりつけ医(主治医)か、かかりつけ医がいなければ、市町村が指定する医師の診察を受けて、疾病または負傷の状況など医学的な点につき主治医意見書を書いてもらいます。
主治医意見書は役所のほうで作成してくれるので、何か用紙に記入してもらうとかは必要ありません。診察してもらうだけですが、夜間頻尿で、その都度介助のために起きなければならない等、困りごとがあれば伝えておいた方が、実情に合った判定をしてもらえます。
- STEP3一次判定
調査票及び主治医意見書の一部の項目はコンピューターに入力され、コンピューターによる一次判定が行なわれます。
- STEP4二次判定
市区町村に置かれる介護認定審査会(保険、医療、福祉に関する学識経験者5名程度で構成される。)が調査票と主治医意見書の2つのデータをもとに要介護認定の審査を行い、要介護状態に該当するか、要支援状態に該当するか、あるいは介護サービスを必要としないのかを最終的に判断します。
介護認定審査会のメンバーは市区町村長が任命します。
- STEP5通知
市区町村は、原則として申請のあった日から30日以内に要介護・要支援認定の結果を被保険者に通知しなければなりません。申請から認定まで1か月近くかかるため、緊急その他やむを得ない理由により介護サービスを受ける必要が生じた場合は、要介護・要支援認定を受ける前でも介護サービスの利用ができます。この場合の費用は利用者が立て替え、あとでその9割(あるいは7割か8割)が戻ってくることになります。
要介護・要支援認定がなされると、その申請のあった日にさかのぼって効力が生じます。また、要介護者や要支援者に該当しないと認められた時は、理由を付して被保険者に通知されるとともに、被保険者証が返付されます。 - STEP6ケアプランの作成
要介護・要支援認定がなされると、ケアマネージャーなどにより、ケアプラン(介護サービス計画)が作成されサービス利用開始となります。
実際のサービスは指定サービス事業所が提供します。適当に事業所を立ち上げてすぐに介護保険を使ったサービスを行おうと思ってもできないのです。
指定サービス事業者とは
介護保険を使って、サービスを提供しようとする事業者はサービスの種類ごとに定められた指定基準を満たすものとして、事業所ごとに都道府県知事または市区町村長の指定を受けなければなりません。
指定といわれるとちょっとイメージがしにくいのですが、要は「おたくの事業所は定められた基準(人員配置等)を満たしてるので、介護保険を使ったサービス提供の仕事をしてもいいですよ」というかんじです。
事業者からの申請を受けて、
都道府県知事が指定をするサービスは、次の3つです。
- 居宅サービス事業者
- 施設サービス事業者
- 介護予防サービス事業者
市区町村長が指定をするサービスは、次の2つです。
- 地域密着型サービス事業者
- 居宅介護支援事業者
「都道府県知事が地域密着型サービス事業者の指定・監督を行う」というような間違い選択肢を介護福祉国家試験の過去問でみたことがありますね。
指定の更新
指定サービス事業者の指定等について欠格要件が規定されており、サービス事業者は6年ごとに指定の更新を受けなければなりません。
ここから具体的に介護サービスを説明していきます。
介護サービスでは、省令の「運営基準」で、各種サービスの「提供拒否の禁止」が規定されており、「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」と明記されています。提供を拒む正当な理由には、
(1)当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合
(2)利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合
(3)入院治療の必要がある場合
等が挙げられています。
※現員は現在の人員のことで、要はキャパオーバーのことです。
まずは要介護1~5の人が受けることのできるサービス(左下のピンク色)を見ていきます。
厚生労働省
※↑図の施設サービスの介護療養型医療施設は介護医療院に読み替えてください。
要介護1~5の人が受けられるサービスは、大きく分けると、
都道府県が指定・監督を行うサービス
・居宅サービス
・施設サービス
と
市区町村が指定・監督を行うサービス
・地域密着型サービス
・居宅介護支援
の4つです。
ひとつずつさらに細かくみていきます。
居宅サービス
居宅における介護では、安全で正確な介護技術を踏まえたうえで、利用者の望む生活や価値観、人生観に沿う援助が求められます。具体的には、以下の点に留意しながら援助を進めます。
- 利用者の生活歴や価値観を知る。
- 機能障害や残存機能を把握する。
- 本人や家族の思い、家族の介護負担の現状を知る。
- 住環境、経済環境、地域の社会資源、医療関係者との連携のあり方を確認する。
- 利用者、介護者にとって使いやすい福祉用具の情報提供を行う
訪問介護(ホームヘルプサービス)
対象者は居宅の要介護者です。
居宅には軽費老人ホーム、有料老人ホーム、養護老人ホームにおける居室も含まれます。
居宅サービス計画というケアプランに基づいてサービスが提供されます。
訪問介護の提供にあたっては、個別サービス計画として訪問介護計画を作成し、その内容について利用者またはその家族に対して説明し、同意を得なければなりません。
訪問介護計画を作成するのはサービス提供責任者、いわゆるサ責です。
介護福祉試験の受験資格になっている実務者研修を修了すれば、なることができます。
サービス提供責任者の業務は、利用者宅に出向き、契約し、ニーズをアセスメントし、居宅サービス計画(ケアプラン)に基づいて、訪問介護計画を作成します。また、利用者本人だけでなく、家族や介護支援専門員、サービス提供機関との調整を行い、訪問介護員に指導やアドバイスも行う、訪問介護事業所の柱となる役職です。
訪問介護事業所にはサービス提供責任者の配置が義務付けられています。訪問介護事業所だけで、施設サービスなどの他の介護保険サービスではいない職種です。
サービスは、生活援助サービスと身体介護サービスに分けられています。
生活援助サービス
掃除、調理、洗濯などの日常生活の援助です。介護保険制度の生活援助で介護給付費が支給されるのは、利用者が単身の世帯に属している場合か、または家族等の障害、疾病などの理由により、利用者や家族等が家事を行うことが困難な場合とされています。
ただし、元気な家族が同居している場合でも生活援助サービスを受けられることはあります。例えば、 家族が昼間は仕事のために外出している場合の、昼食の準備や、洗い物などです。元気な家族が同居してると始めから生活援助を認めないケアマネや保険者がいるようですが、それに対して厚労省からは「きちんとアセスメントしたうえで必要であれば利用するように」という指導も出ています。つまり、これこれこういう理由でこのサービスが必要なんです!としっかりした根拠があるならサービスを受けることができます。
生活援助サービスの具体例は、
- 掃除
ゴミ出し、利用者本人の部屋の掃除 - 洗濯
利用者本人の衣類の洗濯、干し、たたみ、整理 - 食事準備
食材の買い物、調理、配膳、片づけ - その他
爪切り、血圧測定、耳掃除
などです。
比較的軽度の人ほど生活援助サービスの利用の比重が高いです。予防的観点からも一緒に作業をすることで、自立に向けた支援をすることが大切です。
食事を作ってあげる、掃除をしてあげるというような“お手伝いさん”にならないように注意しなければなりません。
身体介護サービス
身体介護サービスは、身体に直接触れて行う介護のことをいいます。具体的には、
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 清拭
- 更衣介助
- 歩行介助
- 体位変換
- 移乗介助
などです。
比較的重度の人ほどサービス利用の比重が高くなっています。
訪問介護サービスでは受けられないもの
訪問介護は、前提として利用者本人だけを対象としたサービスです。利用者本人が生活を送るうえで日常的に必要ではない行為や、医療行為等は訪問介護で受けることはできません。
具体例は以下のようなものです。
- 訪問介護員が行わなくても生活に差支えがないもの
家具の移動、電気の修理、窓のガラス拭き、庭の草むしり、ペットの散歩 など - 医療行為
インスリンの注射、摘便、褥瘡の処置、点滴 など
※経管栄養と喀痰吸引に関しては、定められた研修過程を修了するといった一定条件を訪問介護員と事業所が満たしている場合のみ可能
参考テキスト⇒医療的ケア - 利用者本人以外へのサービス
家族の分の食事を作る、家族の部屋の掃除、家族の衣類の洗濯 など
訪問入浴介護
訪問入浴は、看護師1名を含めた3名(または2名)のスタッフが自宅に訪問して、専用の浴槽を使って入浴をサポートしてくれる介護サービスです。浴槽の設置から片付けまでを利用者のすぐ近くで行います。その日の利用者の体調により、洗髪や足浴などの部分浴や清拭に切り替える場合もあります。要介護者本人が自力での入浴が困難であったり、家族のサポートだけでは入浴が難しい場合、こうしたサービスを受けることで、ご本人の清潔が保たれて、家族の負担も軽減されます。
訪問看護
地域の訪問看護ステーションから、看護師や理学療法士・作業療法士、言語聴覚士等が利用者が生活する場所へ訪問して医療的ケアを提供します。訪問看護は病気や障害をもちながら在宅療養する人は全て対象になりますが、 訪問看護を受けるには訪問看護指示書を主治医から交付してもらうことが必要です
インシュリンの注射や摘便などが必要な場合は、介護職では行う事ができないため、訪問看護をケアプランに組み込んでおかなければなりません。
訪問リハビリテーション
訪問リハビリは、主治医が必要と判断した要介護者の自宅に、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職が訪問しリハビリテーションを提供します。利用するには主治医にリハビリ指示書を書いてもらうことが必要です。
訪問リハビリのメリットは、
- 個別で機能訓練が受けられるため、きめ細かく配慮してもらえる
- 自宅での日常生活に沿った機能訓練を受けられる
- 利用者のペースで機能訓練を受けることができる
などがあります。
居宅療養管理指導
1人暮らしや老々介護などで管理が行き届かない場合や、在宅介護で家族では手が回らないケースなどで利用されます。医師や歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などの専門職が、利用者宅に訪問して利用者やその家族に対して自宅で生活する上での注意点などを指導します。医師・歯科医師以外の職種によるものは医師・歯科医師による指示が必要です。必要に応じて看護師などから医療行為を受けることはありますが、医師による医療行為は行われません。
最近食が細くなり、好きなものしか食べないので痩せてきた。ちゃんと栄養がとれるようにおじいさんを指導をして欲しい。
通所介護(デイサービス)
デイサービスは、 利用者を送迎車で送り迎えしてもらい、入浴や昼食、排泄介助、機能訓練や看護師による健康チェック、また、レクリエーションを通して、他の人と交流し、社会的孤立感の解消や認知症の予防を図ることができます。それに加えて、家族などの介護者の身体的・精神的負担の軽減も目的とされています。これをレスパイトケアといいます。
なお、単に「通所介護」という場合、認知症対応型通所介護に該当するものは含まれません。
通所介護では、個別計画である通所介護計画を作成し、個別ケアを実践します。通所介護計画作成のためには、ケアマネジャー等が作成した居宅サービス計画(ケアプラン)から、利用者が通所介護に何を求めているのかを明確に把握する必要があります。
通所リハビリテーション(デイケア)
デイケア(通所リハビリテーション)は、医療機関や介護老人保健施設、介護医療院などで行っている通いでリハビリを受けられる介護保険サービスです。要介護高齢者を対象として、医師の指示のもとで、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といっ国家資格を持ったリハビリ専門職によるリハビリを受けることができます。
似た名前の「デイサービス」と比べると、デイケアはリハビリに特化していて、医師や看護師、国家資格を持ったリハビリスタッフなどの医療従事者が多数配置されているという点が特徴です。
デイケアのメリットとしては、医師や看護師がいるため、体調がすぐれない場合、すぐに診察や医療的処置をしてくれるということがあります。
サービス内容としては訪問リハビリと同じ部分もありますが、
- 専用の機器など、機能訓練を受けるための環境が整っている
- 集団機能訓練を通じて他の利用者と交流する機会があり、引きこもり解消にもつながる
- 食事や入浴などのサービスを受けられる
などのメリットもあります。
訪問リハビリとデイケアは、筋トレで例えると、パーソナルトレーナーを依頼するか、ジムに通うかみたいなかんじです。
ショートステイ
ショートステイは、短期的に施設に入所し介護・支援が受けられるサービスです。在宅で介護を続けていると、冠婚葬祭や出張などで自宅を数日間空けなければならない、介護者の体調不良など、一時的に在宅介護が難しくなる場合があると思います。そういう時に便利な介護サービスです。また介護者のレスパイトケアになるという側面もあります。
ショートステイには短期入所生活介護と短期入所療養介護の二つがあります。利用者に医療が必要かどうかで使い分けます。
短期入所生活介護
短期入所生活介護は、 食事や入浴などの生活援助、レクリエーションがメインのサービスで、 特別養護老人ホームやショートステイ専門施設などで受けることができます。
短期入所療養介護
短期入所療養介護は、介護老人保健施設や介護医療院で、医師や看護師の人員配置が手厚く、医療ケアが充実しているのが特徴です。生活援助の他に、理学療法士、作業療法士などによる機能訓練や、医師の看護師による医療サービスが受けられるので、医療行為を必要とする要介護者の方でも安心して利用することができるます。 さらに、施設によってはターミナルケアも実施しているところもあります。
ターミナルケアというのは、回復の見込みがない末期の状態にある人に対して、残された人生を尊厳を持って過ごせるよう、身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな側面から総合的に支援を行うことです。
特定施設入居者生活介護
介護保険法で定められた特定の施設に入所している要介護者等について、その施設で、入浴、排泄、食事等の介護、生活等に関する相談等の日常生活上の世話、機能訓練および療養上の世話を行うサービスです。その特定施設の職員が直接介護サービスを提供するパターンと、その特定施設が外部のサービス事業者に委託して、介護サービスを提供するパターンがあります。外部のサービス事業者に委託するといっても、利用者がその外部の事業者といちいち契約を結ぶのではなく、利用者が契約を結ぶのはその特定施設だけで、ケアプランなども特定施設で作成します。なので利用者からみるとあまり違いは感じません。
特定施設とは何か説明しておきます。
特定施設とは、
①介護付き有料老人ホーム
②介護型ケアハウス
③養護老人ホーム
の3つで、定員が30人以上で都道府県から居宅サービスの特定施設入居者生活介護の事業者指定をうけたものです。
有料老人ホーム
老人福祉法に規定された居住施設で、以下の類型があります。
- 介護付き有料老人ホーム
有料老人ホームの職員が介護サービスを提供するタイプと、 有料老人ホームの職員が安否確認や計画作成等を実施して、介護サービスは委託先の介護サービス事業所が提供するタイプの二つがあります。 - 住宅型有料老人ホーム
介護が必要になった場合、入居者自身の選択により、地域の訪問介護とかの介護サービスを利用しながら、その有料老人ホームの居室で生活を継続できます。 - 健康型有料老人ホーム
介護が必要となった場合には、契約を解除して退去しなければならないタイプです。
有料老人ホームのタイプはこの3つで、特定施設として指定を受けられるのは、介護付き有料老人ホームのみです。
軽費老人ホーム
老人福祉法に規定された老人福祉施設です。
家庭環境や住宅事情、経済状況などの理由から居宅において生活することが困難な高齢者の住居確保のために、昭和38年に、 食事提供と生活支援サービスがある、軽費老人ホームA型が制度化されました。で昭和46年にA型から食事サービスを抜いて、緊急時対応などの少しの生活支援サービスだけの軽費老人ホームB型が制度化されました。そのあと、平成元年に制度化されたのが軽費老人ホームC型で、これがケアハウスです。A型とB型は、そもそも介護の必要がある高齢者が入居できないので、今後の高齢化社会において、高齢者の住居の受け皿にはなりにくいと考えられて、 介護サービスが提供可能なケアハウスに順次建て替えられてゆく方針が決定しています。
ケアハウスは身寄りがない、または家庭環境や経済状況などの理由により、家族との同居が困難な高齢者が、自治体の助成を受けて有料老人ホームよりも比較的低い費用で利用できる施設で、一般型と介護型の2種類があります。
一般型ケアハウスは、個人または夫婦のどちらかが60歳以上の高齢者が入居できる高齢者向け施設です。サービスの内容には掃除、洗濯などの生活支援サービスや、食事の提供、緊急時の対応などが含まれますが、 一般型のケアハウスには介護サービスがありません。そのため、介護が必要になった場合、外部の介護サービスを別途契約するか、退去する必要があります。
もうひとつの 介護型ケアハウスは、介護保険法における『特定施設入居者生活介護』という指定を受けた施設で、常駐のスタッフによる介護サービスが提供されます。入居できるのは、独居生活に不安がある、要介護度1以上で65歳以上の方です。一般型と同様のサービスに加えて、食事や入浴、トイレなどの介助、機能訓練や通院の付き添いなどのサービスが受けられます。 こちらは要介護度が上がったとしても住み続けることができ、看取りまで行ってくれる施設もあります。
2010(平成22)年度からは、都市部において居室面積や職員配置基準の特例を設けて利用料の低廉化を図った都市型軽費老人ホーム(定員20人以下)が設立できるようになりました。
入居者の定員が最大20人と少なく、アットホームな雰囲気の中で生活できて、従来のケアハウスでは必要だった入居一時金も必要ありませんが、施設がある市区町村の住民でなければ入居対象になりません。
まとめると、軽費老人ホームにはA型、B型、一般型ケアハウス、介護型ケアハウス、都市型軽費老人ホームがあって、A型、B型はなくなっていく方向で、特定施設の指定を受けられるのは介護型ケアハウスのみ。となります。
ここまでの説明で、有料老人ホームとケアハウスの違いがいまいちわからないと思う方も多いと思いますが、サービスの内容からみると実際おなじようなものです。じゃあ何が違うかというと、お金です。
有料老人ホームは、高齢者のための住居といえます。一方ケアハウスは、低所得の高齢者のための住居です。 基本的な役割として、低所得の高齢者を対象にしているので、入居については所得や資産の少ない方が優先されます。
あとは運営主体の違いです。有料老人ホームを主に運営しているのは民間企業で、営利目的で運営をしています。つまり商売です。
それに対して、ケアハウスを運営しているのは社会福祉法人や地方公共団体、医療法人などで、困っている人を助けるという側面がつよいです。
養護老人ホーム
老人福祉法に規定される経済的、社会的理由により地域で生活を維持、継続できない人のための福祉施設です。
もともとは介護を必要としない自立した65歳以上の高齢者で低所得などの原因によって自宅で生活ができないなどの経済的理由を持つ方が入所対象でしたが、2005年の介護保険制度改正で特定施設の指定を受けることができるようになりました。
特別養護老人ホームと名前は似ていますが、まったく別物の施設ですね。
特定施設はさっき3つと言ったんですが、少し補足があって、サービス付き高齢者向け住宅(いわゆるサ高住)も条件を満たせば、特定施設の指定を受けることができます。が、特定施設の指定を受けているのは、サービス付き高齢者向け住宅の8.5%程(令和3年8月時点)でそれほど多くないです。
長くなってしまいましたが、特定施設入居者生活介護の特定施設をまとめると、
- (介護付き)有料老人ホーム
- 介護型ケアハウス
- 養護老人ホーム
- 介護サービス付きのサービス付き高齢者向け住宅
の4つになります。
福祉用具貸与
福祉用具とは以下のように規定されています。
心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具および要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのもの
介護保険法
福祉用具貸与は、利用者ができる限り自宅で自立した日常生活を送ることができるように、福祉用具の利用を介護保険で支援するサービスです。指定を受けた事業者から、利用者の心身の状況、生活環境、要望等をふまえて、適切な福祉用具をレンタルできます。これにより、日常生活上の便宜を図り、家族の介護の負担軽減などを図ります。
レンタルできる品目は決まっていて、次のようなものがあります。
- 車イス
- 車イス付属品
- 特殊寝台(ギャッチアップや高さの調節ができるベッド)
- 特殊寝台付属品
- 床ずれ防止用具(ウレタンのマットレスや電動で体位変換を行えるエアマットなど)
- 移動用リフト(つり具の部分は除く)
- 認知症老人徘徊感知機器(設置した場所を通ったら音などで知らせるセンサー)
- 工事して取り付けるものではない、簡単に設置できる手すりやスロープ
- 歩行補助のための杖
- 自動排泄処理装置(ベッドに寝たままの状態で排泄を処理する装置です。 排便、排尿をセンサーが感知して、吸引、洗浄、乾燥を自動で行ないます。 おもに寝たきりの人や、自力での排泄が困難な人が利用します。)
特定福祉用具販売
居宅要介護者について行われる、福祉用具のうち入浴または排泄に関するものその他の厚生労働大臣定めるものを販売するサービスです。
これらの福祉用具は「特定福祉用具」と呼ばれていて、 他人が使用したものを再利用することに心理的に抵抗があるもの、また、使用によってもとの形態・品質が変化して、再利用できないものなどで、介護保険を利用して購入することが可能となります。
入浴や排泄に使用するものをレンタルにすると、衛生面でも精神面でもまずいですからね。
福祉用具貸与と特定福祉用具販売の具体的な品目を下の表に書いておきます。
福祉用具貸与 | 特定福祉用具販売 |
---|---|
車イス | 腰掛便座 |
車イス付属品 | 簡易浴槽 |
特殊寝台 | 入浴用椅子 |
床ずれ防止用具 | 浴槽用手すり |
手すり | 浴槽内椅子 |
認知症老人徘徊感知機器 | 浴室内すのこ |
移動用リフト(つり具の部分を除く) | 浴槽内すのこ |
自動排泄処理装置 | 入浴用介助ベルト |
移動用リフトのつり具の部分 | |
自動排泄処理装置の交換可能部品 |
※自動排泄処理装置
自動的に便や尿を吸引する福祉用具のひとつです。尿意を感じてから立ち上がってトイレに行くまでに時間がかかり失禁してしまうケースや、転倒などの不安があり夜間に起き上がってトイレまで歩くことに抵抗がある場合など、排泄動作に不自由のある高齢者に利用されています。
上の表を全部おぼえる必要はありません。その物品が福祉用具貸与か特定福祉用具販売のどちらか判断できれば十分です。
また2024年4月に施行された改正介護保険法で、特定の品目に関してレンタルと販売の選択制が導入されています。
比較的安いもので、購入した方が利用者の負担が抑えられると考えられる品目、具体的には
- 固定用スロープ
その場に設置して常時置いておくタイプのもので、室内の段差を車イスで上り下りする際に使われるものです。 - 歩行器
歩行器というと、車輪がついたシルバーカータイプのものを連想する方が多いと思いますが、ここで言う歩行器は固定式のタイプで、車輪の付いた「歩行車」は対象外です - 単点杖
- 多点杖
選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員または介護支援専門員が、福祉用具貸与か特定福祉用具販売のいずれかを利用者が選択できることについて、利用者等に対し十分説明するとともに、利用者の選択に当たって必要な情報を提供し、医師や専門職の意見、利用者の身体状況等を踏まえ、提案しなければならない、と定められています。
また、福祉用具貸与について、選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員が、利用開始後6月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、貸与継続の必要性について検討し、そのモニタリングの結果を記録し、その記録を介護支援専門員に交付することが義務付けられています。
施設サービス
介護保険の施設サービス
施設サービスは名前の通り、介護保険施設に入居して、施設サービス計画(ケアプラン)に基づいて行われる介護サービスです。
介護保険施設というのは、
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
の4つですが、介護療養型医療施設は廃止が決まっていて、介護医療院への移行が進んでいます。
介護保険施設は、公的施設の意味合いが強いので、施設を運営する母体は、地方公共団体や社会福祉法人、医療法人などに限られています。施設建設に補助金が出たり、運営する法人が法人税などの優遇を受けられるため、入所者の費用も有料老人ホームと比べて低く抑えられます。
あと細かいところですが、介護保険施設の運営基準において、事故発生防止等の措置を適切に実施するための担当者、いわゆる「安全対策担当者」を選任することが義務化されています。
安全対策担当者は、介護保険施設内での事故防止に関する指針の整備、研修の実施、職員への周知徹底など、施設内の安全対策を中心となって行い、介護事故の発生予防や、再発防止の役割を担います。
また、2024年4月に施行された改正介護保険法で、介護保険施設では、利用者の入所時及び入所後の定期的な口腔衛生状態・口腔機能の評価の実施が義務付けられています。
介護老人福祉施設と介護保険施設の違いなどがいまいちわからない方はこちらの記事を読んでみてください。
⇒違いは?|特別養護老人ホームと介護老人福祉施設と介護老人保健施設
地域密着型サービス
地域密着型サービス事業者の指定は市区町村が行います。原則として指定を行った市区町村の被保険者のみが利用できます。
地域密着型サービス事業所は、利用者やその家族、市町村職員、地域の代表者等に対しサービス内容等を明らかにすることにより、事業所による利用者の「抱え込み」を防止し、地域に開かれたサービスとすることで、サービスの質の確保を図ることを目的として、各事業所に「運営推進会議」の設置が義務づけられています。 以下で具体的な地域密着型サービスを説明していきます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
2011年の介護保険法改正時につくられたサービスで、 重度者をはじめとした要介護者の在宅生活を支えるため、日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護を一体的にまたはそれぞれが密接に連携しながら、定期巡回訪問と随時の対応を行うサービスです。唯一 24時間対応してくれる在宅介護サービスです。
事業所によって、介護・看護一体型と介護・看護連携型があります。
- 介護・看護一体型
一つの事業所で訪問介護と訪問看護のサービスを一体的に提供するもの - 介護・看護連携型
訪問介護事業所と訪問看護事業所が連携をしてサービスを提供するもの
具体的なサービスの中身は以下のようになります。
- 定期巡回サービス(定期的な訪問介護サービス)
介護保険の訪問介護サービスと同じように、利用者ごとに個別計画書を作成し、その内容に基づき提供されるサービスです。
入浴や食事介助などの身体介護、安否確認や服薬介助、おむつ交換など利用者の生活スタイルに合わせて柔軟に対応します。1日の訪問回数に上限はありませんが、特に理由もなく「心配だから15分おきに見守りしてください」というような要望は通りません。適切なアセスメントに基づき、利用者にとって必要な訪問回数が設定されます。 - 随時対応サービス
定期巡回以外の時間に緊急の対応が必要となった場合は、24時間対応のオペレーションセンターにて随時対応します。利用者にはケアコールという機器が事業所から支給されており、緊急時にはそれを用いてオペレーターと連絡を取れる仕組みです。
オペレーターが対処法を提案したり、訪問スタッフを自宅に向かわせたり、緊急時は救急車の要請をしたりするサービスです。注意点としては、オペレーターに連絡したら、必ず訪問してもらえるというわけではないという点です。利用者の状況を確認し、普段と様子が違うなど、オペレーターが必要性を判断します。 - 随時訪問サービス
随時対応サービスで訪問する必要があるとオペレーターが判断した場合、訪問介護員等が利用者の居宅を訪問して、緊急時の対応や入浴、排せつ、食事等といった支援を行うサービスです。 - 訪問看護サービス
定期的な訪問看護サービスです。看護師等が利用者の居宅を訪問して、点滴など介護職では実施できない、療養上の支援または診療の補助を行います。
この4つのサービスを適切に組み合わせて提供します。
介護・看護一体型では、この4つのサービスをすべて提供します。訪問看護サービスを行う場合と行わない場合があり、訪問看護サービスを行う場合の方が、利用料金は高いです。
介護・看護連携型では、訪問看護以外のサービスを提供し、訪問看護サービスは、連携先の訪問看護事業所が提供します。訪問看護サービスを利用する場合は、別途に連携先の訪問看護事業所に料金を支払う必要があります。
定期巡回随時対応型訪問介護看護と訪問介護の違いがいまいちよくわかりません
主に利用時間、サービス内容、利用条件、利用料金
などで違いがあります。以下で詳しく説明します。
利用時間
定期巡回随時対応型訪問介護看護は24時間対応ですが、訪問介護は日中のみのサービスで夜間は対応できません。
サービス内容
介護サービスに関しては同じですが、定期巡回随時対応型訪問介護看護では訪問看護も利用できます。訪問介護では点滴などの処置は行えません。
利用条件
訪問介護は都道府県が指定・監督する居宅サービスであり、定期巡回随時対応型訪問介護看護は市区町村が指定・監督する地域密着型サービスです。
そのため、地域密着型の定期巡回随時対応型訪問介護看護は、事業所の所在する市区町村に住民票のある要介護者しか利用できません。一方、訪問介護は訪問範囲内に住んでいれば、住民票がどこにあっても利用できます。
利用料金
定期巡回随時対応型訪問介護看護は月額定額制で、要介護度が高いほど料金も高くなります。また、「訪問介護のみ」と「訪問介護・訪問看護」で利用料金が異なり、訪問看護を利用するほうが料金が高くなります。
一方、訪問介護は訪問時間や回数によって料金が変わるので、利用すればするほど費用もかかります。
夜間対応型訪問介護
一人暮らしの高齢者の夜間の介護、夜間に何かあったときの対応、家族の夜間の介護負担の軽減、こういったニーズに沿った、夜間に特化した訪問介護サービスです。
午前8時から午後6時までは、夜間対応型訪問介護のサービス提供時間に含むことはできないので、多くの事業所では、18時~8時までの時間帯にサービスを行っています。
夜間対応型訪問介護で提供されるサービスは大きく分けると、
定期巡回サービス、随時訪問サービス、オペレーションサービスの3つです。
定期巡回サービスは、
決まった時間に巡回する訪問介護サービスです。1回の訪問は30分程度となり、排泄介護や体位変換、バイタルチェックや安否確認など、利用者のさまざまなニーズに対応します。
随時訪問サービスは、
利用者からの通報で夜間訪問が必要になった場合に、介護スタッフ等が訪問するサービスです。転倒して自力で起き上がれないとか、体調不良の訴えなどに対応します。
オペレーションサービスは、
ケアコール端末を持つ利用者からの通報を受けて、オペレーターが対応するサービスです。ケアコール端末というは、ぽちっとボタンを押せば、オペレーションセンターにつながる端末で、夜間対応型訪問介護では事業所が利用者に配布するものとされています。
利用者の通報から、 必要に応じて随時訪問サービスを使ってもらったり、主治医に指示を仰いだり、緊急時は救急車の要請をしたりします。看護師や介護福祉士、医師や保健師などの有資格者がオペレーションセンターに配置されます。ただし、 利用者が少なく、訪問スタッフだけで利用者の要請に対応できると判断される事業所では、オペレーションセンターの設置義務はありません。
定期巡回随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の違いがいまいちわかりません。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の大きな違いは、
- サービス提供時間
- 料金
となります。
まず定期巡回・随時対応型訪問介護看護は24時間サービスが受けられるのに対し、夜間対応型訪問介護は夜間に限定されます。
また料金に関しては、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が月額定額制なのに対し、夜間対応型訪問介護は月額料金+各サービス利用につき1回あたりの料金がかかります。
これらをふまえると
- 夜間以外の時間も必要な方
- 夜間だけでも利用回数が多い方
には定期巡回・随時対応型訪問介護看護をおすすめします。定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の併用はできないため、必要な時間・必要な回数でどちらを利用するかを検討することになります。
認知症対応型通所介護
このサービスは文字通り、認知症となった方を対象にしたデイサービスです。要介護1以上の認定を受け、さらに医師から認知症と診断された方だけが利用可能です。
一般の通所介護(デイサービス)は、認知症の方でも利用できますが、 ほかの利用者たちと馴染めなかったり、人数が多すぎたりして適切なサポートを受けられない場合があります。そういう時に利用するとよいサービスです。
認知症デイサービスの利用者定員は、介護保険法によって12名以下と定められています。また、介護職員一人当たりの利用者数が少なく、その分一人ひとりに合わせた手厚いサービスが受けられます。
認知症対応型通所介護の管理者は、都道府県で実施している「認知症対応型サービス事業管理者研修」の修了を義務づけられているため、認知症に関するより高度で専門的な知識を持っています。また、 施設で働くスタッフも認知症に精通していて、認知症特有の症状に合わせたケアが受けられます。
地域密着型通所介護
通所介護は都道府県が指定・監督を行うのですが、2016年から、小規模の通所介護の中でも定員が18名以下の事業所が、市区町村の管轄に移行しています。これが地域密着型通所介護で、 より地域との連携や運営の透明性を確保することを狙いとしているようです。地域密着型通所介護のサービス内容自体は居宅サービスの通所介護と変わりはありません。
このサービスは認知症対応型通所介護に該当するものは除きます。また、利用者が19人以上であれば居宅サービスの通所介護に該当します。
小規模多機能型居宅介護
一つの介護事業所が「通所(デイサービス)」を中心に、利用者の状況に合わせて訪問や泊まりを一体的に提供し、柔軟に利用者の生活を支援するサービスです。例えば、家族が急用で家にもどれなくなったりした時、デイサービスを利用していた方が、そのまま泊まりといった突発的な利用も可能です。 「小規模多機能型居宅介護事業所」や「小規模多機能ホーム」と呼ばれているところで、このサービスを利用できます
小規模多機能型居宅介護は、その名の通り小規模な施設です。登録利用者数は29人以下、1日あたりの泊まりサービスは最大9名まで、というように定員数が決まっているため、希望した日にサービスが受けられないということはあります。
また、 小規模多機能型居宅介護を利用する場合、サービス内容がかぶってしまう以下の介護保険サービスは併用できません。
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- ショートステイ
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリ(デイケア)
- 居宅介護支援
訪問看護、訪問リハビリ、福祉用具貸与、住宅改修、居宅療養管理指導などその他の介護保険サービスは併用できます。
あと特徴的なのは、利用料が月額定額制という点です。 通所・訪問・泊まりを組み合わせる場合でも定額で利用できるため、毎月の介護保険利用限度額からはみ出してしまう心配がありません。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症の高齢者が、 入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話や機能訓練を受けながら共同生活する施設です。
1ユニット5人以上9人以下の小規模な施設です。原則最大2ユニットで、必要と認められる場合は3ユニットにすることができます。居室は原則として個室で、リビング・食堂・台所・浴室などが設けられています。利用者の生活リズムを大切にして、ともに暮らす空間を重要視し、安心できる生活環境を整えることに重点がおかれています。
ここでユニットケアについて説明しておきます。
介護老人福祉施設や介護老人保健施設、グループホームなどで、高齢者を10人程度のグループに分けて、それを生活の単位(ユニット)として、同じメンバーで生活し、決まったスタッフがケアにあたるという形です。居室は個室とし、リビングのような共同スペースを共有することで、入居者がお互いに人間関係を築き、なじみの関係を形成できるようにします。そして、これまでの生活歴や生活習慣を尊重した支援を行います。
地域密着型特定施設入居者生活介護
これはさっき説明した特定施設入居者生活介護の地域密着型バージョンです。
地域密着型特定施設の種類はさっきの特定施設と同じですが、管轄が市区町村、入居定員が29人以下となります。
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
名称が長いですが、一言でいうと、利用定員29人以下の特養です。
地域密着型施設サービス計画というケアプランに基づいて、入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行うサービスです。特養なので原則、 要介護3以上の方が対象となっていますただし、要介護1、2の方でも特例で入所が認められる場合があります。
新しく建てられた特別養護老人ホームはユニット型と呼ばれており、先ほど書いたユニットケアを受けることになります。
個室ユニット型施設の1ユニットの定員は、「原則として概ね10人以下とし15人を超えないもの」とされています。
また、昼間は1ユニットごとに常勤1名の介護職員または、看護職員の配置が必要で、夜間は2ユニットごとに常勤1名の介護職員または、看護職員の配置が義務付けられています。
看護小規模多機能型居宅介護
以前は複合型サービスとよばれていて、居宅の要介護者について、居宅サービスや地域密着型サービスを2種類以上組み合わせて提供するというサービスでしたが、ふたを開けてみると、訪問看護と小規模多機能型居宅介護の組み合わせしかないため、2015(平成27)年4月から「看護小規模多機能型居宅介護」と呼ばれることになりました。さっき説明した、小規模多機能型居宅介護に訪問看護のサービスが加わって、医療面の不安が軽減されているサービスです。
居宅介護支援
居宅介護支援事業者は、お客の要望に沿って、ホテル、交通機関などを調整、手配する旅行会社のようなイメージで考えてもらえればわかりやすいかと思います。
居宅要介護者が居宅サービス、地域密着型サービス等を適切に利用することができるように、居宅介護支援事業者の介護支援専門員(ケマネジャー)が要介護者の依頼を受けて居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、居宅サービス事業者、地域密着サービス事業者などとの連絡調整を行うサービスです。
居宅要介護者が地域密着型介護老人福祉施設または介護保険施設への入所を必要とする場合は、その紹介、その他の便宜の提供も行います。
また要介護者へのケアプランだけでなく、要支援者への介護予防ケアプランの作成・見直しも行います。
サービスが開始された後は、月に1回以上利用者の自宅訪問を行い、環境や身体状況などが変わっていないか確認し、必要に応じてプランの見直しを行います。これをモニタリングといいます。
居宅介護支援は介護の入り口となる重要なサービスで、全額が介護保険で賄われており、自己負担はゼロです。
その他のサービス
居宅介護住宅改修費(住宅改修)
住宅改修は、要介護・要支援認定を受けた高齢者が自宅で生活しやすいように、手すりを取り付けたり、便器を洋式に変えたりする際の費用を介護保険制度で一部負担してもらえるサービスです。
住宅改修工事は何でもできるわけではなく、対象となる工事は決められてます。具体的には、↓
- 工事を伴う手すりの取り付け(※1)
- 段差の解消
- 滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え、向きの変更など
- その他上記の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修(※2)
- ※1 住宅改修の対象は工事を伴う手すりの設置である。取り外し可能な手すりのように工事を伴わな手すりは、介護保険の福祉用具貸与の対象となる。
※2 住宅改修に付帯して必要となる住宅改修には、手すりを取り付けるために壁の下地を補強したり、スロープと一緒に転落防止用の柵をつけたりするような場合です。
住宅改修における利用限度額は、要介護区分に関係なく、つまり要支援でも要介護でも20万円が限度となります。 原則1割負担なので、工事の費用が20万円なら実際に支払うのは2万円で残りの18万円は行政側で負担します。ただし所得によっては、2割、3割負担になる場合もあります。
住宅改修がその他のサービスになっているのは、 住宅改修事業者には都道府県や市区町村による指定・監督制度がないためです。ただ、監督するところがないと、悪徳業者がでてきます。例えば、訪問販売業者が営業にきて、「ぜんぶ介護保険で改修できます!」と言いつつ、 対象外の改修工事まで契約させるとか、仕事が雑すぎるとか、そういうトラブルもあります。
その対応策として、 住宅改修施工業者の登録制度がつくられました。住宅改修の料金の支払い方は、利用者側がいったん工事費用を全額業者に支払って、あとで保険者に申請して保険給付分(例えば1割負担の人なら工事代金の9割)を受け取るパターンと、利用者が自己負担分だけ業者に支払って、保険給付分は市区町村などの保険者が直接業者に支払うパターンがあります。
この登録制度が適用されるのは、後者のパターンだけで、加えて、この制度は選択制で、導入していない市区町村もあるので注意が必要です。
次は要支援1,2の人が受けることのできるサービスをみていきます。
おおまかに分けると、都道府県が指定・監督を行う介護予防サービス、市町村が指定・監督を行う地域密着型介護予防サービス、介護予防支援3つがあります。
実質的なサービス内容は介護給付のサービスに準ずるものが多いです。
例えば、介護予防訪問看護のサービス内容は、介護給付の訪問看護に準じます。
実は介護給付がよくわかってません。
医療保険と同じですね。病院で実質支払うのは自己負担分の3割で、残り7割は保険給付として支払われています。介護保険も介護サービスを受けて実質支払うのは1割(人によっては2,3割)で残りは保険給付で支払われています。保険給付の原資は、みなさんの給料から毎月引かれている健康保険料などです。
介護保険料も40歳以上になると、毎月給料から引かれてますね>,<
予防給付の対象となる人は、要支援1および要支援2で介護給付の対象となる人は、要介護1~5の人です。予防給付と介護給付では利用できるサービスに違いがあり、介護給付のほうが支給限度額は高い。
介護予防サービス
都道府県が指定・監督する介護給付のサービスに”介護予防”をくっつけただけで、実質的なサービス内容は同じようなものです。
例えば、訪問入浴を例にあげると、予防給付の訪問入浴介護だと、利用者は要支援なので、有する能力もけっこう残ってます。自分でできるところは自分でやってもらうので、介護スタッフの数が介護給付の訪問入浴介護よりも少なかったりします。他には福祉用具貸与と介護予防福祉用具貸与ではレンタルできる品目が異なるなど、少しの違いはありますが、おおむねサービス内容は同じと思ってもらって差し支えありません。
- 介護予防訪問入浴介護
- 介護予防訪問看護
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防居宅療養管理指導
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防短期入所生活介護
- 介護予防短期入所療養介護
- 介護予防特定施設入居者生活介護
- 介護予防福祉用具貸与
- 特定介護予防福祉用具販売
都道府県が指定・監督を行うサービスで介護給付にあって、予防給付にないものは訪問介護、通所介護、施設サービスです。
地域密着型介護予防サービス
同じように地域密着型サービスに”介護予防”をつけただけですね。
- 介護予防認知症対応型通所介護
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 介護予防認知症対応型共同生活介護
サービス内容は介護給付の認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に準じます。ただし、要支援1では利用できません。要支援2以上でなければなりません。
別の見方をすると、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護とグループホームは、要支援でも要介護でも利用できるともいえます。ただし、グループホームだけはちょっと注意で、要支援2以上でなければ利用できません。
介護予防支援
居宅介護支援と同様に、介護保険サービスと利用者を結ぶ窓口となるサービスで、利用者負担はゼロです。
介護予防サービスを適切に利用できるよう、介護予防ケアプランの作成や、サービス事業所との連絡・調整、モニタリングなどを行います。
居宅介護支援の対象者が要介護1~5であるのに対して、介護予防支援の対象者は要支援1~2です
介護予防ケアプランは、地域包括支援センターで依頼を受けて作成することが多いですが、2024年の4月から改正介護保険法が施行され、居宅介護支援事業所も直接、介護予防ケアプラン作成の依頼を受けられるようになっています。
最後に総合事業についてみていきます。ただ、 総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)を理解するためには、まず地域支援事業について理解しておく必要があるので、そこから説明していきます。
総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)
地域支援事業
地域支援事業は、高齢者が要介護状態になることを防ぎ、要介護状態になっても住み慣れた地域において、できる限り自立した生活を営むことができるよう支援することを目的とした事業です。 この事業の目的は今書いた通りなんですが、もうひとつ、介護保険の給付費の抑制という面もあります。要介護高齢者が増えれば増えるほど、介護サービスの維持にお金がかかります。なので、要支援、要介護状態の人を減らして、健康な高齢者の割合を増やす、そして全体的に介護給付を減らしていこうという考え方でつくられている事業でもあります。この事業が作られたのは2005年の介護保険法改正のときで、 そこから2011年や2014年にいくつか事業内容に変更があるんですが、そのへんはちょっと置いておいて、今現在の地域支援事業を説明します。
地域支援事業の実施主体は市区町村で、地域の実情や、高齢者のニーズ、生活実態に応じてサービスが提供されます。具体的には↓のイラストの3つの事業です。
任意事業
任意事業は、市区町村が独自に考えるサービスで、実施されなくてもよいので、試験的には任意事業ってのがあると覚えておけば十分です。
包括的支援事業
包括的支援事業には以下のようなものがあります。
- 地域包括支援センターの運営
- 在宅医療・介護連携推進事業
- 認知症総合支援事業
- 生活支援体制整備事業
地域包括支援センターの運営
参考)⇒地域包括支援センター
在宅医療・介護連携推進事業
医療と介護の両方を必要とする状態の高齢者が、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるようにするためには、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護を提供していくことが重要です。
関係機関が連携し、多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するため、都道府県・保健所の支援の下、市区町村が中心となって、地域の医師会等と緊密に連携しながら、地域の関係機関の連携体制の構築を推進する事業です。
認知症総合支援事業
認知症初期集中支援チーム
地域包括支援センター等が認知症の初期の段階で認知症の人やその家族に対して個別の訪問を行い適切な支援を行う仕組みとして、「認知症初期集中支援チーム」を配置。
認知症初期集中支援チームとは?
複数の専門職が家族の訴え等により認知症が疑われる人や、認知症の人およびその家族を訪問し、アセスメント(その時点での状況の評価・把握)、家族支援等の初期の支援を包括的、集中的(おおむね6か月)に行い、自立生活のサポートを行うチームです。具体的なサポートの例を挙げると、
- 医療受診の支援
家庭訪問を行い、受診をすすめたり、受診に同伴してのサポートなど - 介護サービスの支援
ケアマネージャーと依頼者のつなぎ、介護サービスの利用拒否がある場合に、本人の様子を見ながら、利用について調整・工夫を継続など - 家族への支援
認知症の経過やサービスの必要性を伝えたり、サービスの利用方法を伝える等
認知症の初期段階の本人とその家族の困りごとを個別訪問して、まるっとサポートするような感じです。
認知症地域支援推進員
市町村における認知症に関する医療・介護等の連携の推進役で、地域の医療機関、介護サービス事業所や地域の支援機関をつなぐ連携支援や認知症の人やその家族を支援する相談業務等を行います。
その他には、市民の方に身近な病気として認知症を理解していただく活動を行ったりもします。例えば、通いの場での講話、認知症セミナーや認知症サポーター養成講座の開催などです。
生活支援体制整備事業
2015年4月に施行された介護保険法改正により、地域支援事業の包括的支援事業に位置付けられた事業です。
高齢化の進展に伴い、地域では、ひとり暮らしの高齢者や高齢者夫婦のみの世帯が増えています。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、医療や介護サービスだけでなく、日常的な「生活支援」や「介護予防」が必要です。
生活支援体制整備事業では、医療や介護サービスだけでは解決しづらい暮らしの困りごとに応える「生活支援」(例:大きな家具の移動、庭の手入れ等)や、高齢者が楽しく取り組める「介護予防」(例:体操、脳トレ等)の充実を、行政サービスのみならず、地域住民をはじめ、民間企業やNPO、ボランティア、社会福祉法人、協同組合等の多様な団体が協力し合い、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるように、みんなで支え合う地域づくりをめざしています。
この事業を推進するために、生活支援コーディネーターを配置し、地域づくりに取り組んでいます。
生活支援コーディネーターって具体的にどんなことをしているのですか?
生活支援コーディネーターの役割
- ニーズと地域資源の把握・ネットワークの構築
地域の良いところや困りごとを発見し、様々な事業主体と解決に向けて取り組みます。
(例)協議体(※)の開催、移動(外出)支援に関するアンケートの実施 など - 地域資源・サービスの開発
地域で必要だと思われる資源づくりに取り組みます。また、地域活動に関する講座や交流会を開催し、地域での支え合い活動について一緒に考えます。
(例)認知症カフェ講座の開催、お買い物ツアーの実施 など - 活動の場の発掘・開発
元気な高齢者がより元気に活躍できる場、きっかけづくりに取り組みます。
(例)認知症カフェの開催、コミュニケーション麻雀体験会の開催 など) - サービス実施情報の周知
地域で実施されている活動や暮らしに役立つ情報を発信します。
(例)○○通信の発行 など)
(※)協議体:
協議体は、地域に支え合いの輪を広げて行くために、地域住民同士で話し合う場です。
・地域をどうしていきたいか
・地域で行われている支え合い活動、地域で必要な支え合い活動についての情報共有
・地域に必要な支え合い活動のうち、何が出来るか、どうやったら出来るか
などを話し合います。
参加者は、地域に住む人、地域にある企業や団体など、地域を良くしたい想いがある方で、年齢や資格、役職などは問いません。
残りの介護予防・日常生活支援総合事業は重要なので、詳しく説明します。
では、ここから総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の説明に入ります。
総合事業サービス
総合事業は、介護予防・生活支援サービス事業(第1号事業ともいわれます)と、一般介護予防事業の二つの事業に分かれています。
一般介護予防事業
一般介護予防事業の方は、対象者がすべての第一号被保険者つまり65歳以上の人ならだれでもウェルカムで、要介護認定を受けている人も、健康な人も第一号被保険者ならすべて対象となります。加えて、その支援のための活動に関わる者も対象としています。そして、高齢者が健康を維持したり、介護予防や引きこもりを防ぐようなサービスを提供します。具体的には
- 介護予防把握事業
- 介護予防普及啓発事業
- 地域介護予防活動支援事業
- 地域リハビリテーション活動支援事業
- 一般介護予防事業評価事業
1.介護予防把握事業
一般介護予防事業の一つで、地域の実情に応じて収集した情報等の活用により、閉じこもり等の何らかの支援を要する者を把握し、介護予防活動へつなげる事業
要支援・要介護認定を受けている人の把握はできますが、ほっといたら要介護者になってしまうかもしれない、要介護予備軍を見つけるのは大変ですよね。そういう人たちの情報を集め、把握する事業といった感じです。
2.介護予防普及啓発事業
一般介護予防事業の一つで、住民1人1人に介護予防の基本的な知識を持ってもらうために、パンフレットの配布や講座等を開催する事業です。
実例をあげると、口腔状態の確認・ブラッシング指導・嚥下指導を行う、お口の健康教室というものがあります。
3.地域介護予防活動支援事業
一般介護予防事業の一つで、地域の高齢者が身近な場所で気軽に集える居場所づくりを推進するため、ボランティアや任意団体及び住民が自主的に実施する活動等の支援を行う事業です。
介護予防把握事業や介護予防普及啓発事業を自治体だけで行うには人手が足りません。そこで、地域住民やボランティアなどから介護予防にたけた人を育成し、その活動の後方支援を行う事業です。自分たちで介護予防してる人をサポートするという感じです。
4.地域リハビリテーション活動支援事業
一般介護予防事業の一つで、介護予防の取り組みを機能強化するため、通所、訪問、地域ケア会議、住民主体の通いの場等へのリハビリ専門職等による助言等を実施する事業です。
住民主体の体操教室などを行っていても、実際にどのような体の動かし方をすれば効果が高いのかなど、知識がない場合も多いです。そこで、体操教室や地域ケア会議、サービス担当者会議等にリハビリ専門職を派遣し、技術的なアドバイスをする、という感じです。
5.一般介護予防事業評価事業
1~4の一般介護予防事業を実施してみて、それらを評価する事業です。
介護予防・生活支援サービス事業
介護予防・生活支援サービス事業は、さらに次の4つに分けられています。
- 訪問型サービス(第1号訪問事業)
- 通所型サービス(第1号通所事業)
- その他の生活支援サービス(第1号生活支援事業)
- 介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)
訪問型サービス&通所型サービス
予防給付のところの説明で介護予防通所介護、介護予防訪問介護はないと説明したのですが、2014年以前は予防給付の介護保険サービスとして実は存在してました。
しかし、2015年から、都道府県が指定・監督を行う、予防給付のサービス、介護予防訪問介護と介護予防通所介護は市区町村が指定・監督する総合事業に随時移されていって、2017年4月からはすべての市区町村で、訪問型サービス、通所型サービスとして実施されています。
なんのために移行させたかというと、介護給付や予防給付の基準は国が全国一律で定めているので、カッチリと決まったサービスしか提供できませんでした。それが市区町村が運営する地域支援事業に持ってきたことによって、基準を市区町村で決めることができるようになるので、地域ボランティアで運営する、集まってだらだら話するだけのゆるい通所介護とか、地域のニーズに柔軟に対応したサービスを提供できるようにするためです。
総合事業では各市町村が基準や単価を設定して運営します。各自治体が主体となることで自由度が高くなり、地域の実情に応じたサービスを創意工夫によって提供できるようになると期待されています。
また、既存の介護事業所だけではなく、NPO、ボランティア団体、民間企業、地域住民などによるサービス提供も可能になり、高齢者の生活を地域全体で支援する取り組みが進むことにより、地域活力の向上つながることも期待されています。
その他の生活支援サービス
その他の生活支援サービス(第1号生活支援事業)は、名前の通りで、栄養改善を目的とした配食サービスとか、独居高齢者の見守りとかです。これも市区町村が考えるものなので、地域によってさまざまです。
介護予防ケアマネジメント
介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)は、これらの訪問型サービスや、通所型サービス、生活支援サービスを使う人のケアマネジメントを行うサービスで、利用者本人が居住する住所地の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所において実施します。
この介護予防・生活支援サービス事業の対象者は、一般介護予防事業は 65歳以上の人ならどなたでも!だったんですが、介護予防・生活支援サービス事業の方は若干きびしくなっていて、まず要支援認定された人が利用できます。ただ、それだけだと、予防給付と何がちがうのか、となるので、要支援者に加えて、基本チェックリストで要介護・要支援になるリスクが高いと判定された高齢者も対象になります。
基本チェックリストというのは、↓のようなもので
介護予防が必要な高齢者を早期に発見するために作成された質問用紙です。総合事業のサービスを利用しようとする時に、市区町村の窓口や、地域包括支援センターで、基本チェックリストに書き込んでもらいながら相談を進めていきます。
細かいところですが、第2号被保険者は、特定疾病の確認が必須なため、基本チェックリストを活用できません。
ここまでにでてきた、介護サービスを一度まとめておきます。
★覚え方のコツ
①都道府県が指定・監督を行う介護給付のサービスを覚えます。
② ①から施設サービスと訪問介護、通所介護を抜いて、頭に”介護予防”をくっつけたサービスが都道府県が指定・監督を行う予防給付のサービスになります。
③市町村が指定・監督を行う介護給付のサービスを覚えます。
④③のうち”認知症”が名称に入っているもの+小規模多機能+介護予防支援が市町村が指定・監督を行う予防給付のサービスになります。
試験本番までにこの表を完全に覚えなければならないかというと、そうでもありません。本番の試験は選択式なので、少しくらい忘れていても思い出せることはよくあります。
だたし、忘れてもかまわないので、一回はがんばって覚えてしまうことをおすすめしておきます。
介護保険制度以外の福祉サービス
介護保険サービスには、介護保険法に定められている厳格な利用基準があるため、サービスの種類や利用条件に制限があります。そこで、介護保険では提供できないサービスを提供するのが「介護保険外サービス」です。
介護認定を受けている高齢者も、受けていない高齢者も利用できるのが特徴です。
介護保険外サービスには、市区町村などが実施する非営利目的の支援サービスから民間企業が行うサービスまで幅広くあり、実施する主体によって利用方法や費用が異なっています。
生活支援ハウス(高齢者生活支援センター)
高齢者に対して、介護支援機能、居住機能および交流機能を総合的に提供します。高齢者が安心して健康で明るい生活を送れるように支援し、高齢者の福祉の増進を図ることを目的としています。
居住部門の利用対象者は、原則として60歳以上のひとり暮らしの方、夫婦のみの世帯に属する方または家族による援助を受けることが困難な方であって、高齢などのため独立して生活することに不安のある方です。
サービス付き高齢者向け住宅
⾼齢者が安全かつ快適に暮らせるよう、「⾼齢者住まい法」という法律のもとにバリアフリー構造の高齢者住宅として整備されています。
サービス付き高齢者向け住宅は、利用者の希望や、要介護度に合わせてサービス内容を決めることができるというのが最大の特徴です。
有料老人ホームとは何がちがうのかしら
サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違いは、主に以下の3つです。
- 介護サービスの違い
- 生活の自由度
- 契約形態
ひとつずつ説明します。
介護サービスの違い
有料老人ホームは種類により、介護を必要とする高齢者が入居できる場合があります。しかし、サービス付き高齢者向け住宅は、基本的に自立した生活が可能な高齢者が主な対象です。施設により違いがあるものの、簡単な安否確認や生活相談、掃除・買い物代行といった生活支援のサービスが主になります。重度の介護状態では、住み続けることが難しいです。
生活の自由度
入居している高齢者の特性上、有料老人ホームは外出や外泊をする際は、その都度届け出が必要です。ほとんどの高齢者が事前に届け出ることで受理されますが、要介護度によっては申請が通りにくいケースもあります。
一方、サービス付き高齢者向け住宅は、あくまでも賃貸住宅の一種なので、外出・外泊も届け出の必要がありません。
契約形態
有料老人ホームでは、入居する際に、入居一時金という形で、ある程度まとまったお金を支払うことで、専用の居室や共有スペースを終身で利用出来て、居住部分と介護や生活支援等のサービス部分の契約が一体になった利用権方式という契約形態が多いです。入居一時金は、家賃や管理費等の前払いというかんじです。
一方、サービス付き高齢者向け住宅は、あくまで賃貸住宅の一種なので、利用者と賃貸契約を結ぶことになります。
サービス付き高齢者向け住宅として登録されるための基準
各居室の床面積は原則として25㎡以上あること
ただし、リビングルームや食堂、台所などそのほかの共有スペースが、共同して利用するうえで十分な面積がある場合は18㎡以上あれば良いとされています。
各居室に水洗便所、洗面設備、台所、浴室、収納設備を備えていること
ただし、共有スペースに共同で利用できる台所や浴室、収納設備が設置されていて、各居室に備えつけた場合と同じまたはそれ以上の居住環境が確保されていれば、各居室への設置がなくても問題ないとされています。
館内がすべてバリアフリー構造となっていること
安否確認サービスと生活相談サービスの提供を行っていること
これらのサービスを行うために、「ケアの専門家」が少なくとも日中の間は館内に常駐していること。(夜間については、常駐は義務付けられていませんが、何かあったときに速やかに駆けつけることができる状態にすることが義務化されています。)
ここで言うケアの専門家とは、社会福祉法人や医療法人、指定居宅サービス事業所などの職員、医師、看護師、社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、さらに介護職員初任者研修過程の修了者などが該当します。また、見守りサービス以外に、食事の提供や入浴時の介助などの生活支援サービスを提供しているサ高住もあります。
介護保険法改正の歴史
選択肢で
”2005年の介護保険法改正によって、介護予防を重視した制度見直しが行われた。”
とか
”2011年の介護保険法改正によって、地域包括支援センターが創設された”
という間違い選択肢なんかをみかけるので、重要なものは、年号と改正内容をセットで覚えておいた方がいいと思います。
ポイントは
- 3年ごとに見直されている
- 施行は法律が改正されてからすべて1年後
- 2008年は出題されそうな内容がないのでカット
です。
- 1997年
(平成9年)介護保険法成立 - 2000年
(平成12)年介護保険法が施行されサービス開始となる - 2005年
(平成17)年介護保険法改正(施行は2006(平成18)年)●法の目的に要介護高齢者等の尊厳の保持が加わった。
●高齢者が要介護状態になることを予防する介護予防重視の観点から、予防給付、地域支援事業が創設される。
●介護保険施設等における食費及び居住費について、施設介護サービス費等の対象とせず利用者が負担することとなった。
ただし、低所得者の施設利用が困難にならないよう、負担軽減を図る観点から新たな補足的給付が創設された(=特定入所者介護サービス費の創設)
●地域密着型サービスの創設
●地域包括支援センターの創設
- 2011年
(平成23)年介護保険法改正(施行は2012(平成24)年)高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく有機的かつ一体的に提供される地域包括ケアシステムが推進されることとなった。新たに創設されたサービスは以下。
●定期巡回・随時対応型訪問介護看護の創設
- 2014年
(平成26)年介護保険法改正(施行は2015(平成27)年)●地域包括ケアシステムの構築
●費用負担の公平化
・低所得者の保険料の軽減割合を拡大
・一定以上所得のある利用者の自己負担を2割へ引き上げ
・低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」 の要件に資産などを追加(対象者が縮小されます)●在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、全国一律の予防給付(介護予防訪問介護・介護予防通所介護)を地域支援事業へ移行し、多様化(住んでいる地域によってサービス内容・料金が異なることになる)
●介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の新規入所者を、原則要介護3以上に重点化
- 2017年
(平成29)年介護保険法改正(施行は2018(平成30)年)●3割負担の導入
収入が「現役並み所得相当」である340万円以上の場合、介護保険サービスを利用した際の自己負担額は3割となった。●介護医療院の創設
詳細はこちら⇒ 介護保険施設●福祉用具のレンタル料を平準化
介護保険法では、福祉用具のレンタル価格は、レンタル事業者が自由に決めてよいとされています。そのため、同じ福祉用具でも、レンタルする事業者によって価格が変わってくるというのが現状でした。事業者の中には、レンタルの適正価格を知らない利用者に対して、不当なまでに高額な料金設定をする者もおり、問題となっていました。
そこで2018年10月から、厚生労働省が全国の平均レンタル価格を公表し、その価格をもとにレンタル価格の上限設定を行うこととなりました。
そして、事業者には利用者に対して全国平均レンタル価格を伝えることと、機能・価格の異なる複数商品を提示することが義務付けられました。●共生型サービスの導入
「共生サービスを提供する事業所」としての指定を受ければ、介護サービス事業所は障害者に、障害福祉事業所は高齢者にサービスを提供できるようにりました。共生型サービスの導入で大きなメリットがあるのは、65歳を迎えようとする障害者の方です。
これまでの制度では、65歳になると障害者福祉制度から介護保険制度が適用されるようになり、長年利用していた障害福祉事業所を利用できなくなる、という事態が発生していました。
しかし、共生型サービスの指定を受けた事業所ではそのような垣根はなくなり、65歳を過ぎても長年利用してきた障害福祉事業所を引き続き利用できるようになりました。
共生型サービスでは、障害者が65歳以上になっても使い慣れた事業所でサービスが受けられる、地域の事情に合わせた施設運営ができる、といった観点から、 基本的には、介護保険、障害福祉サービスにおける
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- 通所介護(デイサービス)
- ショートステイ
に該当する施設を共生型サービス事業所として運営することができます。
- 2020年
(令和2年)介護保険法改正(施行は2021年)●高額介護サービス費の上限額を引き上げ
高額介護サービス費とは、月額の自己負担額が上限額を超えた場合、超過分の払い戻しが受けられる制度です。これまで「本人または世帯全員が住民税課税者」の自己負担額は一律4万4,400円でしたが、年収に応じて上限額が引き上げられました。
●補足給付の負担軽減対象者の見直し
2005年に補足給付が創設されて、2014年に資産などの要件が加えられて対象者が絞られました(単身世帯なら1000万円以上資産がある人は対象外といった感じ)。
そして2020年の改正で、さらに対象者が絞られました。(単身世帯なら650万円以上資産がある人は対象外といった感じ)※↓図のあまり細かい数字は気にしなくても大丈夫です。●地域包括支援センターの強化
中高年の引きこもりは60万人以上。80代の親と50代の引きこもりの子どもが、社会から孤立してしまい、親の介護と子の生活維持の問題が同時に起こる8050問題が深刻化しています。相談窓口もなく、結果、悲劇的な事件が発生しているのが実情です。
その対策として、従来の制度を変更し、自治体では介護以外に支出することができなかった介護保険財源を直接、介護に関係のない8050問題対策などに利用できる改正が行われました。
介護・障害・子ども・困窮の相談支援に関わる事業の役割を地域包括支援センターなどに一本化し、「断らない相談支援」を目指し、就労支援・居住支援・居場所機能の提供など、多様な支援を提供します。ただ、その実施については実際に手を挙げた自治体に限られ、全国一律の実施ではないため、その実現性については疑問もあります。
●認知症介護基礎研修
2021年4月以降は無資格の介護職員に対して認知症介護基礎研修の受講が義務化されます。
ただし、訪問入浴介護以外の訪問系、居宅介護支援、福祉用具貸与(販売)事業者は今のところ義務化の対象外です。※訪問介護員が対象外になっているのは、訪問介護員になるには、初任者研修か実務者研修の修了が必須になっているためです。
●感染対策委員会の設置を義務化
2021年より、すべてのサービスにおいて感染対策委員会の設置が義務化されました。
感染対策委員会の主な役割としては、「感染症の予防」と「感染症発生時の対応」があります。
・施設内の具体的な感染対策の計画を立てます。
・施設の指針・マニュアル等を作成・見直しをします。あらかじめ、見直し時期や担当者を決めておきます。
・感染対策に関する職員等への研修を企画、実施します。●事業継続計画の策定の義務化
事業継続計画というのは、災害等が発生した後、重要な事業を中断させず、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための計画です。BCP(Business Continuity Plan)とも呼ばれます。
具体的には、自然災害発生時における業務継続計画と感染症蔓延時の業務継続計画の2つを策定することが義務付けられました。そして研修を年一回以上(新規採用時は必ず実施)する必要があります。
ちなみにひとつ前の感染対策は、普段からの感染しないようにするためのもので、感染症蔓延時の業務継続計画は、施設でクラスターが発生してしまった後の対応方法という感じです。
●高齢者虐待防止の推進
すでに高齢者虐待防止法が運用されていて、直接的に高齢者の虐待を禁ずることはもちろん、虐待を発見した場合の市町村への通報義務や通報を受けた市町村の対応等が定められています。
今回の改正では、これら虐待に対する取り組みを今までより強化するため、介護事業所に対して運営基準に項目を追加することで更に防止に取り組む体制を作ることを定めています。
具体的には、すべての介護サービス事業者を対象に、虐待の発生または再発を防止するための委員会(虐待防止検討委員会)を開催し、指針を整備し、研修を実施し、担当者を定めることが義務付けられました。
●ハラスメント防止
全てのサービスの運営基準を見直し、ハラスメント対策については「必要な措置を講じなければならない」と新たに示し、対策の実施を義務付けられました。
事業者がとるべき措置として、職場での相談体制の整備を位置付け、悩みを聞く担当者を定めることなど、方針を明確化し、それを職員にあらかじめ周知しなければならないと明記されています。
セクハラについては、上司や同僚に限らず、利用者やその家族等から受けるものも含まれます。
●LIFE
科学的介護のためのデータベース「LIFE」の本格稼働が始まりました。
LIFEとは政府・厚労省が重視する自立支援・重度化防止を目的として、より効果のある介護サービスを実現すべく導入される大規模データベースのことです。LIFEに蓄積されるのは利用者の状態や各種サービス内容に関する膨大な情報で、収集されたデータはフィードバックへの活用やエビデンスの確立などに役立てられます。●要介護更新認定・要支援更新認定における有効期間の延長
要介護・要支援区分に変更がない場合⇒有効期間の上限が48ヵ月に
要介護・要支援区分に変更がある場合⇒有効期間の上限は36か月のまま - 2023年
(令和5年)介護保険法改正(施行は2024年)●財務諸表の公表の義務化
以前より財務諸表の公表は社会福祉法人や障害福祉事業者を対象に義務化されていましたが、罰則規定がなかったため、義務化しても財務諸表の提出数が低い状況が続いていました。
そのため、2024年の介護保険法改正では、介護サービス事業者へ財務諸表の公表の義務化の対象を拡大するだけでなく、未提出や虚偽の申告に対し、提出や是正を命令できる旨を記載した罰則規定を新たに設けています。
もし命令に従わなかった際は業務停止・指定取り消しが課せられます。●生産性向上委員会の設置
介護ロボットやICT等のテクノロジーを導入した後の継続的な活用を支援し、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催が義務付けられました。ただし、準備期間として3年間の経過措置期間が設けられています。
●居宅介護支援事業所も介護予防支援が可能に
これまでも地域包括支援センターから委託という形で居宅介護支援事業所が介護予防ケアプランの作成を行うことはありましたが、居宅介護支援事業所も直接、介護予防ケアプラン作成の依頼を受けられるようになりました。
●一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入
比較的安いもので、購入した方が利用者の負担が抑えられると考えられる品目、具体的には、固定用スロープ、歩行器、単点杖、多点杖などはレンタルか購入かを選べるようになりました。
選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員または介護支援専門員が、福祉用具貸与か特定福祉用具販売のいずれかを利用者が選択できることについて、利用者等に対し十分説明するとともに、利用者の選択に当たって必要な情報を提供し、医師や専門職の意見、利用者の身体状況等を踏まえ、提案しなければならない、と定められています。
また、福祉用具貸与について、選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員が、利用開始後6月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、貸与継続の必要性について検討し、そのモニタリングの結果を記録し、その記録を介護支援専門員に交付することが義務付けられています。
●身体的拘束等の適正化の推進
特養などの施設サービスや介護付き有料老人ホームなどの特定施設、またショートステイや小規模多機能型居宅介護などの介護サービス事業者に対して、身体的拘束等の適正化を図る観点から、以下の内容が義務付けられています。
■身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3ヵ月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図る
■身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること
■介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施する。●事業所の運営規程の概要等の重要事項は、書面掲示とインターネット上での公表の双方が必要となります。
●介護保険施設における口腔衛生管理の強化
介護保険施設では、利用者の入所時及び入所後の定期的な口腔衛生状態・口腔機能の評価の実施が義務付けられています。
お疲れ様です。「介護の基本」8/13読破です。
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⇒介護の仕事は連携が命|他職種連携(チームアプローチ)と地域連携について解説
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