QOLを向上させる介護|基本は利用者主体と自立支援

アイキャッチーQOLを向上させる介護介護の基本

QOLを向上させる介護とは

QOLを向上させる介護を実践するための、介護職のアプローチを説明します。その前に、前提知識として「尊厳とは何か」「自立とは何か」をこちらから確認しておいてください。

QOLって?

QOLはquality of lifeの略で、生活の質などと訳されています。生活の質というとなにやら無機質な感じがしますが、要は日々の生活を楽しめているかどうかということです。安心して生活でき、日々の生活に楽しみがあるならQOLは高いと言えます。

介護職の仕事は利用者のQOLを向上させるということが最大にして唯一の目的です。

歩けるようにするとか、要介護度を上げないようにするとか、いろいろ目的はあるのでは?

大切なのは歩けるようになって何がしたいかです。歩くこと自体を目的にすることは意味がなく、歩けるようになって一人でトイレに行きたい。歩けるようになって公園に散歩に行きたい。というように、利用者のQOLの向上につなげることが重要です。利用者のQOL向上につながらない支援は無意味どころかマイナスです。後述の利用者主体の支援自立支援QOLを向上させるための手段であって、目的にならないように注意しなければなりません。

利用者主体

利用者が自分自身の行動を選択できなくてはいけません。

そんなの当り前じゃないの!?

と思われるかもしれませんが、実際の現場では利用者主体ではなく、介護者主体になってしまっていることがよくあります。例えば、

介護職員の退勤時間に合わせて、支援する内容を決定してしまっている。

私あと、30分で上がりなんで、入浴時間の短いSさんをいれときます~

利用者が何かをやろうと思い、その心の欲求に従って行動を選択し、実行する。大事なのはこのプロセスです。

自立支援

自立支援とは上記の利用者主体のプロセスを支援することなのですが、もう少し深掘りしていきます。

家族から「こぼしてしまうので、熱いお茶はいれさせられない」という利用者の支援を題材にみていきます。

介護職の最初の仕事は観察です。「利用者が熱いお茶を飲む」場面を細かく分けていきます。例えばこのような感じです。

  1. 湯呑、急須(きゅうす)を認識できるか
  2. 熱いということがわかるか
  3. 急須を持ち上げることができるか(片手or両手)
  4. 急須を斜めにすることでお茶がでてくるということがわかるか
  5. こぼさずにお茶を湯呑に注ぐことができるか

1~3のプロセスでは問題ありませんでしたが、この利用者はお茶をそそぐときに急須のフタが外れてこぼしてしまいました。

観察の結果、急須を斜めにしたときに急須のフタが取れるということが認識できないことがわかりました。

対応策としては、フタの取れない急須を使う。急須にお茶をたっぷり入れておき、あまり傾けないでもお茶がでるようにする。などが考えられます。

このように利用者を観察し、できない部分のみに必要最小限の支援を行い、利用者の有する能力を活用できるように支援することが自立支援の基本です。 利用者の持っている力に着目し、その力を引き出して積極的に利用、援助することをエンパワメント・アプローチと呼びます。

有する能力の活用に加えて、自立支援を実践するうえで、意識しておかなければならない考え方に「個別ケア」があります。

夕食は19時から、午前10時に体操を行う、といった画一的なケアではなく、利用者のこれまでの生活歴や考え方を尊重し、十人十色の柔軟なケア(個別ケア)を行うことが大切です。個別ケアという言葉には、実際的な介護場面での「個別的な介護技術」(例えば、右片麻痺の方の車いすへの移乗の仕方等)と、一人ひとりの人生の歴史を踏まえた「個別的な生活支援」(例えば、食事は入浴後にとることにしている等)という2つの意味が含まれています。

QOLの向上とリハビリテーション

リハビリテーションQOLを高める手段のひとつです。

加齢や疾病により心身の機能低下が生じた高齢者や障害者は、活動性が低下し、生活の自立が困難になってきます。

そこで残存機能を活用して、心身の機能水準を維持・向上させ、心身機能や環境に適した生活を獲得するリハビリテーションの視点が重要となります。

リハビリテーションの定義

リハビリテーションというと、理学療法による歩行訓練など機能面の訓練をイメージする方が多いと思いまが、リハビリテーションとはWHO(世界保健機関)によれば、

「能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するための、あらゆる手段を含む」

とされており、リハビリテーションの目指すものは全人間的復権です。

全人間的復権とは、障害を持った人が身体的精神的な機能回復だけではなく、社会的経済的能力も回復させて人間らしく生きる権利を取り戻すことです。

そもそもリハビリテーションとは権利名誉の回復という意味の一般用語であり、例えばジャンヌ・ダルクが宗教裁判で魔女として処刑された後に、その破門が取り消され人間としての名誉が回復されたことも「ジャンヌ・ダルクのリハビリテーション」と呼ばれています。

リハビリテーションには尊厳の回復という面も含まれていると言えます。

リハビリテーションの種類

医学的リハビリテーション

病院や診療所などの医療機関で行う、理学療法や作業療法などのことです。日常生活で「リハビリ」と呼んでいるのはこの医学的リハビリテーションを指すことが多いです。

医学的リハビリテーションは一般的に急性期回復期維持期(生活期、慢性期)の3ステップがあります。

急性期リハビリは、主に発症して運び込まれた病院で、意識回復後直ちに、「現状より悪くしない」ことを目的としたリハビリを行います。

回復期リハビリは、リハビリ専門病院などで行われ、機能が低下している部分の回復、麻痺がある場合などは、麻痺していない健康的な半身を用いた日常生活を行うための機能訓練を目指すことが主な目的となります。退院後の生活をスムーズに行えるよう、早期から社会復帰への情報提供や関連部門との調整をしていきます。

維持期リハビリは自宅や地域の施設などで行うリハビリになります。日常動作を維持することが大切な目的であり、併せて服薬や生活改善など再発を防止する観点も重要になります。

職業リハビリテーション

障害のある人が、職業的自立、あるいは社会的活動への参加を実現していくことを目標として、働きがいのある人間らしい仕事に就き、それを維持することができるようにします。職業指導、職業訓練、職業紹介などのサービスをいいます。

社会リハビリテーション

様々な社会的な状況の中で、自分のニーズを満たし、一人ひとりに可能な最も豊かな社会参加を実現する力を高めることです。
また、家族関係、住宅、地域、行政、法律、教育、公共機関、交通機関などのさまざまな社会システムの中にある、高齢者や障害者の社会参加を妨げるものを減少させ、社会参加につなげるアプローチのことです。

教育リハビリテーション

障害のある児童や人の能力を向上させ、潜在能力を開発し、自己実現を図れるようにすることを目的とする支援です。障害児教育、特別支援教育などとほとんど同じ意味ですが、教育リハビリテーションは、社会教育や生涯教育なども含む幅広い教育活動です。

リハビリテーション工学

リハビリテーションに対する工学的アプローチを一般的にリハビリテーション工学または参加支援工学といいます。具体的には、義肢装具、コミュニケーション機器、環境制御装置、住宅改造、建築及び交通機関等のバリアフリー等における工学的な支援です。

ADLとIADL

ADLはActivities of Daily Livingの略称で日常生活動作といわれます。「ひとりの人間が独立して生活するために行う基本的なしかも各人に共通に毎日繰り返される一連の身体動作群」と定義されています。具体的には、

  • 起居動作
    「寝返り」「起き上がり」「立ち上がり」「座る」など、姿勢変換のための動作のことを指します。
  • 移乗
  • 移動
  • 食事
  • 更衣
  • 排泄
  • 入浴
  • 整容

などです。

IADLはinstrumental ADLの略称で、手段的日常生活動作といわれます。ADLより広く応用的な活動のことで、具体的には、

  • 掃除
  • 料理
  • 洗濯
  • 買い物
  • 交通機関の利用
  • 電話対応
  • スケジュール調整
  • 服薬管理
  • 金銭管理

など日常生活の様々な動作のことです。

お疲れ様です。介護の基本2/13読破です。
次の記事はこちらです。
データでみる高齢者虐待|虐待の種類や身体拘束も説明

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