
「障害の理解」には障害福祉の歴史や法律なども含まれますが、勉強する労力の割に得点に結びつきにくいため、ここでは割愛し、医学的側面のみに焦点をあてています。ただし、障害者総合支援法などほぼ毎年設問や選択肢に登場するものは「社会の理解」のテキストで解説しています。
視覚障害
出典 https://www.amano-ganka.jp/know_illness/
白内障
白内障は、水晶体が白く混濁している状態で、目のかすみや羞明(まぶしく感じること)、物が二重、三重に見えるなどの症状があります。 最も多いのは加齢によるもので、程度の差はありますが70歳を過ぎるとほぼ全員にみられます。
点眼薬・内服薬での治療を行います。日常生活に支障をきたすようになれば手術を行います。 手術により視力の改善が期待できます。
先天性白内障の人の場合は、手術後、眼鏡またはコンタクトレンズによって屈折異常を矯正し、視距離に応じた眼鏡等の視覚補助具を用いることが大切です。
緑内障
眼球は、一定の眼内の圧力(眼圧)によって維持されていますが、緑内障は何らかの原因によって眼圧が上昇する疾患です。急性の緑内障発作では目の痛み、頭痛、吐き気などの激しい症状を伴い、進行すると失明することもあります。
治療法は点眼療法、レーザー治療、手術などがあります。
近年では、眼圧が正常な範囲であっても、視神経の萎縮が進行して、緑内障と同じように視野狭窄が出現する正常眼圧緑内障も増加しています。
加齢黄斑変性症
加齢により黄斑部に萎縮や変性(傷んでしまうこと)が起こる病気が加齢黄斑変性症です。高齢者の失明原因の1つです。主な症状には変視症(歪んで見えること)、中心暗点(見ようとするものの中心部が見えないこと)があります。治療によって視力が正常に改善することはありません。
出典 http://www.kareiouhan.com/about/kind.html
網膜色素変性症
網膜色素変性症は、視細胞の変性を特徴とします。夜盲(明るい所では目が見えるのに、薄暗い所では見えなくなる症状)や視野狭窄などの症状がみられます。中心の視野が残ることもありますが、完全に失明してしまう場合もあります。

視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して、光の刺激を神経の刺激すなわち電気信号に変える働きを担当しています。この細胞は主に暗いところでの物の見え方や視野の広さなどに関係した働きをしています。
視神経萎縮
先天性で出生の直後から視力が低下している場合や、頭部外傷、脳腫瘍などによるものがあります。視神経萎縮は、中心暗転があり、中心部が見えないことで読書や細かい作業が不自由になります。また、薄暗く見えて、色の区別がはっきりしなくなるので、支援の際には色に配慮することが大切です。

中心暗転とは視野障害の1つで、中心窩に視野の異常がみられ、中心視力が低下することです。
糖尿病性網膜症
1~3のように症状が進んでいきます。
1.【単純網膜症】
糖尿病になると血液の中の血糖があがり、ドロドロした血液になります。網膜には毛細血管が広がっており、この毛細血管がつまって出血します。この段階では自覚症状がありません。
2.【前増殖性網膜症】
進行すると、出血した血液の脂肪やタンパク質が凝固する事により、網膜内に沈着する白斑が増えてきます。
3.【増殖性網膜症】
さらに進行すると、詰まった血管から新生血管が現われ、血管が硝子体まで伸びてきます。その血管が非常にもろく、眼底出血や硝子体出血の発症原因となります。出血の後に膜が形成され、その膜が縮むと網膜剥離をおこし、失明につながる事があります。
単純網膜症の場合は内科的な血糖のコントロールが重要ですが、病状が進行し、眼底出血等が発症してくる状態になるとレーザー光線で眼底出血をしているところを焼いて出血を抑え、新生血管の発症防ぐ、レーザー光凝固術を行います。
ベーチェット病
原因不明で指定難病となっています。ぶどう膜炎を頻繁に起こし、口内炎、陰部潰瘍などの主症状があります。また、網膜の出血や浮腫が現れると、網膜剥離を引き起こして失明することがあります。発作が起こると視力が低下するので、発作時には眼科医と相談して支援を勧める必要があります。

目の中に存在する3つの組織(虹彩・毛様体・脈絡膜)の総称をぶどう膜といいます。 これらの組織に炎症が生じるとぶどう膜炎が起こり、徐々に目の中全体に炎症が広がっていきます。 発症すると、目の痛みや視力障害があらわれます。
中途視覚障害
中途視覚障害者は、視覚に頼った生活の経験があるために、障害を受けたときのショックは大きく、心理的安定を図ることが必要です。支援においては、視覚障害のある人が心理的プロセスのどの段階にあるのかを把握する必要があります。
- 失明恐怖の時期
眼の症状が治るかどうか、このまま失明するのではないかなど失明に対する恐怖を抱き、漠然と生活への不安をもっている。
- 葛藤の時期
将来の生活設計に見通しを立てられず、失明による精神的な打撃が最も強い時期。失明直後でもあり、視覚障害という衝撃から自分を守ろうとし、感情の表出がなくなって、自分を取り巻く周囲の刺激から逃れようとする。
- 生活適応の時期
見えないという現実を直視し、生きる意欲を見出そうとする時期。生活訓練などにより視覚以外の残存感覚機能を最大限に活用し、新たな行動様式を学習することで、多くの行動能力を獲得する。
- 職業決定の時期
視覚障害のある人の職業の実態を知り、経済的に安定した生活を取り戻せるのかどうか不安を抱いている。
- 職業獲得の時期
職業についてから、現実のさまざまな困難を克服し、自分の経済的な基盤を確保する。
先天性視覚障害
先天性視覚障害児・者は、視覚による情報収集が困難なために、限られた情報や経験の範囲内で概念を形成する場合があります。次の用な特徴がみられれます。
- バーバリズム(唯言語主義)
特に実体や具体的経験を伴わないまま、言葉による説明だけで事物・事象や動作をとらえてしてしまうことがある。 - ブラインディズム
指を自分の眼に押し当てたり、口に入れたり、頭や身体をゆすったりする特徴的な行動をいいます。外界からの刺激が少ないために、周りの状況の変化がつかめず不安となるためとられる自己刺激行動と解されています。
聴覚障害
聴覚障害では、ほとんど聞こえない状態をろう、少し聴こえる状態を難聴といいます。
聴覚障害者の分類
難聴者
難聴者は、補聴器等を用いることによって話し言葉が少し聞こえ、言葉でのコミュニケーションが可能な人です。また、言葉も比較的明瞭で、静かな明るい場所であれば1対1の会話は比較的可能です。
ろう者
ろう者は、話し言葉が不明瞭であることが多いため、手話によるコミュニケーションが中心です。
中途失聴者
中途失聴者は、人生の途中で耳が聞こえなくなった人で、話し言葉は明瞭だが、ほとんど聞こえない場合があります。また、中途失聴者は時間が経つと発音の明瞭度が低下することが多く、コミュニケーション状況から孤立しやすい。
- 手話
- 指文字
- 筆談
- ジェスチャー
- 絵
など、その人のコミュニケーション能力に合わせた情報提供が行われれば、コミュニケーションが成り立つことを体験的にわかってもらうことが大切です。
難聴の分類
聴覚障害は、損傷の部位によって、
- 伝音性難聴
- 感音性難聴
- 混合性難聴
に分けられます。近年、医学の進歩によって、伝音性難聴は治療が進み、現在の難聴のほとんどは、感音性難聴や混合性難聴によるものである。

伝音性難聴
外耳および中耳(伝音機構)の障害によって聞こえが悪くなります。伝音声難聴を引き起こす疾患には滲出性中耳炎、慢性中耳炎のほかに先天性の外耳、中耳の形態異常などがあります。感音性難聴よりも伝音性難聴のほうが、補聴器の使用による効果は高い。
感音性難聴
内耳から大脳皮質(感音機構)までの障害によって聴力が低下します。特徴としては、
- 音がひずんで聞こえ言葉がはっきりしないことが多い。
- 補聴器を使用しても言葉を判別することは難しい。
- 大きな音はうるさく感じるが、小さな音はあまり聞こえないことがある。
などがあります。老人性難聴(加齢性難聴)は、感音性難聴であることが多く、高音が聞き取りにくい。
混合性難聴
伝音性難聴と感音性難聴が合併して起きたケースで、聞こえの状態も両方の難聴の特徴を持っています。中程度の感音性難聴と伝音性難聴が合併すると、高度の難聴レベルになります。
内部障害
心臓機能障害
心臓機能障害の原因となる疾患には、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心不全等があります。
虚血性心疾患
心筋に血液(酸素)を供給している冠状動脈の血流量が何らかの原因によって減少し、その結果、酸素供給が低下し、心筋の酸素需要を充足できないために起こる病態です。次の2種類に分けられます。
- 狭心症
虚血時間が短く、器質的心筋障害を残さずに回復する - 心筋梗塞
虚血時間が長く、心筋壊死を起こして回復不可能な障害を残す。

狭心症についてもう少し説明を加えておきます。
狭心症のタイプは次のように分けられます。
- 労作性狭心症
身体的労作や精神的緊張によって心筋酸素消費量が増加した時に狭心発作が起こる。 - 安静時狭心症
睡眠中や安静時に狭心発作が起こる。 - 労作性兼安静時狭心症
上記両方の出現様式を示す狭心症。
新規に発症した狭心症や狭心発作が増悪するタイプを不安定狭心症と呼び、急性心筋梗塞に移行しやすいので注意が必要です。また、不安定狭心症と急性心筋梗塞を併せて、急性冠症候群と呼びます。
狭心症は、冬の寒い時には、軽度の労作でも狭心発作が誘発されやすいなどの特徴があります。重症になると軽い労作や安静時にも発作が出現します。発作の持続時間も長くなり、胸痛の程度も強くなります。
心不全
心不全は病名ではなく、心筋梗塞や弁膜症などの病気や高血圧などが原因となり心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます。
心臓には全身に血液を送り出す機能と全身から血液を戻す機能があります。
全身に血液を送り出す機能が低下し、臓器に十分な血液が行き渡らないことによる症状としては、
- 疲労感
- 動悸・息切れ
- 冷感(冷汗)
- 四肢チアノーゼ(手足の末端の血色が悪く、青白くなる)
- 意識障害(脳に十分な酸素が行き届かなくなるため)
などがあります。
また、心臓から体側へ血液を送り出せずに、心臓だけでなく、肺がうっ血(肺に血液が滞る)することにより、呼吸困難などの症状があらわれます。
特に夜間に臥床しているときには呼吸困難が強くなります。上半身を起こしオーバーテーブルなどにもたれかかり、前傾を保つ姿勢(起座位)をとるか、後ろに寄りかかる姿勢(ファーラー位)をとると楽になります。
看護Roo!
悪化すると安静にしていても症状が出るようになり、夜中、寝ているときでも咳が出たり、息苦しさで寝られなくなることもあります。こうした症状は、身体を起こした姿勢だとよくなるのが特徴です。

なぜ身体を起こした姿勢で呼吸が楽になるのか、補足説明しておきます。横隔膜についての理解が必要なのでそこから説明します。
横隔膜は厚みを持った伸縮性のある筋肉で、胴体のほぼ真ん中にあります。ドームのような形をした膜状の筋肉で、胴体を肺のある胸部と、腸などその他の臓器のある腹部に分けています。
All about
横隔膜は空気を吐く時、肺とともに上にあがっています。(下図左)そして、ゆるんで持ち上がっていた横隔膜は縮みながら下がってきます。(下図右)この時、横隔膜にくっついている肺の下部が引き下げられて鼻や口から空気が流れ込んできます。ちょうど注射器のピストンのようなイメージです。
All about
横隔膜と呼吸の関係は重力がポイントになります。
座位の場合では、横隔膜自体や肺の重みで、息を吸う際に横隔膜を下げるのを重力が助けてくれます。しかし、臥位の場合では、重力によるサポートが働かないうえに、腹部の臓器の圧迫により、横隔膜を下げるのにより力が必要になります。

寝ている時の方が横隔膜が活発に働くのは、重力のサポートが無くなり自力で収縮をしなければいけないからなのです!
全身の血液を心臓に戻す機能が弱くなり、血液がうっ滞することによって起こる症状としては、

うっ滞とは、血流などが静脈内などに停滞した状態を言います
- 体重増加(筋肉や脂肪が増えているのではなく、水が増えている)
- むくみ(浮腫)
静脈内に血液が溜まり、顔面や下肢などがむくんだり、お腹に水がたまったりします。
などがあります。
心臓ペースメーカー
心臓のが正常に機能して心臓が60~80回のポンプ活動を規則的に行っている状態を「正常洞調律」といいます。この正常洞調律の範囲を超えて脈が遅くなる(1分間に50回以下)タイプの不整脈が「徐脈性不整脈」です。 心臓ペースメーカーは心臓に人工的に電気刺激を与え、徐脈性不整脈を治療する目的で作られた精密医療機器です。心臓の病気そのものを治すものではありませんが、激しい運動をしない限り、普通の生活を送ることができるようになります。心臓ペースメーカー使用者の日常生活の介護において注意するポイントは、以下のようなものがあります。
- 心臓ペースメーカー使用者の日常生活の介護においては、利用者が生命の危機と将来に対する不安をもっていることに留意する。
- 脈の管理、腎臓、呼吸器について理解が必要であり、また水分・運動量、食事など医学的管理が必要なので、医師による運動処方に基づいて援助する。
- 心臓ペースメーカー装着中は、空港で金属探知機を身体に近づけると強力な電磁波等で影響を受けることがある。そのため使用者は、あらかじめ申し出ることが必要です。
- 使用者の近くでの携帯電話の使用は避ける。
- 変電所や高圧電線に近づかない。
心臓機能障害のある人の入浴
心臓に負担がかからないように入浴時は温度はぬるめ(37~39℃)にし、水位は心臓よりも低くします。
腎機能障害
腎機能障害は何らかの原因によって腎臓がその機能を喪失し、生体の恒常性を維持できない状態です。急速に生じた場合を急性腎不全といいます。また、数か月ないし数年かけて持続性の機能不全に陥ったものを慢性腎不全といいます。
腎機能の低下を表す指標として、糸球体ろ過値(GFR)があります。糸球体ろ過値(GFR)は腎臓の中の糸球体が一分間にろ過している血液の量で、糸球体ろ過値が正常な人の30%以下になった時に、慢性腎不全と診断されます。15%にまで低下すると生命の維持ができなくなり、末期腎不全の治療として人工透析や腎移植の対象となります。

人工透析には、人工膜を利用する血液透析と腹膜を利用し内部環境を正常化する腹膜透析があります。
血液透析
全身の血液を体の外に出し、機械(透析器)の中で血液をろ過して、きれいな血液を体に戻す方法です。ほとんどの場合、腎臓専門医のいる施設で行うため、定期検査や合併症の治療を同時に受けられます。週2~3回の定期的な通院が必要で、いったん治療を始めると途中で中止することはできません。透析生活は、長期間で生涯に及ぶため、治療についての正しい知識が必要です。
出典 https://jin-lib.jp/dialysis/hd.html
腹膜透析
お腹の中に透析液を一定時間入れておくと血液中の余分な水分や老廃物が腹膜を介して透析液に移行します。その透析液を一日数回交換して、血液をきれいにする方法が腹膜透析です。月に1~2回の通院でよいため、通院の困難な人が選択する場合があります。在宅での治療のため、家族の協力は不可欠です。
出典 http://www.shirasagi-hp.or.jp/dialysis/pd.html
消化器系ストーマ
消化器系ストーマとは、直腸がんや大腸がん等の手術で腸の一部分を切除することによって便を体外に排泄できなくなった場合の、便の排泄のためにつくられた人工肛門のことです。その造設された位置によって便の性状と排泄回数が異なります。
出典 看護Roo!
留意点は、以下のようなものがあります。
- 回腸ストーマの場合、消化の悪いナッツ類、きのこ類、海藻類でストーマが塞がれることがあるので注意する。
- イモ類、ビールはガスが発生しやすくなる。
- 消化器系ストーマのパウチ(袋)には皮膚保護剤がついているものもあるが、皮膚炎を起こしやすい。装着時に少し空気に触れさせ、乾燥させてから装着する。
尿路ストーマ
「尿を溜める機能を持たずに尿を体外へ出す」というやり方です。
お腹にストーマ(尿の出口)を作り、専用の装具(尿を貯めるビニール)を常に皮膚に装着しておく必要があります。
出典 https://yuji-motomura.sakura.ne.jp/boukoku20170830/
尿は常に出ており、尿路感染症を防ぐためにも入浴の際には装具をつける必要があります(シャワーのときは必要ありません)。
膀胱留置カテーテル
膀胱にたまった尿が排出できないような場合は、膀胱内からカテーテルを使用して尿を排出する膀胱留置カテーテル法を用います。尿道を経由する尿道留置カテーテル法では、尿路感染や結石、尿道裂傷などの合併症があります。発熱や尿混濁などがあれば医療職に連絡します。
ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
ヒト免疫不全ウイルスは、HIVと略されるのが一般的です。HIVが増殖すると、身体の免疫機能を維持することが難しくなります。免疫力は徐々に低下し、通常はとるに足らないような弱い菌やウイルスなどが活性化して感染症(日和見感染症)が起こることがあります。
エイズ(AIDS)は、後天性免疫不全症候群という病気の略称です。HIVに感染して免疫機能が低下し、厚生労働省が定めた23の合併症(日和見感染症)のいずれかを発症した場合、エイズと診断されます。

HIVの感染とエイズ(AIDS)は異なるので注意です。
エイズの感染経路は、以下のようなものがあります。
- 性行為
- 輸血血液や血液製剤
- 母乳
- 臓器移植
HIV感染者の介護で最も気を付けるべき点は、感染防御ですが、ふだんから感染対策の基盤となるスタンダート・プリコーション(標準予防策)を意識していれば、HIV感染者のケアをむやみに恐れる必要は全くありません。具体的には、手洗いをきちんと行うということ、血液、体液、分泌液、汚染物を触るときには手袋を装着するなどです。
肝臓機能障害
肝臓機能障害に関しては、こちらの記事で説明しています。⇒発達と老化の理解「ウイルス肝炎」
リンパ浮腫
リンパ浮腫は、リンパ節の切除、リンパ管の閉塞などの原因でリンパ液の流れが悪くなり、リンパ管内や体の組織にたまり、浮腫みが生じたものをいいます。
上肢リンパ浮腫は、乳がん手術で、リンパ節切除や放射線治療を行った側の腕にみられることが多い。
一度、発症すると完治はしにくいため、日常生活では以下の注意が必要です。
- 皮膚を傷つけない
- 体をしめつけない
- お風呂などで、血流を良くし過ぎない
- 負担をかけない
- 体重管理を行う
脳性麻痺
受胎から生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる障害を指します。運動障害を主症状とします。進行性疾患、一過性の運動障害や、治療で正常化する状態は脳性麻痺には該当しません。
脳性麻痺と診断された場合、根治療法はありませんが、リハビリテーションや、筋緊張や不随意運動に対する薬物療法などを行うことで、日常生活の様子が改善することがあります。
脳性麻痺の症状
脳性麻痺はアテトーゼ型、痙直型、混合型などに分類され、そのタイプによって症状が異なります。脳性麻痺の定義には知的障害は含まれませんが、脳の障害であるため、知的障害を合併していることもあります。
■アテトーゼ型
脳性麻痺の小児の約20%にみられ、腕、脚、体幹の筋肉が不随意的にゆっくりと動きます。よじれるように動く場合や突然動く場合、断続的に動く場合などがあります。この動きは強い感情が起こると激しくなり、睡眠中には生じません。知的発達は比較的保たれます。

アテトーゼとは、体をよじらせる不随意の運動のことです
■痙直型
痙直型は脳性麻痺の小児の70%超を占め、筋肉がこわばり(痙直)、筋力が低下します。筋肉のこわばりは体の様々な部位に生じます。知的発達の障害の程度は様々です。
■混合型
混合型は2つ病型が複合したもので、ほとんどが痙直型とアテトーゼ型の混合型です。この混合型は、脳性麻痺の小児の多くにみられます。混合型の小児では、重い知的障害がみられることがあります。
脊髄損傷
背骨は体を支える柱の役目をしています。専門的には脊柱や脊椎と呼ばれ、部位によって頸椎、胸椎、腰椎、仙椎と名称が変わります(下図参照)
脊椎の中には脊髄と呼ばれる筋肉や感覚を司る神経が通っており、これも同じように頚髄、胸髄、腰髄、仙髄と名称を変えます。
出典 http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/OPLL/01_ch1_OPLL_GB.pdf
脊髄の両側に対になって出ている神経が脊髄神経です。脊髄神経は頸神経8対(C₁~C₈)、胸神経12対(T₁~T₁₂)、腰神経5対(L₁~L₅)、仙骨神経5対(S₁~S₅)、尾骨神経1対(C₀)の31対からなります。
この各々の脊髄神経が下図のように体の各部の動きを担当しています。
出典 看護Roo!

上図の担当部位まで細かく覚える必要はありません。イメージしやすいように載せただけなので参考までに。
脊髄が損傷されると、その障害された部位より下へ脳からの指令が伝わらなくなり、また下からの信号が脳へ伝わらなくなってしまう。例えば足の動きを司るのは主に腰神経5対ですが、それより上部の頸神経C₆や胸神経T₁が障害されると足も動かせなくなります。
頚髄(C₁~C₈)が損傷することを頚髄損傷といいます。たとえば、第3頸髄(C3)損傷とは、C4以下の神経が障害されていることを意味します。C4以下には大脳皮質からの運動指令が伝わらないために四肢麻痺となり、加えてC4で支配されている横隔膜が麻痺するために人工呼吸器が必要になります。C4損傷(C5以下の神経が障害される)では、四肢麻痺は同様であるが、横隔膜は機能するため、自発呼吸は可能です。
もう一つ例をあげると、第6頚髄損傷(C₇以下の神経が障害される)では、第6頚髄(C₆)の機能が残っているので、肩・肘を曲げること、手首を背屈することが可能です。環境を整えれば、食事・整容・行為・電動車いすの駆動など身の回りのことが可能になる可能性があります。
このように、損傷部位が頭に近いほど、障害の範囲が大きくなります。

覚える必要はありませんが、参考までに脊髄損傷患者の生活自立度を引用しておきます。
また、『自分で行う更衣動作』で具体的な更衣の手順などが説明されており、理解が深まると思うので、確認してみてください。
出典 看護Roo!
精神障害
精神障害の原因には、以下のように分けられています。(※1)
- 内因性
原因不明(素質や遺伝など)
例)統合失調症、双極性障害など - 外因性
外傷や疾患、薬物の影響などはっきりした理由で脳神経の働きが阻害され、精神症状がみられるもの。
例)脳血管障害、依存症、認知症など - 心因性
性格や環境からのストレスなど
例)神経症、心因反応など
(※1)
精神障害の原因は一つではなく、さまざまな要因が複雑に関係することから、近年では上記のような原因論で分類することは少なくなっています。
現在は、障害の状態や症状等から総合的に判断する多軸診断が主流となっており、
ICD-10(世界保健機構(WHO)による、死因や疾病の国際的な統計基準として公表されている分類)や、アメリカ精神医学会の作成したDSMを用いることが多くなっています。
精神疾患は、青年期から成人期の人生の途上で発病する場合が多い。就学、就職、結婚などの社会生活経験を積む機会を逃し、自己否定感が強い傾向があります。
精神障害の治療としては、薬物療法や精神療法とともに生活療法を行います。生活療法とは、患者の日常生活の調整、指導、訓練を行い症状の改善を図ることで、社会への参加を促す療法のことです。
統合失調症
青年期に多く発症する原因不明の疾患で、次のような症状があります。
- 健康なときにはなかった状態があらわれる陽性症状
例)幻覚や妄想 - 健康なときにはあったものが失われる陰性症状
例)感情の平板化、意欲の欠如
治療は薬物療法、精神療法、生活療法が中心となります。
統合失調症の人とのコミュニケーション
統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなる病気です。そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。現実離れして理解できない言動や、幻覚、妄想があっても中立的な態度でかかわり、「それは違う」「それは間違いない!」というような応答は避け、否定も肯定もせず、受容的かつ非審判的態度で接することが大切です。
うつ病
うつ病は、気分が沈み、行動や動作が緩慢になり、食欲低下や不眠や頭痛など身体症状も現れて、日常生活が立ち行かなくなります。
- 不安
- 悲観的感情
- 自責感
- 自殺念慮
などが生じます。
抑うつ気分は1日の中でも波がみられることが多く、朝方は最も気分が落ち込んで、午後から夕方にかけて症状が軽くなることがあります(日内変動)。
医師による専門的な治療を受ける必要がありますが、うつ病と認知症は症状が似ているため、鑑別が難しい。
うつ病の人とのコミュニケーション
安易に励ましたり、気分転換を強制したりするより、受容的・共感的な対応で安心できる環境を作ることが必要です。性急な変化を求めず、支持的に関わることが大切です。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは脳の障害により、言語、記憶、理解、判断、注意、学習、行為、感情などの機能が障害された状態です。具体的に以下のような症状があります。
記憶障害
物の置き場所を忘れたり、新しい出来事を覚えていられなくなったりすること。そのために何度も同じことを繰り返し質問したりする。
注意障害
ぼんやりしていて、何かをするとミスばかりする。2つのことを同時にしようとすると混乱する。
遂行機能障害
自分で計画を立ててものごとを実行することができない。状況に応じた判断ができない。人に指示してもらわないと何もできない。行き当たりばったりの行動をする
社会的行動障害
- 依存
すぐ他人を頼る。 - 退行
子どもっぽくなる。 - 欲求コントロール低下
無制限に食べたり、お金を使ったりする。 - 感情コントロール低下
すぐ怒ったり笑ったりする、感情を爆発させる。 - 対人技能稚拙
相手の立場や気持ちを思いやる子ができず、よい人間関係が作れない。 - 特定の行動や方法に固執する。
半側空間無視
半側空間無視の人は、損傷した大脳半球と反対の方向への刺激に気づくことが難しくなります。右半球障害による左側半側空間無視が一般的です。半側へ注意が向きにくくなることから生活場面への影響も大きくなります。
具体的には、次のような様子があります。
- 無視のある側に立っている人に気づかない
- 車いすのブレーキ・フットレストの操作を片方だけ忘れてしまう
- トレイの端にある食事に気づかない
- 壁や手すりなどにぶつかりながら進む
- 半分だけ髪を整える・ひげを剃る
【ケアのポイント】
■無視があれば指摘する
ある方向の刺激だけが気づきにくいという状態が理解できていない場合があります。まずは、ある方向に注意が向きにくいという状態を理解してもらうことが重要なので、無視がある場合は指摘が必要です。ただし、見落としの指摘をあまりに繰り返してしまうと自尊心を傷つけてしまう可能性もあり、そのバランスについては留意しなければなりません。
■声掛けは無視がない方向から
見えないところから話しかけると、驚かせてしまう可能性もあるので配慮します。
■食事の時のポイント
- 左半側無視がある場合には、食事のトレイ自体を右側にずらすと、気づかないまま食べ残してしまうということが減ります。
- テープなどを使って、トレイの左端や左隅に目立つ印などをつけると、どこが左の端にあたるのか認識しやすくなります。
- 無視がある側にコップなどを置いてしまうと、気づかずに床に落としてしまう可能性があるため注意します。

2001(平成13)年から開始された高次脳機能障害支援モデル事業によって、脳損傷者に共通する症状が明らかにされ、行政的な診断基準が作成されています。また、高次脳機能障害は、精神障害者保健福祉手帳の対象となることが明確にされました。
高次脳機能障害の診断基準
高次脳機能障害支援モデル事業で作成された診断基準は以下のように定義されています。
- 脳損傷の原因には、事故による受傷や疾病の発症の事実があること
- 日常生活や社会生活に制約があって、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害であること。
- 検査あるいは診断書により脳の器質的な損傷が確認できること。
- 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患(認知症など)による脳損傷を除外すること。

周産期とは妊娠22週から出生後7日未満までの期間をいい、合併症妊娠や分娩時の新生児仮死など、母体・胎児や新生児の生命に関わる事態が発生する可能性が高くなる期間のことです。
高次脳機能障害の原因
高次脳機能障害の最も多い原因は脳血管疾患で、次に多いのが、外傷性脳損傷です。交通事故のほか、スポーツ事故、転倒・転落でも、高次脳機能障害が起こる事があります。そのほか低酸素脳症、脳腫瘍、脳炎なども原因になります。
脳性まひ、発達障害、うつ病、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの病気が原因で、高次脳機能障害の症状が見られることもありますが、高次脳機能障害と診断され治療を受けることができるのは、脳卒中や外傷性脳損傷など、症状が進行しない病気が原因の場合に限定されています。
職場適応援助者(ジョブコーチ)
職場適応援助者(ジョブコーチ)とは障害のある人が一般就労をする際に、職場に出向き、障害のある人が自立的に仕事ができるように支援する者です。高次脳機能障害のある人が、地域の就労の場で適応して自立的に行動ができるようになるためには、現場で本人を支援するだけでなく、周囲の人たちにも対応方法をアドバイスする必要があります。雇用主に対して障害の理解や対応方法を指導するなどして支援環境を整える役割を果たします。
高次脳機能障害のある人の支援のポイント
- 直接的な支援(食事、移動介助など)よりは、間接的な見守りや声かけが中心となる。
- 支援者が決めたり、直接指示したりするのではなく、本人の使えるヒントを本人自身がからだで覚えられるように促し、行動の定着を支援する。
- かかわる支援者が同じ指示を出し、同じようなパターンで進めることが、本人の混乱を防ぎ、行動の確実な定着を促すことにつながる。支援者が個々にに支援方法をアレンジしてはいけない。
- 記憶や注意の障害があるので、説明は短く、簡潔にする。メモを書いて渡すとよい。
- 時間が経過すると忘れてしまったり、記憶がゆがんでしまったりするので、すぐに対応する。
- 説教をしたり、プライドを傷つけるような言い方をせず、相手を認める声かけをする。
- 退行してなれなれしくなっている場合は、支援者のほうが距離をとる。
知的障害
知的障害とは、18歳までの発達期に生じる知的発達の遅れにより、社会生活に適応する能力に制限がある状態のことです。
知的障害の判断基準
知的障害は、知的能力の発達の程度と、適応能力の状態の両方を見て判断されます。
- 知的能力
知的活動を行うために必要な能力のことで、読み書きや計算を行ったり、物事を理解し、考え、判断する思考能力のことです。知的能力は、知能検査によって測られます。知能検査は、知能の発達の程度を示す数値で、知能指数(IQ)によって表され、IQ70以下だと知的障害に該当する可能性があります。 - 適応能力
社会生活に適応する能力のことで、集団のルールを守ったり、集団の中での自分の役割を果たしたり、他人と良好な関係を築くなどの能力を指します。
次の3つの条件が揃った場合に知的障害である可能性が考えられます。
- 知的能力が低い
- 適応能力にも制限がある
- これらの症状が発達期に現れている

18歳を過ぎてから起こった知的能力や適応能力の低下は、知的障害とは判断されません。
ダウン症候群
染色体異常によって起こり、通常、21番目の染色体が1本多くなっていることから「21トリソミー」とも呼ばれます。ダウン症の特性として、以下のようなものがあります。
- 筋肉の緊張度が低い
- 多くの場合、知的障害がある。
- 発達の道筋は通常の場合とほぼ同じですが、全体的にゆっくり発達します。
- 難聴や先天性の心疾患などを伴うことが多い。
医療や療育、教育が進み、最近ではほとんどの人が普通に学校生活や社会生活を送っています。
知的障害者の介護のポイント
- 一人の人間として地域社会でさまざまな人との関係を持つことができるように支援する。
- 知的障害者が自立した生活が送れるように知的障害者との関係を深めながら、自立支援の援助を行う。
- 知的障害者は学習に時間がかかるため、動作を理解させるときには順序を追ってともに行動したり、繰り返し分かりやすい言葉で説明する。身振りや絵などを使うことも有効である。
- さまざまな経験を積み重ね、失敗しても受け入れられる環境をつくる。
知的障害者のライフステージに応じた支援
乳児期
- 本人への療育をはじめとする家族支援
- 早期療育による言葉や運動および感覚機能などの発達促進の支援
- 親や身近な人との愛着形成への支援
- 親の療育の仕方や障害受容を支援
幼児期・児童期
- 早期療育による言葉や運動および感覚機能、社会性などの発達促進支援
- 親の療育に関する支援
- 障害や疾病のほか、心身の発達や健康などに関する相談支援
- 治療施設への通園に関する親への支援
- 身体的な成長と精神的な成長のアンバランスに配慮する。
青年期・成人期
- 将来の就職を考えた自立プログラムを提供する。
- 労働および生涯学習や余暇活動を通しての自立と社会参加の実現に関する支援
- 家庭生活への支援
壮年期・老年期
- 親と死別後の生活への適応に関する支援
- 健康管理に関する支援
- 金銭や財産に関する支援
発達障害
発達障害は脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものです。発達障害は一人ひとり症状や特性が異なり、様々な特性を併せ持っている人もいるが、大きく分けて以下の3つのタイプに分類されます。
出典 https://junior.litalico.jp/about/hattatsu/
自閉症スペクトラム障害
自閉症スペクトラム障害とは、発達初期から症状が現れます。知的障害とは区別され、自閉症スペクトラム障害と知的障害は併存することもあります。
アスペルガー症候群、高機能自閉症、広汎性発達障害は自閉症スペクトラム障害の中に含まれる障害です。
アスペルガー症候群・高機能自閉症
アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラム障害の中でも、言葉や知的の遅れがない(IQ70以上)障害です。特徴としては、以下のようなものがあります。
- 遠まわしな表現や比喩を使った表現を理解することが困難
- 表情やしぐさから相手の感情を読み取ることに困難さがあるため、自分の話ばかりしてしまったり、相手が傷つく言葉を悪気なく伝えてしまったりする。
- 一度決まったルーティンが崩れたり、新しい環境へ適応が必要になったりするなど変化に対する抵抗が強くある。予定に変更がある場合などは、メモや絵等を使って予告することが必要である。
高機能自閉症は、アスペルガー症候群同様知的な遅れ(IQ70以上)はありませんが、言葉の遅れが見られます。
広汎性発達障害
広汎性発達障害とは、
- 対人関係の困難
- パターン化した行動や強いこだわりの症状
がみられる障害の総称です。
自閉症スペクトラム障害に見られる行動リスト
- 相手の反応や状況を察することが難しい。表情や声のトーンなどから、相手の気持ち、感情を読み取ることが難しい。
- 発言が一方的。交互に話すことができず、自分の関心のある話をし続ける。
- 言葉の裏の意味や曖昧な表現がわからない。皮肉を言われてもわからない。「最近どう?」と言われたときに何を聞かれているか分からない。
- 同じ動作を繰り返す。体を揺らす、クルクル回るなど。また、ルールに対して柔軟に対応するのではなく、厳密に守ろうとする。
自閉症スペクトラム障害の「スペクトラム」とは、「連続体」という意味です。つまり、アスペルガー症候群も高機能自閉症も連続性の中にあり、どの特徴・特性が「濃く」表れるかは、一人ひとり異なり、その子がいる環境によっても異なります。そのため、一人ひとりがどの環境でどのような困りごとを持っているかを明らかにしていくことが大切です。
学習障害(LD)
学習障害は知的な発達に遅れはないにも関わらず、読みや書き、計算などある特定の課題の習得だけが、他に比べてうまくいかない状態のことです。

目安としては、学校での学習到達度に遅れが1~2学年相当あるのが一般的です。
- 読字障害
文字が読めないのではなく、文章を読むのが極端に遅く、読み間違えることがよくある。 - 書字障害
文字を書いたり文章を綴ったりするのが難しい。読字障害があると書字障害も伴いやすい。 - 算数障害は計算や推論することが難しい。
学習障害は、本格的な学習に入る小学生頃まで判断が難しい障害です。特定の分野でできないことを除けば発達の遅れは見られないため、「がんばればできる」「努力が足りない」「勉強不足」と見過ごされることが多い。支援の必要性が認知されにくく、結果的に子どもの自信の低下につながりやすいので、注意が必要です。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
ADHDは、注意欠陥・多動性障害とも呼ばれ、
- 不注意(集中力がない)
- 多動性(じっとしていられない)
- 衝動性(思いつくと行動してしまう)
といった症状が見られる障害です。
ADHDのある子どもは、その特性により授業中、集中することが難しかったり、忘れ物が多いなどがあり、叱られることが多くなりがちです。叱られることが増えていくと、自信を失い、追い詰められてしまうということもあるので、子どもの特性を理解し接することが大切です。
チック障害
子どもに多い脳の神経系疾患で、就学期に多発します。多くは成長とともに症状が消えます。チックは自分の意思とは関係なく起こる不随意運動の一種で、素早い動作が繰り返し起こる病気です。
- 運動チック
まばたきや首をすくめるなど動きに関わるもの - 音声チック
せき払いや「あ、あ」といった発声、鼻鳴らし、同じ言葉を繰り返すもの
これら複数の症状が重なる場合もあります。チック症はチックを主な症状とし、発達過程に起こる病気です。
重症心身障害
重症心身障害は、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複した状態とされています。
重症心身障害のある人は、ADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作)で規定される生活行為については全面介助を要します。しかし、自分の気持ちをもつ、その気持ちを伝えたいという能力は失われていない場合が多いので、伝えようとする力を引き出すことが大切です。
重症心身障害のある人は、身体障害を合併するため、言語表出が苦手であり、言葉を使っての意思表示が難しい。したがって介護する側が閉じられた質問を用いて尋ねたり、写真を見せながら選んでもらうといったことが必要です。
難病
2014(平成26)年に難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)が成立し、難病と指定難病について定義されました(施行は2015(平成27)年)。指定難病は医療費助成の対象となります。
原発性リンパ浮腫
原発性リンパ浮腫は、がん手術によって生じるリンパ浮腫とは区別され、リンパ管の先天的低形成・無形成や機能不全により、四肢、特に下肢を中心にリンパ浮腫を発症し慢性的に経過する疾患です。症状・経過は多様ですが、浮腫により肥大した四肢の整容性の問題や感染、どの患部に続発するか等によって生涯にわたり身体的・精神的苦痛となる難治性疾患です。
対処療法に弾性ストッキングの着用やリンパドレナージマッサージがあります。また、肥満もリンパ浮腫に影響する因子とされており、日常生活において肥満を防ぐことが大切です。
後縦靭帯骨化症
椎骨の中で脊髄が位置する脊柱管の前方にある後縦靭帯が、何らかの原因により骨化した状態で、両手のしびれや四肢全体に麻痺を起こす疾患です。
出典 https://allabout.co.jp/gm/gc/402854/
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、原因不明の大腸炎で、大腸の潰瘍・びらんを主徴候とし、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛が特徴です。発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。男女比は1:1で性別に差はありません。
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデスとは、発熱、全身倦怠感などの全身的な炎症と、関節、皮膚、内臓などのさまざまな臓器の障害が一度に、あるいは次々に起こってくる病気です。その原因は不明です。20〜40歳代の女性に好発する病気で、日本全国に6万人以上の患者さんがいると考えられています。皮膚の症状としてもっとも有名なのは、頬に出来る赤い発疹(頬部紅斑)で、蝶が羽を広げている形をしているので、蝶型紅斑(ちょうけいこうはん)とも呼ばれています。また、表皮の角質層が厚くなりやがて剥がれて脱落する「角化性鱗屑」を伴う隆起した紅斑(円板状エリテマトーデス)も、この病気に特徴的で、顔面、耳、首のまわりなどに好発します。光線過敏症、口内炎、脱毛、関節炎などが生じることもあります。 臓器障害としては、様々なものが知られており、血球減少症、胸膜炎、心膜炎、腎炎、精神神経障害などがあります。ただし、これらすべての症状が起こるわけではなく、患者さん一人一人によって、出てくる症状、障害される臓器の種類や程度が異なります(全く臓器障害のない、軽症のひともいます)。
ベーチェット病
ベーチェット病は、
- 口腔粘膜のアフタ性潰瘍
- 皮膚症状
- 眼のぶどう膜炎
- 外陰部潰瘍
の4症状を主とし、急性炎症発作を繰り返す特徴があります。
脊髄小脳変性症
脊髄小脳変性症は、
- 失調性歩行(ふらふらとした不安定でぎこちない歩行)
- 手がうまく使えない
- 口や舌がもつれて話しづらい
などの、小脳の症状である「運動失調症状」を主症状とし、小脳、脊髄に関連した神経経路に病変がみられる原因不明の変性疾患の総称です。運動失調以外に、自律神経障害として、
- 起立性低血圧
- 排尿障害
- 発汗障害
などがみられます。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうける病気です。その結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていきます。
他に、延髄運動神経核の変性による球麻痺症状があります。

球麻痺とは延髄の運動核の障害による麻痺のことです。球は延髄の慣用語で、舌、咽頭、口蓋、喉頭などの筋の運動を支配する脳神経核があるため、延髄の損傷でしばしば咀嚼、嚥下、さらに構音の障害をきたします。
呼吸筋の筋力低下では、呼吸困難のため人工呼吸器が必要になる場合もありますが、症状の個人差は大きいです。
その一方で、以下のような「陰性4徴候」と言われる、現れにくい症状があります。
- 眼球運動障害
- 膀胱直腸障害
- 感覚障害
- 褥瘡
眼球運動障害
ALSでは、眼球の運動に必要な筋肉は侵されにくく、末期でも瞬きや目の動きでコミュニケーションをとることができます。
膀胱直腸障害
排泄に必要な膀胱、直腸の筋肉は、ALSによって侵されません。尿意や便意の感覚も正常なので、介助してもらい自分で排泄することができます。
感覚障害
ALSでは、視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚などの知覚神経は侵されず、正常なまま維持されます。末期でも映画や音楽などを楽しむ事ができます。
褥瘡
ALSの特徴的所見の一つとして、患者の皮膚がなめし皮のようにしなやかになり、死に至るまで褥瘡が起こりにくいという事実があります。
パーキンソン病

パーキンソン病に関しては毎年7,8割ほどの確立で介護福祉士国家試験で出題されます。
パーキンソン病は神経伝達物質の1つであるドーパミンが減少することで起きるとされています。ゆっくりと進行する原因不明の神経変性疾患で50~65歳での発症が多い。40歳以下で起こる場合もあり、若年性パーキンソン病と呼ばれています。薬物療法による治療には、L-ドーバ(レボドーバ)(ドーパミンを補う薬)などが用いられます。
パーキンソン病の四大症状
- 筋強剛(筋固縮)
筋肉がこわばる。顔の筋肉が固縮することによって表情が乏しくなる仮面様顔貌がみられる。 - 動作緩慢(無動・寡動)
動きが鈍くなる - 振戦
安静時の両手のふるえ - 姿勢反射障害
前かがみの姿勢、小刻み歩行、突進現象、すくみ足、転倒しやすくなるなどの症状がみられる。
非運動症状
■パーキンソン病認知症
パーキンソン病認知症では(レビー小体型認知症と異なり)、一般に精神機能の低下は、筋肉や運動の異常が発生してから10~15年後に始まります。他の認知症と同様、多くの精神機能が影響を受けます。記憶力が損なわれ、注意を払ったり情報を処理したりすることが困難になり、思考が鈍くなります。計画や複雑な課題を行う能力の低下は、アルツハイマー病より多く、より早くみられます。幻覚や妄想は、レビー小体型認知症より少ないか、より軽度です。
■自律神経系の症状
自律神経症状としては,以下のようなものがあります。
- 便秘(80%以上の人にみられるとされている)
- 起立性低血圧
- 頻尿
- 発汗過多
■精神症状
気分が落ち込むなどのうつ症状がみられたり、無関心になったり、不安が高まることがあります。うつ症状は、うつ病とは区別されますが、約半数の方にみられるといわれています。
■嚥下障害
パーキンソン病患者さんの約50%に、摂食・嚥下障害がみられます。
■その他の症状
- やせてくる
- 疲れやすい
- においが分からない
など様々な症状が知られるようになっています。
ホーエン・ヤール重症度分類
パーキンソン病の重症度の評価には、運動障害の程度を5段階で示す「ホーエン・ヤールの重症度分類(ヤール重症度)」があります。
Ⅰ度 | 体の片側だけに手足のふるえや筋肉のこわばりがみら れる。体の障害はないか、あっても軽い。 |
Ⅱ度 | 両方の手足のふるえ、両側の筋肉のこわばりなどがみ られる。日常の生活や仕事がやや不便になる |
Ⅲ度 | 小刻みに歩く、すくみ足がみられる、方向転換のとき転び やすくなるなど、日常生活に支障が出るが、介助なしに過 ごせる。職種によっては仕事を続けられる。 |
Ⅳ度 | 立ちあがる、歩くなどが難しくなる。生活のさまざまな場面で、介 助が必要になってくる。 |
Ⅴ度 | 車椅子が必要になる。あるいは、ほとんど寝たきりになる。 |
パーキンソン病の重症度は、重くなる一方ということはありません。例えば、Ⅲ度の方が治療によってⅡ度に改善することはよくあります。また、パーキンソン病の方のすべてが、Ⅴ度まで進行するわけではありません。
生活機能障害度分類
厚生労働省が日常生活機能障害を3段階に分類しています。
Ⅰ度 | 日常生活、通院にほとんど介助がいらない。(ホーエンヤールの分類のⅠ~Ⅱ度に相当) |
Ⅱ度 | 日常生活、通院に部分的な介助が必要になる。(ホーエンヤールの分類のⅢ~Ⅳに相当) |
Ⅲ度 | 日常生活に全面的な介助が必要で、自分だけで、歩いたり、立ち上がったりできない。(ホーエンヤールの分類のⅤ度に相当) |
障害のある人の心理
障害受容の過程
障害を持ってしまった人間の心理は複雑であり、いくつかの理論が提唱されています。特に日本国内では、コーンとフィンクの段階理論が用いられることが多い。ただ、どちらの段階理論も障害受容の過程については基本的には異なっていないとされています。この過程は、適応に向かって一段階ずつ前進するものではなく、一進一退しつつ移行します。
コーンの段階理論
ショック→回復への期待→悲哀(悲嘆)→防衛→適応
- ショック
発症・受傷直後であり、現実に起きていることが「自分自身とは関係がない」というような衝撃を感じている段階。 - 回復への期待
自分自身に起きていることを否認し、すぐに治るだろうと思い込もうとする段階。 - 悲哀(悲嘆)
徐々に現在の状態や状況を現実的に理解しはじめ、自分の価値が無くなり、全て失ってしまったと感じる段階。内向的反応(抑うつ、自責、自殺企図)や外向的反応(責任転嫁、怒り、恨み)を示す。 - 防衛
前向きに捉えることで、障害をものともせず感じることができはじめる段階。もし前向きに捉えることができなかった場合は、心の平静を保つために防衛機制を多用することがある。 - 適応
障害を受け入れ、障害は自分の個性のひとつであり、それによって自分の価値が無くなることはないと考え始める段階。少しずつ、他者との交流も積極的になっていく。
フィンクの段階理論
衝撃(ショック)→防御的退行→承認→適応と変化
- 衝撃(ショック)
強い不安から混乱状態になり、無気力状態に陥る段階。 - 防御的退行
自分自身の状況を否認したり、反対に願望のような回復に対する期待を持つ段階。 - 承認
色々な葛藤(自責、抑うつ、怒り等)がありながらも、少しずつ自分自身の状況を理解していく段階。 - 適応と変化
新しい価値観を見出し、現在の自分自身を受け入れる段階。

どちらの理論でも、
2段階目に否認・否定が見られ、3段階目に抑うつがみられます。
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