
『終末期』に関する内容は『生活支援技術』テキストに移して、まとめています。
こころのしくみの理解
マズローの欲求階層説
マズローは、人間のさまざまな欲求を
- 生理的欲求
- 安全欲求
- 所属・愛情の欲求
- 承認欲求
- 自己実現欲求
の5段階に階層序列化し、段階的により高次の欲求充足に向けて動機付けがなされていくとしました。
マズローの理論のうち、生理的欲求と安全欲求は、人間を含めた動物すべてがもつ基本的欲求(一次的欲求)であり、所属・愛情の欲求、承認欲求、自己実現欲求は、後天的に学習される社会的欲求(二次的欲求)であるとしました。
出典 https://www.jimpei.net/entry/maslow
欠乏欲求
足りないと不満が生じるもの
- 生理的欲求
- 安全の欲求
- 所属と愛の欲求
- 承認欲求
成長欲求
成長することそれ自体が目的になるものー自己実現欲求
適応のしくみ
適応とは、個人と環境との関係を表す概念で、個人の欲求が環境と調和し、満足を感じている状態をいいます。また、単に環境に自己を併せるという受身的な状態だけでなく、周囲へ積極的にはたらきかけて好ましい状態を生み出していくことも意味しています。
適応機制(防衛機制)
適応機制(防衛機制)とは、欲求不満や不快な緊張感・不安から自分を守り、心理的満足を得ようとする無意識なこころのはたらきのことです。

適応機制に関連した問題は介護福祉士国家試験では頻出で、次のような感じで出題されています。ちなみに答えは3です。
介護老人保健施設に入所しているGさん(78歳、女性)は上品で化粧も上手で、入所している人から関心を持たれていた。訓練の際にも入所者から励まされ、どうにか伝い歩きができるようになっていた。そこへ車いすのHさん(75歳、女性)が新しく入所してきた。Hさんは裕福な家庭で、家族の来訪の際には入所者へプレゼントもあり、入所者の関心はHさんに移ってしまった。するとGさんは伝い歩きをしなくなり、失禁までするようになった。
Gさんの適応機制(防衛機制)として、最も適切なものを1つ選びなさい。1.逃避
出典 第24回介護福祉士国家試験
2.同一化(同一視)
3.退行
4.昇華
5.抑圧

適応機制の種類と具体例を紹介していきます。
抑圧
容認しがたい欲求や感情を意識の表面に現れないように抑えつけ、意識にのぼらせないようにする。
(例)いじめられた記憶を忘れようとする。
合理化
自分に都合のよい理屈づけ・いいわけをすることで、自分の失敗や欠点を正当化する。
(例)値段が高くて買えないBluetoothイヤホンに対して、「失くしそうだからいらない」と言う。
同一視
満たせない願望を実現している他所と自分とを同一化することにより、あたかも自分自身のことのように代理的に満足する。
(例)youtubeですごく上手いピアノの動画をみながら、自分が弾いているような想像をする。

よくやってます^^;
置換
ある対象に向けられた欲求・感情を、ほかの対象に向けて表現する。
(例)自立した子供の母親が、代わりに犬を可愛がる
投射(投影)
自分の容認しがたい欲求や感情を他者の中にあると考えて、それを指摘・非難する。
(例)あいつは俺のことが嫌いだ→実は自分が嫌っているだけ
補償
ある一面での劣等感情を、他の面での優越感情で補おうとする。
(例)勉強が不得手なので、スポーツでがんばる。
代償
本来の目的が得られないとき、獲得しやすい代わりのものに欲求を移して我慢する。
(例)海に行けないので、プールに行った。
昇華
社会的に承認されない欲求や衝動を、社会的に認められる形で満たそうとする置換の一形態
(例)上司への不満をバネに、自分のスキルを磨く
反動形成
知られたくない欲求・感情と正反対の行動をとることによって、本当の自分を隠そうとする。
(例)好きな人にいじわるをしてしまう。
逃避
不安、緊張、葛藤などから(白昼夢・空想など)に逃げ出してしまうことによって、自己の安定を求める
(例)試験期間中に部屋の片づけをする
退行
解決困難な状況において、未発達な段階に逆戻りし、甘えるなどの未熟な行動をとる。
(例)弟が生まれた途端、赤ちゃん返りする
記憶のしくみと知能
記憶における最初の段階は、見たもの、聞いたものなど知覚したイメージが感覚器に入ってくる刺激情報で、感覚記憶と呼ばれます。刺激情報は1秒以内に脳の中に取り込まれ、言葉、数字、図形などに符号化され、脳の奥深くにある海馬という部位で一時的に保管されますが、そのほとんどは消え去ります。【短期記憶】
そして、何度も思い浮かべたり口に出したりする情報は、大脳皮質へ送られ、長期記憶となります。
また、海馬は留め置いた情報に重要度をつけるという役割ももっています。海馬に「重要」と判断されると、長期記憶として残りやすくなります。
出典 エーザイ 物忘れ教室

海馬という名称は、海中生物の「海馬(タツノオトシゴ)」に形が似ていることから名づけられたそうです。
記憶の過程
記憶の過程は、記銘、保持、想起の三段階に分けることが出来ます。
- 記銘
外部の刺激がもつ情報を意味に変換して記憶として取り込むこと - 保持
記銘したものを保存しておくこと - 想起
保存されていた記憶を取り出し、外に表すこと
(参考)
心理学領域では上記のように、感覚記憶、短期記憶、長期記憶と分類されますが、一方、臨床神経学領域では即時記憶、近時記憶、遠隔記憶と分類されます。

ここまで細かく覚える必要はありません。参考までに。
感覚記憶
高齢になると視力や聴力などの感覚機能が低下して、感覚器からの情報が減少し、感覚記憶が低下する可能性があります。ただし、感覚機能の低下には個人差があるため、一概に加齢の影響を強く受けるとは言えません。
短期記憶と作業記憶(ワーキングメモリー)
4629882といった数字を単に覚えるのは短期記憶です。
37+36-15=○○のような計算では【37+36=73】を頭の中で保持し、73から15を引くという処理も加わります。これを作業記憶(ワーキングメモリ)と呼びます。
- 短期記憶⇒加齢の影響をほとんど受けません。
- 作業記憶⇒加齢の影響が顕著にみられます。
長期記憶
長期記憶は、陳述記憶(言葉で説明できる記憶)と非陳述記憶(言葉で説明できない記憶)に分けられ、さらに
陳述記憶
- エピソード記憶
- 意味記憶
非陳述記憶
- 手続き記憶
- プライミング記憶
に分けられます。

ひとつずつ特徴や例を説明していきます。
エピソード記憶
自分にまつわる思い出です。言語的記憶と非言語的記憶があります。
通っていた小学校の先生やクラスメートの名前。もしくは、友だちの間で流行っていたクイズなど。それらの思い出のうち、言葉で言い表せるものが言語的記憶であり、言い表せないものが非言語的記憶です。

例えば、夏休みに家族で旅行した海の色や波の音の思い出は、言葉ではなく、映像やメロディーで刻まれた記憶であり、非言語的記憶です。
意味記憶
一般的な知識についての記憶や反復学習によって覚えた記憶です。反復学習によって覚えた記憶のうち、言葉で言い表せるものが言語的記憶で、言い表せないものが非言語的記憶です。
教科書を繰り返し読む、あるいは練習問題を解いて覚えた英単語や数学の公式は、言語的記憶に含まれます。一方、絵画や図形、音楽などに関する知識は非言語的記憶に含まれます。

ホテルを訪れました。ホールには音楽が流れています。メロディを少し聴いただけで、(これは『ボヘミアンラプソディー』だな)と気づいたとします。これが非言語的記憶です。
手続き記憶
やり方、技能など、体で覚えた記憶です。例えば自転車の乗り方などです。
プライミング記憶
一度見聞きしたことが、その後の経験に無意識に影響する記憶です。
日常の何気ない動作・行動、思い込み等です。
”にんじん、こまつな、ほうれそんう、キャベツ”

↑のほうれそんうをほうれんそうと誤って読んでしまうような、すでにある記憶があとの事柄に影響を与える現象です。
長期記憶のうち、
加齢の影響を受けにくいものは、
- 意味記憶
- 手続き記憶
- プライミング記憶
で、加齢によって影響を受けるものは、
- エピソード記憶
です。

エピソード記憶に関して少し補足しておきます。
青春時代の思い出のような、過去に体験した古いエピソードは記憶に残りやすいですが、生活の中で生じる出来事や体験などの新しいエピソードには加齢の影響が顕著にみられます。
知能
流動性知能と結晶性知能
知能の加齢変化として、新しいことを学習したり、新しい環境に適応したりする流動性知能には低下が認められますが、経験と強く関係する結晶性知能は高齢期でも比較的遅くまで維持されます。
ウェクスラー式成人知能検査・第3版(WAIS-Ⅲ)
高齢者の知能検査に最もよく使われます。WAIS‐Ⅲの対象年齢は16歳から89歳までで、会話で行われる言語性検査(一般常識や語彙力、計算力などで測定)によって結晶性知能(結晶性IQ)が測定されます。
道具を使う動作性検査(図形処理の構成能力、数唱、符号を書き写す作業などで測定)によって流動性知能(流動性IQ)が測定されます。
そして、全体としての知能(全検査IQ)が知能偏差値として測定されます。
加齢以外にも、高齢者の知的能力に影響を及ぼす要因は、身体的要因、心因的要因、社会的文化的要因などがあります。加齢者自体による変化とそうでないものは区別して考えなければなりません。
からだのしくみの理解
ホメオスタシス(恒常性)
生体内の諸器官は、気温や湿度など外部環境の変化や体位、運動などの身体的変化に応じて、
- 病原微生物の排除
- 創傷の修復
- 体温
- 血圧
- 血液量や血液成分
などの内部環境を、生存に適した一定範囲内に保持しようとする性質があり、内分泌系と自立神経系による調節がそれを可能にしています。この性質をホメオスタシスといいます。ホメオスタシスを主に司っているのは、脳の視床下部と考えられています。
自立神経
自律神経は交感神経と副交感神経とに大別されます。
- 交感神経
からだを活動・緊張・攻撃などの方向に向かわせる神経。手に汗を握ったような時に、よりはたらく。 - 副交感神経
内臓のはたらきを高め、からだを休ませる方向に向かわせる神経。
2つは、同一の器官に平行的に分布していますが、作用はほとんど正反対です。内臓・血管・腺などの不随意性器官(意識して動かすことのできない器官)に分布して、無意識かつ反射的に、生命維持に必要な多くの作用を調節します。主として、平滑筋・心筋のような不随意筋および線分泌をコントロールします。
自律神経の主な機能と体の反応
交感神経が働くと | 副交感神経が働くと | |
---|---|---|
瞳孔 | 散大(光が多く入るように) | 縮小する |
涙腺 | 涙の分泌が減る | 涙の分泌が増える |
唾液腺 | 唾液の分泌が減る | 唾液の分泌が増える |
胃腸の分泌腺 | 胃液や腸液の分泌が減る | 胃液や腸液の分泌が増える |
胃腸の蠕動運動 | 抑制される | 促進される |
気管の平滑筋 | 弛緩し、気管内径が広がる | 収縮し、気管内径が狭くなる |
心拍数 | 増加する | 減少する |
血圧 | 上昇する | 低下する |
汗腺 | 汗の量が増加する | ー |
立毛筋 | 収縮し、鳥肌が立つ | ー |
膀胱 | 弛緩する(尿を貯める) | 収縮する(排尿を促進) |
内肛門括約筋 | 収縮する(蓄便) | 弛緩する(排便) |
直腸 | 弛緩する(蓄便) | 収縮する(排便) |
脳神経 | 興奮 | 鎮静 |
神経伝達物質 | アドレナリン、ノルアドレナリン | アセチルコリン |
内分泌系
内分泌系とは、からだのさまざまな機能を調整しているホルモンを分泌するシステムです。例えば、ストレス環境では、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されて免疫系に影響を及ぼすこととなり、抵抗力が弱まって、病気になりやすくなります。
ホルモンによる血糖値の調節

インスリンという名前はよく聞くのですが、どのような働きをするのですか?
インスリンは血液の中の糖をエネルギーに変えて血糖値を下げる唯一のホルモンで、膵臓のランゲルハンス島という器官のB細胞から分泌されます。
変換されたエネルギーは肝臓でグリコーゲンという多糖類に変えて貯蔵されます。
食事による血糖値の上昇は、間脳の視床下部でも感知しており副交感神経が刺激され、その刺激が膵臓のランゲルハンス島の B 細胞に伝わることでもインスリンを分泌させます。こうしたしくみにより、食事によって一時的に上昇した血糖値は、再び安定します。

逆に血糖値が下がりすぎているときはどうなるのですか?
血糖値が低下すると膵臓のランゲルハンス島の A 細胞が感知し、グルカゴンというホルモンが血液中に分泌されます。
グルカゴンは肝臓に貯蔵されているグリコーゲンをグルコースに分解させ、血糖値を上昇させます。
血糖の低下は、視床下部でも感知しており、交感神経が刺激され、その刺激が膵臓のランゲルハンス島の A 細胞に伝わることでもグルカゴンを分泌させます。
人体部位の名称と役割
人体は、下のように大別されます。
- 頭頚部
- 体幹
いわゆる胴体の部分で、胸部、腹部、背部、臀部からなり、内臓を容れています。 - 体肢
腕を上肢、脚を下肢と区別して呼びます。上肢下肢を合わせて四肢といいます。
人の神経系
抹消からの刺激を受け、これに対して興奮を起こす中心部を中枢神経系といい、脳と脊髄からなります。刺激や興奮を伝導する部分を末梢神経系といい、体性神経と自立神経からなります。体性神経は、運動神経と感覚神経に区分されます。

脳
脳は、左・右大脳半球からなる大脳と間脳・中脳・橋・延髄・小脳に区分され、中脳・橋・延髄を脳幹といいます。成人の脳の平均重量は約1300gで、髄膜や髄液で保護されています。
出典 https://www.ac-illust.com/

脳の各部位の働きを以下で簡単に説明しておきます。
大脳
大脳は、大脳半球という左右2つの部位に分かれています。いわゆる右脳と左脳というものにあたります。両者は完全に分離しているわけではなく、脳梁という神経線維の束によって接続されており、相互に情報のやり取りをしています。
それぞれの大脳半球は、大脳皮質が表面を覆っています。大脳皮質は1~3㎜程の薄いシート状の組織で、その中に100億個以上もの神経細胞が含まれています。大脳皮質の役割は、ものを知覚したり、運動を制御したり、計算、推理などで知性を司る器官といえます。
大脳皮質は場所によって処理するものが違います。これを脳の機能局在といいます。機能などによって下図のように大きく4つの領域(前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉)に分けられています。
~脳の機能局在~
- 前頭葉
一次運動野:手足・顔・体幹の運動を司る
ブローカ中枢(運動性言語中枢):言葉を作りアウトプットする - 頭頂葉
一次体性感覚野:身体の感覚、温痛感、触覚の中枢
味覚野:味覚の情報を受け取る - 側頭葉
聴覚野:聴覚情報を受け取る
ウェルニッケ中枢(感覚性言語中枢):音声言語を理解、認識する - 後頭葉
視覚野:視覚情報を受け取る

ブローカ中枢が障害を受けると、ブローカ失語となり、言葉は理解できるが、なめらかに話せなくなります。
ウェルニッケ中枢が障害を受けると、ウェルニッケ失語となり、言葉が理解できなくなります。なめらかに話せますが、内容は支離滅裂となります。
間脳
- 視床・視床下部・脳下垂体・松果体からなる。
- 視床下部についている脳下垂体は、自立神経およびホルモン分泌の中枢である。
脳幹
- 中脳・橋・延髄からなる。
- 生命維持に重要な機能を担っている。
- 特に延髄は、呼吸運動や唾液分泌、血管運動などに関する中枢である。
- ウォーキングデッドのウォーカーは脳幹のみで活動している(らしい)。
小脳
- 随意運動を円滑にできるように調節している。
- 平衡感覚や視覚とも連絡している。
骨
骨は、骨膜につつまれ、
- 骨髄
造血器官として、赤血球・白血球・血小板をつくっている。 - 骨質
カルシウムが多く含まれ、寝たきりになるとカルシウムが血液中に放出される。
に区別できます。
全身の約200個の骨は互いに結合して、骨格を形成しています。骨と骨の結合で動くものを関節といい、関節を挟んで筋肉が付着しています。筋肉は収縮する性質があります。関節をまたぐ筋を骨格筋といいます。骨格筋は、骨の表と裏にあり、各々が相反(拮抗)するはたらきを持っています。
骨の生理的作用
- 支持作用
頭や内臓を支え、からだの支柱となる。 - 保護作用
いくつかの骨が集まり、骨格を形成し、頭蓋腔・胸腔・脊柱管・骨盤腔などの腔をつくり、脳や内臓などの重要な器官を収め保護する。
※腔:肉体の内部の中空になっている部分 - 運動作用
付着している筋の収縮により、可動性のある関節を支点として運動を行う。 - 造血作用
骨内の骨髄で赤血球・白血球・血小板を絶えず新生する。 - 電解質の貯蔵作用
カルシウム・リン・カリウム・ナトリウムなどの電解質が骨中に蓄えられ、必要に応じて骨から引き出して血流により送り出す。
骨粗鬆症
骨は通常、破壊と再生のバランスがとれているため、骨の量は変化しませんが、加齢に伴ってホルモンバランスが崩れ、骨の破壊が亢進したり、骨の再生が抑制されると、結果的に骨量が減少して、骨粗鬆症になります。
骨粗鬆症は骨量(骨密度)が減少し、骨の構造も破綻して脆くなり、骨折の危険が高まった状態と定義されています。
主な関節と拮抗筋のはたらき

筋肉の名称を細かく覚える必要はありません。関節を動かす時に、収縮するメインの筋肉を覚えておく程度で十分です。

介護福祉士国家試験での出題例をひとつあげておきます。ちなみに正解は5です。
関節の運動と筋の収縮に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1.膝関節の伸展は、大腿二頭筋の収縮によって起こる。
出典 第25回介護福祉士国家試験
2.股関節の伸展は、大腿四頭筋の収縮によって起こる。
3.足関節の背屈は、下腿三頭筋の収縮によって起こる。
4.手関節の背屈は、上腕二頭筋の収縮によって起こる。
5.肘関節の伸展は、上腕三頭筋の収縮によって起こる。
手関節
出典 http://therapistcircle.jp/syakusokusyukonkukkin/
- 背屈(伸展)
橈側手根伸筋、尺側手根伸筋がともに収縮 - 掌屈(屈曲)
橈側手根屈筋、尺側手根屈筋がともに収縮
肘関節
出典 https://www.bikebros.co.jp/vb/sports/stame/scolumn05/scolumn05-20151102/
- 伸展
上腕三頭筋が収縮する。 - 屈曲
上腕二頭筋が収縮する。
肩関節
出典 http://www.golf-fine.com/news/10762.html
- 外転
三角筋など - 内転
大胸筋、広背筋など
股関節
出典 http://kikoukairo.com/archives/2551
- 伸展
大殿筋が収縮する。 - 屈曲
腸腰筋が収縮する。
膝関節
出典 コトバンク
- 伸展
大腿四頭筋が収縮する。 - 屈曲
大腿二頭筋が収縮する。
足関節
出典 http://hearts-bridge-jp.com/2019/07/15/anterior-tibialis2/
- 背屈(伸展)
前脛骨筋が収縮する。 - 底屈(屈曲)
下腿三頭筋が収縮する。
感覚器
感覚器には、顔面にある目・耳・鼻・舌・皮膚に代表される視覚器、平衡聴覚器、嗅覚器、味覚器、外皮があります。
視覚器
出典 看護Roo!
視覚器は、眼球と副眼器からなります。
眼球の主な部位のはたらきとしては、水晶体が焦点を調節する、網膜が光をとらえ視神経に伝える、などがあります。眼球は、視神経によって脳につながっています。
副眼器は、眼球を保護し、そのはたらきを助けるものです。主な部位としては、眼瞼、結膜、目筋、涙器などがあります。
平衡聴覚器
からだの平衡感覚と聴覚を司る器官で、外耳・中耳・内耳からなります。
出典 看護Roo!
耳で音の伝わるしくみは、
- 外耳で音を集めて中耳に伝える。
- 中耳(鼓膜・鼓室)で音を振動に変えて内耳に伝える。
- 内耳(蝸牛)で音の振動を電気信号に変えて脳に伝える。
というものです。
耳の音を伝える以外の役割としては、中耳(耳管)で気圧の調節をする、内耳(前庭・半規管)で平衡感覚を司る、といったものがあります。
味覚器
味覚器は、舌にある味蕾(みらい)が味覚の受容器で、味細胞の集まりです。味の種類は多様ですが、甘み・苦味・酸味・塩味・旨味の5つが基本の味です。
呼吸器
呼吸器系とは、外呼吸を行うための器官系をいい、鼻腔から気管支までの空気の出入りと発声に関与する気道(鼻腔・咽頭・喉頭・気管・気管支)と、空気と血液との間のガス交換の場である肺のことをいいます。
出典 https://institute.yakult.co.jp/dictionary/word_3162.php
呼吸
代謝に必要な酸素を人体各器官の細胞に供給し、細胞から代謝の際に生じた二酸化炭素を除去することであり、
- 外呼吸
肺胞内の空気と血液との間のガス交換のこと - 内呼吸
血液と組織細胞間のガス交換のこと
の2つがあります。
肺
肺は、左右両葉からなり、右葉は3葉、左葉は2葉からなります(左には心臓があるから)。その中を細気管支が枝に分かれ、さらに分岐し肺胞となります。ガス交換は、この肺胞で行われます。
呼吸運動は、無意識に反射的な規則正しいリズムで行われます。その自動調節の機構は、脳幹にある呼吸中枢のはたらきによるものです。
血液中に取り込まれた酸素は、赤血球内の血色素(ヘモグロビン)に結合して、各所に運ばれます。組織におけるガス交換は、動脈血が組織細胞に酸素を渡し、代わりに二酸化炭素を受け取ること(内呼吸)によって行われます。
出典 https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0041/G0000202/0003
消化器系
消化器系とは、食物を摂取し、それを腸管から吸収できる程度まで分解し、吸収して血液に送り、食物残渣の排泄を司る器官の集まりです。消化器系は、消化管(口腔・咽頭・食道・胃・小腸・大腸・肛門)と消化腺(唾液腺・胃液線・肝臓・胆嚢・膵臓・腸腺)からなります。
口腔内に取り込まれた食物は、
- 上下の歯間で下顎の運動によって細かくかみ砕かれ(咀嚼)
- 唾液と混ぜ合わされて、飲み込みやすい形(食塊)にして
- 飲み下され(嚥下)
- 咽頭、食道を通過し、胃へと達します。
- 胃での食物の消化は、胃の蠕動運動と胃液の分泌により行われます。
蠕動運動とは、消化管などの管状の臓器が内容物を波状に送る基本的な運動形式である。蠕動運動は、副交感神経によって促進され、交感神経によって抑制されます。胃の内容物は通常、食後3~6時間で十二指腸に送られます。
小腸
小腸は、十二指腸・空腸・回腸に区分されます。胃から送られてきた食物は、小腸の壁を形成する平滑筋の運動により、胆汁・膵液や腸液などの消化液と混和され、移送されます。その間に、消化液による化学的消化が行われます。
出典 https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada014.html
大腸
大腸は、小腸に続く消化管の終末部で、全長が約1.5mあります。大腸は、盲腸・結腸・直腸に区分され、小腸で吸収された残りのものから水分を吸収し、糞便を形成し排泄します。
出典 http://www.sendai.jrc.or.jp/specialty/specialty09-7.html
唾液と唾液腺
唾液は、食物を口にしたとき以外にも、食物を見たり、連想したり、においを嗅いだりすることで分泌されます。特に分泌が多くなるのは、食物を口にした時です。唾液が分泌されることで、食物の飲み込みを補助します。
唾液腺は組織の大きさから大唾液腺と小唾液腺とに分けられ、大唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺が含まれます。小唾液腺は口腔全体にわたって分布しており、粘膜や筋組織内に米粒あるいはアズキ粒ぐらいの大きさの腺組織の集合体として存在し、それぞれ独立した管によって口腔内に開いています。
出典 https://www.hibmc.shingu.hyogo.jp/past/kounai_torabl/investigation_1_3.html
唾液分泌は、歯やからだの健康を保つために、
- 食物残渣を洗い流す自浄作用
- 消化作用
- 緩衝作用
- 潤滑作用
- 薬物排泄作用
- 抗菌作用
などの重要な働きをしています。
唾液は唾液腺から分泌されるもので、99%以上が水分で、1日に1~1.5ℓほどを分泌するとされています。そのなかには、消化酵素や少量のホルモンも分泌されています。
唾液分泌は、唾液腺の種類や、自律神経の働きによって異なります。交感神経が刺激された場合の唾液は粘りが強く、副交感神経が刺激された場合の唾液はサラサラして粘りが弱く、量も多く分泌されます。
胃液
胃液は、塩酸およびペプシンなどの消化酵素からなります。胃液は副交感神経である迷走神経が刺激されると分泌が亢進します。また、ホルモンによる調節があります。
肝臓の主なはたらき
- 物質の代謝
ブドウ糖からグリコーゲンをつくって肝臓内に蓄え、必要なときに再びブドウ糖に分解して血液中に送り出す。また、たんぱく質のアルブミン(※)をつくり、血液中に送り出す。
※アルブミン:単純たんぱく質で水によく溶けるものの総称
※代謝:生命維持活動に必須なエネルギーの獲得や,成長に必要な有機材料を合成するために生体内で起るすべての生化学反応の総称 - 解毒
肝臓は私たちが摂取した物質(アルコールや薬剤など)や代謝の際に生じた体に有害な物質を、毒性の低い物質に変え、尿や胆汁中に排泄するという解毒作用を持っています。 必要以上にアルコールや薬物を摂取すると肝臓の解毒作用が追い付かず、肝臓に大きな負担をかけてしまいます。 - 胆汁の分泌
胆汁は、食物が刺激になって分泌される。胆汁が十二指腸に排出されないと、血液中に吸収され、黄疸になり、便は白色となる。黄色の便は、胆汁に含まれるビリルビンの色である。胆汁は、肝臓の下面についている胆嚢に蓄えられている。
泌尿器
泌尿器は、尿を生成する腎臓と、体外に排泄する尿路(尿管・膀胱・尿道)からなります。
腎臓は、からだの背部に位置する左右一対の臓器です。
膀胱は、尿管によって送られてきた尿を蓄えるおよそ500mlの容量をもつ筋性の器官です。男性は直腸が、女性は子宮と膣が膀胱に密接しています。
尿道は、膀胱内の尿を体外に排出する管で、男女で長さが異なります。男性の場合は尿道が約20cmと長いが、女性は尿道が4~5㎝と短く、尿道に入り込んだ細菌が膀胱に到達しやすい構造になっています。そのため、膀胱炎は男性よりも女性に多くみられます。
内分泌器官とホルモン
ホルモンは、特定の臓器において微量に生産される特殊な化学物質で、目的とする組織または器官のはたらきの調節に関与します。ホルモンを分泌する器官を、内分泌腺または内分泌器官といいます。
ホルモンは血液中に分泌され、血液循環を介して、そのホルモンの作用の対象となる器官や組織である標的器官、標的細胞に到達します。内分泌腺には、
- 下垂体
- 甲状腺
- 上皮小体(副甲状腺)
- 膵臓
- 副腎
- 性腺
- 松果体
などがあります。(下図参照)
出典 看護Roo!
■松果体は、間脳の後上方にある6~7㎜、重さ0.2~0.2gの小体で、赤灰白色です。松果体細胞と神経膠細胞からなり、メラトニンを分泌します。メラトニンは、睡眠の促進に関与します。
■膵臓のランゲルハンス島からは、α(A)細胞から血糖上昇作用のあるグルカゴン、β(B)細胞からは、血糖低下作用のあるインスリンが分泌されます。
循環器
心臓
心臓は、上部の心房と下部の心室に分けられ、それぞれは心房中隔、心室中隔によって左右にわけられ、2心房、2心室からなります。(下図)
出典 http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph69.html
循環器は、心臓と、血管およびリンパ管で構成されています。心臓から出ていく血管を動脈、心臓に入る血管を静脈といいます。
末梢の静脈には血液の逆流を予防するための弁があります。一方動脈は、心臓から全身に向けて流れる血流で圧力が高く、基本的に逆流しないので弁はありません。
看護Roo!
体循環と肺循環
出典 看護Roo!
二酸化炭素を多く含んだ静脈血は、
- 上大静脈・下大静脈
- 右心房
- 三尖弁
- 右心室
- 肺動脈
の順で流れます。そして、肺でガス交換が行われて、静脈血は酸素を多く含んだ動脈血となります。
酸素を多く含んだ動脈血は、
- 肺静脈
- 左心房
- 僧帽弁
- 左心室
- 大動脈
の順で流れます。体の抹消で細胞に酸素を供給して二酸化炭素を受け取り、動脈血は二酸化炭素を多く含んだ静脈血となります。
心臓(右心室)から肺へ送り出す肺動脈よりも、心臓(左心室)から全身へ血液を送り出す大動脈のほうが、血圧が高い。そのため、右心室よりも左心室のほうが心筋層が厚く、収縮力が大きい。
肺でガス交換するための、右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心室の流れ
からだの抹消に酸素を供給するための、左心室→大動脈→からだの抹消→上大静脈・下大静脈→右心房の流れ

肺動脈(肺に向かっている血管)には静脈血が流れています。
また、肺静脈(肺から出ていく血管)には動脈血が流れています。
■血圧
血圧とは、血管中を流れる血液の圧力であり、心臓が収縮したときが最高血圧(収縮期血圧)、弛緩したときが最低血圧(拡張期血圧)です。血圧の値は、心臓から拍動される血液量と、末梢血管の抵抗によって変動します。心臓が収縮すると、全身に血液が送られて、血圧は高くなります。 心臓が拡張すると、全身から血液が戻ってきて、血圧は低くなります。また、 動脈硬化があると、血圧は高くなります。
血液
血液は、体重の7~8%を占めています。動脈血の色は鮮紅色で、静脈血は暗赤色です。血液には下のような運搬作用があります。
- 肺と組織細胞の間で、酸素・二酸化炭素などを運搬する。
- 腸壁から肝臓・全身各部へ、栄養素を運搬する。
- 内分泌腺から標的器官へ、ホルモンを運搬する。
- 腎臓へ、尿素・老廃物・余分な水分などを運搬する。
血液の成分は、血球(45%)と血漿(55%)に大きく分類されます。血球は細胞成分で、赤血球・白血球・血小板のとことをいい、骨髄でつくられます。血漿には、各種電解質・たんぱく質・ブドウ糖・脂質などが含まれています。
赤血球
赤血球は、酸素や二酸化炭素を運搬する血色素(ヘモグロビン)を有します。血液の鮮紅色は、ヘモグロビンの色です。また、ヘモグロビンは、一酸化炭素との結合力が強い。ヘモグロビンの濃度が正常値以下に低下している状態を貧血といいます。
白血球
白血球には、顆粒球、リンパ球、単球があります。白血球には食作用があり、細菌感染があると増加します。白血球は、各人と状態によって異なりますが、一般的には血液1m㎥中に4000~9000個あります。
血小板
血液1m㎥中に20~50万個あり、血液凝固に関与します。
リンパ
リンパとは、血管のように全身に張りめぐらされたリンパ管と、その中を流れているリンパ液、リンパ管の中継地点であるリンパ節の総称です。
体内を流れる液体の代表的なものといえば血液ですが、リンパ液も体液のひとつです。まず、血管を流れる血液の大部分は、心臓から排出され、全身を巡って心臓に戻ります。大部分と記したのは、そのすべてが心臓に戻るのではなく、体内にある細胞の隅々に酸素と栄養を届けるために、一部は動脈側の血管から流出するからです。
そして、血管に戻れなかった水分はリンパ液となり、リンパ管を通って静脈に戻ります。前者の血液と心臓の流れを「循環器系」と呼ぶのに対し、後者の流れを「リンパ系」と呼びます。
移動に関連したこころとからだのしくみ|機能の低下、障害が及ぼす影響
転倒
高齢者は、筋力の低下や平衡能の低下などにより、バランスを崩しやすくなり、転倒のリスクが高くなります。
高齢者では骨密度が低下する傾向にあるため、転倒による骨折のリスクが高い。転倒により、橈骨遠位端(手首)・上腕骨近位端(肩)・大腿骨頸部(股関節)・脊椎(背骨)が骨折しやすい。
腎機能障害
腎機能障害などの疾患では、倦怠感や疲労感から移動することを控え臥床しがちになります。尿失禁や尿漏れは外出を控えるきっかけになり、夜間頻尿では覚醒の低い状態での移動となるため、転倒のリスクを高めたり、日中の覚醒低下から移動意欲を低下させます。
疾患に伴う特徴的な歩行
疾患 | 歩行の特徴 |
---|---|
パーキンソン病 | 小刻み歩行、突進現象、すくみ足 |
脊髄小脳変性症 | 失調性歩行 |
脊柱管狭窄症 | 間欠性跛行 |
進行性筋ジストロフィー | 動揺性歩行(体を左右に振りながらの歩行) |
下肢切断
下肢切断のうち、特に両側切断者では、座位での支持基底面が狭く、車いす利用時に前方に転倒しやすいので、胸ベルトを使用する。また、後方に重心があるので、車いすごと後方に転倒しやすくなる。
身体を作る栄養素
人間に必要不可欠な栄養素には、
- 糖質(炭水化物)
- たんぱく質(アミノ酸)
- 脂質
- 無機質(ミネラル)
- ビタミン
の5つがあり、これを五大栄養素といいます。
五大栄養素のうち、エネルギー源となる
- 糖質(炭水化物)
- たんぱく質(アミノ酸)
- 脂質
を三大栄養素といいます。
栄養素の主なはたらきは、下の表のとおりである。

炭水化物
炭水化物は、糖質と食物繊維を含んだものです。食物繊維は、人の消化酵素では消化されない難消化性多糖類に属し、エネルギー源にはなりません。しかし、整腸作用・腸内有害物質吸収などのはたらきがあり、大腸がん、糖尿病、高血圧症などの生活習慣病の予防因子となります。
脂質
脂質は、細胞膜・血液・ホルモン等の原料となります。脂溶性ビタミンの吸収を助けるはたらきを持ちます。また、エネルギー発生量は脂質が最も多い。
たんぱく質
たんぱく質は皮膚・筋肉・ホルモン・臓器など生体組織の主要成分となります。たんぱく質が不足することで、免疫力が低下します。
約20種類のアミノ酸から構成されています。アミノ酸の多くは必要なときに体内で合成されますが、体内で十分な量を合成されない9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といい、これは必ず食事から摂取しなければなりません。
ビタミン
ビタミンは脂溶性と水溶性があります。脂溶性ビタミンは油脂と一緒に摂取すると吸収が促進されますが、余剰は体内に蓄積されるので、多量に摂ると過剰障害が出ます。水溶性ビタミンは体内に蓄積されず、多い分は尿中へ排出されるので、毎日摂取する必要があります。
各ビタミンの主なはたらき


※夜盲症:健常者と比べて暗いところでの物の見え方が悪い状態
酵素
食べたものが消化・吸収され、体を作ったり調子を整えたりする時、体の中ではさまざまな物質が分解・合成されています。こうした化学反応をスムーズに進めるための触媒となるタンパク質が酵素です。
酵素には多くの種類があり、体のさまざまな器官に存在し、それぞれの働きをしています。
具体例をあげると
- アミラーゼ
唾液に含まれていてでんぷんを分解する - ペプシン
胃液に含まれていてタンパク質を分解する - リパーゼ
すい臓にあり脂肪を分解します。
酵素の性質
ほとんどの酵素の主要な構成要素はタンパク質です。そのため、他のタンパク質と同じように加熱により構造が変化して、酵素の機能を失ってしまいます。もう一つの大きな特徴は、特定の条件の下でしか、働かないことです。
それぞれの酵素には最もよく働く温度やpHが決まっています。例えば、胃の中は胃酸により強い酸性であるため、胃で働くペプシン(タンパク質を分解する酵素)は、pH2という非常に低いpHの条件下で最も活性が高くなり、中性付近ではほとんど働きません。

pHは7で中性。それより低ければ酸性、高ければアルカリ性です
食べることに関連したこころとからだのしくみ
食欲、のどの渇きを感じるしくみ
視床下部は、摂食機能に関与します。つまり、空腹感、満腹感は、この部位のはたらきにより生じます。食欲調節には、血糖値(血中のブドウ糖)などが関与しています。
- 血糖値が下がる
⇒視床下部の摂食中枢が反応し、空腹を感じる。 - 血糖値が上がる
⇒視床下部の満腹中枢が反応し、食欲がなくなる。
また、視床下部には、口渇中枢が存在しており、発汗や呼吸によって水分量が減り、体液の浸透圧が高くなると、口の渇きを感じます。
食べるしくみ
食事にかかわる器官で外見からわかる部分には、口唇、甲状軟骨(喉仏)などがありますが、多くの器官は内部に位置しています。気管の入り口にあって嚥下をする際に誤嚥しないようなふたの役割をする軟骨が喉頭蓋(こうとうがい)です。
食事の動作には、先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期といった段階があり、これを摂食・嚥下の5分類といいます。以下で詳しくみていきます。
出典 https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/swallow_disorder/
- 先行期(認知期)
口に入れるまでの段階で、何をどのように食べるか、視覚、聴覚、触覚などにより食べ物を認知し、判断する時期です。食物の味や硬さなどを想像し、条件反射的に、唾液が分泌されます。 - 準備期(咀嚼期)
食塊を整える時期です。捕食、咀嚼、食塊形成の3段階があります。唾液は咀嚼により固形の食物と混ざります。 - 口腔期
食塊が形成され食事の準備ができ、食塊を口腔から咽頭へ移送する時期です。移送は主に舌で行われます。また、舌は食塊を形成する働きもあります。 - 咽頭期
食塊が咽頭を通過する時期です。咽頭期では物を飲み込む時の「ごっくん」という反射が起こります。意識的に反射を起こすことも可能ですが、トリガーに食物が達すると自然に嚥下反射が起こります。
反射が起こる時は、軟口蓋が上がって咽頭と鼻腔の間をふさぎ、食物が鼻腔に入らないようにします。また、喉頭が前上方へ移動し、喉頭蓋は気管へ蓋をするような形で倒れ、喉頭の後方にある食道入口部が開き、そこへ食塊が押し込まれます。
この時は一時的に呼吸が停止しています(嚥下性無呼吸)。 - 食道期
食道期では、食物を食道の蠕動運動によって胃へと送ります。自分でコントロールすることはできません。
機能の低下・障害が及ぼす食事への影響

まずは、摂食・嚥下の5段階における影響を一つずつ説明していきます。
先行期(認知期)に問題が生じた場合
- 食物を食物と認識できず食動作が始まらない。
- 疾病により嗅覚が障害されて食欲と結びつかない。
- 自分の適切な食事のペースが解らずどんどん口に詰め込んでしまう。
等の様子が見られます。
- 食事に集中できる環境を整える。
- 声かけなどで食事に意識を向けたりする。
- スプーンを小さくしたり、皿に小分けにするなどの工夫を行う。
- 長く口腔内にため込む場合は、目の前に次の一口をスタンバイさせると、食事がスムーズに進むこともある。
- 食器具を変えたり環境を変えたりすることが効果的なこともある。
準備期(咀嚼期)に問題が生じた場合
- 食物を咀嚼したり押しつぶしたりできず、食事に時間がかかったり、食物をそのまま丸呑みしたりする。
- その次のステップである口腔期が不良であると、咀嚼されていない食物がそのまま咽頭や喉頭に落下したり、十分咀嚼できていない食物で窒息事故を起こしたりすることもある。
- 咀嚼運動に問題がなくても、残存歯数が少なく義歯などが装着されていなければ準備期に問題が生じる可能性がある。
等の様子が見られます。
- 適応できるのであれば義歯を装着する。
- 実際に普段食べている食品の摂取状況を観察し、口腔機能を適切に評価して適切な食事形態に調整する。
口腔期に問題が生じた場合
- 口腔機能と摂取している食事形態が一致せず、食物を上手く咽頭に送り込めず食事に時間がかかる。
- 口腔内に食物が多量に残留する。
- 食物の舌によるコントロールができず咽頭に落下してしまい窒息につながることがある。
- 一見口がもぐもぐと動いているように見えても、顎が上下に動く不随意運動(オーラルジスキネジア)の場合がある。
等の様子が見られます。
- 口腔期が不良でも、咽頭期が良好な方はいるので、その場合は咽頭期になるべくアプローチしやすい食形態にする。
- 食事介助を奥舌にする。
- 介助具・自助具などを利用する。
- 食事時間が適切かを確認したり、食後の口腔内残留を確認し、残留があれば一度食形態を変更して残留具合を比較する。
- 食物にまとまりやすいあんをかけたり、食事介助されている方なら、座っている椅子をリクライニングしてみるのも良い。
咽頭期に問題が生じた場合
- 食物や水分の咽頭流入と嚥下反射が起こるタイミングがずれて誤嚥する。
- 咽頭収縮力が弱くなり咽頭に残留しやすくなる。
- 残留物を誤嚥する。
- 食道入口部が開大せず食物が飲み込めない。
といったことが起こる可能性があります。
- 嚥下のタイミングがずれて誤嚥する場合には、水分に増粘剤を混ぜて適切に調整する。
- 一口量を少なくする。
- 湿性嗄性(食物や水分などが残留して生じるガラガラ声)のある場合は、咳払いをする。
- 食形態を変更する。
など様々な方法があります。
食道期に問題が生じた場合
- 食道逆流や停滞が生じる。
- 逆流物の誤嚥、通過障害などが見られる。
- 咽頭期に問題がなくても、痰がらみが消失しない。
- 食後のげっぷやむせが見られることが多くある。
等の様子が見られます。
- 胸のつかえ感や胸やけ、逆流感がある人は、消化器内科など専門医への受診が必要。
- 食事の1回量を減らして回数を増やす。
- 食後の座位を保持することも有効。
食事制限が必要な主な疾患
食事制限 | 主な疾患 |
---|---|
カロリー | 糖尿病、高尿酸血症、痛風、肥満 |
塩分(ナトリウム) | 腎機能障害(尿毒症)、高血圧症、心疾患 |
カリウム | 腎機能障害(尿毒症) |
たんぱく質 | 腎機能障害(尿毒症) |

腎機能障害(尿毒症)の方は、高カロリー食になります。
腎機能障害の方の食事制限に関しては細かく書いた記事があるのでそちらを読んでみてください。
⇒生活支援技術「腎機能障害の人の食事」
生活場面におけるこころとからだの変化の気づき
誤嚥が疑われる状態と窒息
- 窒息がある。
- 脱水、低栄養状態がある。
- 食事時間が1時間以上かかる。
- 食事中や後にむせたり咳が多い。
- 夜間に咳き込む。
- 肺炎、発熱を繰り返す。
- 拒食、食欲低下がある。
- 食事の好みが変わった。
- かすれ声がある。
- 咽頭違和感・食物残留感がある。
健康な人の場合は、誤嚥をするとかなり激しい咳がでます(咳反射)。しかし、反射が低下していると咳も弱かったり、あるいは反射が消失していると、誤嚥しても一見、何も起こらないため、問題がないようにみえることがあります。これを不顕性誤嚥といいます。
窒息の場合、次のような状態になります。
- 声が出せない
- もがく
- チョークサインがでる
- 呼吸音がゴロゴロ、ヒューといった音になる。
- 呼吸困難となり、顔面のチアノーゼがみられるようになる。
- 脈拍、血圧が上昇する。
さらに進行すると、
痙攣、脱糞を伴い、激しくのたうち回ります。
一分を過ぎると、
意識を消失し、硬直した表情になり、昏睡状態、筋肉の弛緩、仮死状態に陥り、一分半を過ぎると回復の可能性は少なくなります。
脱水

脱水について説明するための準備として、
まず、浸透圧について説明しておきます。
下図はU字のビーカーに水を入れ、真ん中を半透膜で仕切ったものです。半透膜というのは「水は通すけど、塩や砂糖は通さない」という性質を持っているものです。

細胞を覆っている細胞膜も半透膜です。

次に半透膜の右側に塩を入れ、食塩水にします。(下図)

すると、下図のように水が動きます。

半透膜を介して溶液が接すると、濃度の高い方を薄める方向に水が移動します。重力だけを考えると、両方の水面が同じ高さになるはずなのに、溶液側の水面の方が高くなります。この力を浸透圧といいます。

脱水の説明に話を戻します。
脱水とは、体内の水分と塩分(ナトリウムやカリウムなどの電解質)が減少した状態です。
脱水は次の3種類に分けられます。
- 水欠乏性(高張性)脱水
- ナトリウム欠乏性(低張性)脱水
- 混合性脱水
水欠乏性(高張性)脱水
水分摂取が不足したり、大量の汗をかいたりすると、細胞外液の水分が少なくなります。そうすると、細胞外液の濃度が相対的に高くなります(食塩水で水だけを減らすイメージ)
その結果、浸透圧で細胞内の水分が外に出ていき、細胞が脱水状態になってしまいます。
看護Roo!
このように水分の欠乏が主で、相対的に細胞外液のナトリウムイオンの濃度が増して浸透圧が高くなり、細胞内の水分が外に出て行ってしまった結果の脱水を、高張性脱水と呼びます。

ナメクジに塩をかけるとしぼんでしまうのは、この原理です。
水欠乏性(高張性)脱水の症状としては以下のようなものがあります。
- のどの渇き
- 発熱
- 尿量の著しい減少
- いつもは湿っている部分(舌・脇の下など)の乾燥
- 血圧低下
- 皮膚の張りがなくなり、シワが目立つ
- 不安、興奮
ナトリウム欠乏性(低張性)脱水
ナトリウム欠乏性(低張性)脱水は、高温下での作業や激しい運動によって大量の汗をかい時などに、水分と一緒にナトリウムイオンが体外に出てしまっているにもかかわらず、水分だけを補給すると起こります。
また、嘔吐や下痢などでは、水分と一緒に電解質が失われます。その後の電解質の補給が不十分だとナトリウム欠乏性脱水が起こることがあります。
細胞外液のナトリウムイオンが失われた場合に水だけを補給すると、細胞外液がうすまり、相対的に細胞内液の電解質濃度が高くなります。その結果、浸透圧で細胞内液を薄める方向に水分が動きます。
看護Roo!
そして、脱水による細胞外液の減少はますます助長され、細胞内液の電解質濃度が低下してしまうことになります。

体内の電解質濃度に異常があると、さまざまな症状があらわれます。
ナトリウム欠乏性脱水では、細胞外液中の水分が細胞内に移動するために循環血液量の減少が大きく、著しい血圧低下が現れます。そのため、頭痛やめまい、吐き気、立ちくらみなどの循環器症状がみられます。このとき、心臓が末梢組織に必要な酸素を送ろうと収縮を速めるので頻脈になります。また、血液が濃縮するために粘度が高くなり、脳梗塞や心筋梗塞の引き金になることもあります。
ナトリウム欠乏性脱水ではのどの渇きはありません。尿量もほぼ変わりません。意識障害などの神経症状が出ることが特徴です。
ナトリウム欠乏性脱水の症状をまとめると、以下のようになります。
- 著しい血圧低下
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- たちくらみ
- 頻脈
- 意識障害
- のどの渇きはない
- 尿量の変化なし
混合性脱水
水とナトリウムイオンの両方が減る場合の脱水で、浸透圧が変わらない場合は等張性脱水と呼びます。
高齢者の脱水は混合性脱水が多いと言われていますが、症状が出にくいという特徴があるので注意が必要です。
低栄養
健康的に生きるために必要な量の栄養素が摂れていない状態を指します。その中でも特に、たんぱく質とエネルギーが充分に摂れていない状態のことを「PEM(Protein energy malnutrition):たんぱく質・エネルギー欠乏(症)」といいます。
高齢者では特にPEMが問題となっており、寝たきりの人はその割合が高くなっています。
高齢になると、若いころより体の筋肉や水分が減ってきます。そのため、低栄養になると、次ような症状が起こりやすくなります。
- 認知機能の低下
- 免疫力の低下
- 体力・気力の低下
- 筋肉量・骨量の低下
低栄養を確認するための指標には、
- 血清アルブミン値(3.8g/dl以下)
- 体重減少率(一か月で3%以上)
- 体格指数(BMI)(20未満)
などがあります。

血清アルブミンは、血液中のタンパク質の一種で、総たんぱくの約6割を占めており、栄養状態を評価する際の指標になります。

体格指数(BMI)は
[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]
で計算すると出せます。
入浴に関連したこころとからだのしくみ
入浴の作用
温熱作用
皮膚の毛細血管や皮下の血管が拡張し、血行がよくなります。その結果、
- 体内の老廃物や疲労物質が排泄されやすくなります。
- 内臓のはたらきが活発になります。
- 腎臓のはたらきが活発になり、利尿作用がはたらきます。
静水圧作用
からだが一回り小さくなるほどの水圧を受け、血液循環が促進され、心臓のはたらきが活発になります。その結果、
- 下肢の血液が心臓に戻りやすくなり、下肢のむくみが軽減されます。
- 心肺機能が促進されます。
浮力作用
体重が1/9程度になり、重さから解放されます。その結果、
- 腰や膝などへの負担が軽減されます。
- からだの負担が軽減されてリラックスできます。
湯の温度がからだに与える影響まとめ
中温浴(38~41℃) | 高温浴(42℃以上) | |
---|---|---|
自立神経 | 副交感神経を刺激 | 交感神経を刺激 |
心臓の動き | 抑制される | 促進される |
血圧 | 低下する | 上昇する |
腎臓の働き | 促進される | 抑制される |
膀胱の働き | 排尿が促進される | 排尿を抑制する |
腸の働き | 活発になる | 抑制される |
筋肉の働き | 弛緩する | 収縮する |
脳 | 鎮静、リラックス | 興奮 |
皮膚の機能と発汗のしくみ
皮膚の構造
出典 https://wakiasenioi.jp/about/
皮膚の構造は大きく分けて、
- 表皮
- 真皮
- 皮下組織
からなります。
皮膚から出る汚れには、汗、皮脂、垢があります。汗は、血液からつくられ、汗腺(エクリン腺とアポクリン腺)に取り込まれた汗は排出前に血管に再吸収されます。塩分はそのときにほとんど再吸収され、排出される汗は99%以上が水です。
皮膚の常在細菌
重要な常在細菌は腸内細菌だけでなく、皮膚にも常在細菌がいて私たちのストレスフルな外的刺激などから守ってくれています。皮膚は人体で最大の臓器ともいわれ、皮膚には多くの常在細菌があると言われていますが、その代表的なもの3つについて以下で説明します。
黄色ブドウ球菌
皮膚表面や毛穴に存在します。存在しているだけでは問題ありませんが、ブドウ球菌の中では病原性が高いため皮膚がアルカリ性に傾くと増殖して皮膚炎などを引き起こします。傷ついた皮膚をそのままにしておくと化膿し悪化させてしまいます。汗のpHは4~6の弱酸性で、この酸性度が皮膚表面での細菌増殖を防ぐと考えられているため、石けんは皮膚のpHに近い弱酸性のものを使用します。

pHとは、水溶液の性質をあらわすひとつの単位で中性はpH7、これより低い方を酸性、高い方をアルカリ性と呼びます。
表皮ブドウ球菌
皮膚表面や毛穴に存在します。表皮ブドウ球菌は汗や皮脂を餌にグリセリンや脂肪酸を作り出します。脂肪酸は肌を弱酸性に保ち抗菌ペプチドを作り出すことで、黄色ブドウ球菌の増殖を防ぎます。表皮ブドウ球菌が出すグリセリンは、皮膚のバリア機能を保つ役割があります。
アクネ桿菌(かんきん)
この菌は嫌気性菌であり、酸素がある環境ではほとんど増殖できず、死滅します。そのため、酸素を嫌い毛穴や皮脂腺に存在し皮脂を餌にプロピオン酸や脂肪酸を作り出すことで皮膚表面を弱酸性に保ち、皮膚に付着する病原性の強い細菌の増殖を抑える役割を担っています。
一般的にニキビの原因と言われていますが、増殖しなければニキビの原因菌にはなりません。しかし、皮脂の分泌量が増えたり、何かの異常で毛穴をふさいだりすると、アクネ桿菌が過剰に増殖し炎症を引き起こしてニキビになります。
発汗のしくみ
発汗のしくみ
発汗は、視床下部にある体温調節中枢が、自律神経を介して汗腺に指令を出すことで起こります。主に体温調節のために汗を出す汗腺はエクリン腺で、汗が皮膚面で蒸発するときに体熱を放散し、体温を調節します。もう1つのアポクリン腺は、腋の下、外耳道、外陰部などの体毛のある限られた部分に分布しています。汗腺は真皮にあり、エクリン腺が一番多く分布している場所は、多い順に
- 手掌
- 足底
- 額
となっています。
エクリン腺のうち汗を出す能動汗腺は、約180万~280万個といわれ、その数は生後2~3歳までの育った生活環境により決定され、個人差があります。
汗をかかない生活は能動汗腺を減少させ、汗をかきにくくします。発汗ができないと排熱ができず、からだは熱の生産を抑えるために代謝活動を抑制し、低代謝の悪循環に陥ります。
生物学的放熱機構として、発汗以外にも1日に肺から約300ml、皮膚から500~600mlの水分が不感蒸泄として排出されています。
汗のにおい
エクリン腺から出る汗の成分が水と電解質なのに対して、アポクリン汗腺から出る汗は水分の他にタンパク質や脂質などの有機成分が含まれています。汗自体にはにおいはありませんが、これが皮膚の表面に付いた雑菌(表皮ブドウ球菌、アクネ菌など)に分解されると、ある種の脂肪酸が出来て特有の汗のにおいを発します。
汗の種類
汗には次の3種類があります。
- 運動や気温の上昇で発汗する、温熱性発汗
- 緊張した時などの、精神性発汗
- からいものなどを食べたときの、味覚性発汗
排尿に関連したこころとからだのしくみ
尿の性状
尿成分の95%は水分です。残りの5%には、尿素・尿酸・ナトリウム・カリウム・アンモニア等が含まれています。排泄されたばかりの尿は弱酸性です。
尿の性状は、黄色や薄い茶色がかった透明の液体で無菌です。出た直後は食べ物のにおいなどがしますが、空気に触れると細菌によって尿が分解され、アンモニア特有のにおいとなります。
排尿のしくみ
出典 https://www.selfdoctor.net/q_and_a/2012_12/01.html
腎臓でつくられた尿は、尿管という細い管を通って膀胱に運ばれます。膀胱はやわらかいに筋肉でできた袋で、尿はいったんここに貯められます。膀胱の下は尿道と呼ばれる管につながり、尿はここから体外に排出されます。
尿道は、尿道括約筋と呼ばれる筋肉が蛇口のような役割を果たし、漏らすことなく膀胱に尿をためたり出したりしています。膀胱の容量は人によって異なりますが、一般的に200~500mlです。
膀胱や尿道のはたらきは、脊髄を経由して大脳に至る自律神経が調節しています。自律神経である交感神経と副交感神経は、排尿リズムに関与しています。具体的には、
- 交感神経が優位になると、
膀胱を弛緩させ、尿道を収縮させるので、膀胱に尿が送られても尿を漏らさずにいられる(蓄尿)。 - 副交感神経が優位になると、
膀胱を収縮させ、尿道を弛緩させて排尿が促されます。
膀胱に150~200ml程度尿がたまると、その刺激が膀胱から脊髄を経て大脳まで伝わり、尿意を感じます。尿意がないと排尿はできません。尿意は30分~1時間程度は我慢できるが、あまり我慢すると鳥肌がたったり寒気を感じたりします。
機能の低下・障害が及ぼす排尿への影響
尿失禁
尿失禁には、機能性尿失禁・切迫性尿失禁・腹圧性尿失禁・溢流性尿失禁があります。

以下でこの4種類の尿失禁の特徴や原因を説明します。
■機能性尿失禁
認知症やADLの低下による、認知機能や運動機能の低下が原因で排泄行為が困難となり漏れる。尿経路に器質的な障害が認められないにもかかわらず、身体障害などの要因によって、トイレに間に合わないために起こる尿失禁です。例えば、
- 左片麻痺でトイレまで行くのに時間がかかり、間に合わずに失禁してしまう。
- 認知症の影響でトイレの場所がわからなくなり、排泄の失敗をしてしまう。
などです。
排尿誘導やトイレがわかりやすいよう目印をつける、手すりをつけるなど、トイレに行けるような支援を行います。
■切迫性尿失禁
脳・脊髄の損傷、前立腺肥大症や膀胱炎などの疾患による膀胱収縮(ためておけない)が原因で、急に強い尿意を感じて我慢できずに漏れる。
第一選択は、膀胱の収縮を抑える薬物療法です。早めにトイレに行く習慣がある場合は、尿意を我慢する訓練(膀胱訓練)を行います。
■腹圧性尿失禁
出産・加齢などの影響で、尿道を締める筋肉(骨盤底筋)が弱くなり、くしゃみや咳など、おなかに力が入ったときに漏れる。
第一選択は、骨盤底筋訓練です。骨盤底筋は、膀胱、子宮、直腸が下がらないように骨盤から支える筋肉です。これを鍛えることで尿失禁の予防となります。他の療法として、尿道を支えて漏れにくくする手術や尿道にコラーゲンを注入して狭くする方法、尿道を締める薬物療法などがあります。
■溢流性尿失禁
脳・脊髄の損傷、前立腺肥大症や前立腺がんなどによる排尿障害が前提としてあります。自分で意識して尿を出したいのに、意識とは逆に少しずつ尿が漏れ出てしまうタイプの尿失禁です。排尿開始までに時間がかかったり、排尿できても勢いがなかったり、残尿感があるといった症状が特徴です。
尿道の開きをよくする手術や薬物療法、膀胱の収縮をよくする薬物療法、残尿を取り除く導尿法、などがあります。
尿路感染症
尿路感染症は、高齢者に多い泌尿器疾患です。尿路組織内に細菌などが侵入したために起こる炎症反応のことであり、膀胱炎と腎盂腎炎がその代表的な疾患です。また、女性に多い疾患でもあります。尿路感染症の主な原因には、
- 脱水
- 留置カテーテルの使用
- 前立腺肥大症などによる残尿
- 寝たきり(おむつ等で長時間尿と接触しているため)
などがあります。
高齢者では、尿失禁が尿路感染症の初発症状であることもあります。
■急性膀胱炎
原因となる病気が特になく、大腸菌などの細菌が尿道から侵入し感染することでおこります。膀胱炎の大半で、若い女性がかかる膀胱炎はほとんどがこのタイプです。
急性膀胱炎の三大症状は、
- 排尿痛
排尿時に差し込むような痛みが生じ、排尿の終わりに特に痛みが強くなります。 - 頻尿
排尿回数が増え、30分~1時間ごとにトイレに行きたくなることもあります。 - 尿の濁り
細菌と戦うために集まった白血球や炎症部分の分泌液やはがれた膀胱の粘膜が混入するために、尿が濁ります。
そのほかに残尿感、血尿などが現れることもあります。発熱がある場合には、腎盂腎炎の可能性があります。
■慢性膀胱炎
慢性膀胱炎は、膀胱や尿道に基礎疾患による残尿があったり、導尿用カテーテルの留置や膀胱結石、がんや治療薬による体力低下・免疫力低下、糖尿病や妊娠あるいは膀胱腫瘍などの合併が原因で起こります。
■急性腎盂腎炎
急性腎盂腎炎は、腎盂上皮に付着した病原体が、腎盂と腎実質をおかす炎症です。突然に悪寒戦慄(寒気と震え)を訴え、体温が38~40℃に急上昇し、片側背面のCVA(肋骨脊柱角)領域に自発痛や圧痛を生じ、排尿痛、排尿時のしぶり、頻尿、尿意切迫感などの膀胱刺激症状があります。
出典 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/renal_pelvic_and_ureteral_cancer/
無尿・乏尿・多尿
尿は1日に1000~2000ml排泄されます。1回の尿量は200~500mlで、1日の排尿の回数は4~8回前後です。
尿量の異常には、無尿(50~100ml以下/日) 乏尿(400ml以下/日) 多尿(3000ml以上/日または体重1㎏×40以上)があります。
■無尿・乏尿の原因には、
- 出血や心疾患による腎臓に供給される血液の減少
- 腎臓の病気による腎機能障害
- 結石や腫瘍による尿道の閉塞
などがあります。
■多尿の原因は、
- 水分の摂取量が多い。
- 糖尿病などの疾患。
などがあります。
糖尿病では原尿の濃度が濃くなり、浸透圧が上昇します。原尿から水分を再吸収すると、さらに濃度が濃くなり、浸透圧が上昇してしまうため、体の生理作用で水分の再吸収が行われません(通常は原尿の水分の99%は体内に再吸収される)。そのために多尿になります。
排便に関連したこころとからだのしくみ
便の性状、量、回数
便の性状において、便の硬さには個人差があります。かかわる人が共通の基準で観察することが大切であり、そのスケールとしてブリストル便形状スケール(下図)があります。
出典 http://www.carenavi.jp/jissen/ben_care/shouka/shouka_03.html
便の量、回数
個人差がありますが、一般的に健常な人では1回150~200㎎、1日1~3回ないし1~3日に一回程度が正常といわれています。
便の色
便の色は、胆汁色素が変化したもので、通常は黄茶褐色をしています。主な便の色の変化と食物等の関係、排便の異常は下の表の通りです。
便の色 | 関係する食物等 |
---|---|
黒色 | 上部消化管の出血、鉄剤の服用 |
赤色 | 血液付着、赤色食物の多食 |
灰色 | 胆汁不足、胆道閉鎖、バリウム投与後 |
緑色 | ほうれん草の多食、薬剤の影響 |
便の生成のしくみ
出典 看護Roo!
食物は、歯で噛み砕かれ、唾液と混ぜ合わされ、咽頭、食道を通って胃に運ばれます。胃は約1300mlの容量の袋状の臓器で、胃液と混ぜ合わせて粥状になった食物を小腸へと送ります。
小腸は、
- 十二指腸
- 空腸
- 回腸
の順に大腸へ続く管状の臓器で、全長6~7mあります。十二指腸で膵液と胆汁と混ざり、空腸と回腸で消化され、栄養が吸収されます。
水分の95%を小腸で吸収していますが、この段階では便はまだどろどろの水様です。残りの水分の5%のうち4%を大腸で吸収して、肛門にたどり着くまでに形のある便になります。
大腸は、小腸に続く全長1.6mの管状の臓器で、
- 盲腸
- 上行結腸
- 横行結腸
- 下行結腸
- S状結腸
- 直腸
の順に肛門へと続きます。便が肛門まで移動できるのは、蠕動運動によるものです。
排便のしくみ
腸や肛門のはたらきは、脊髄を経由して大脳に至る自律神経が調節しています。自律神経である交感神経と副交感神経は、排便リズムに関与しています。
出典 http://www.carenavi.jp/jissen/ben_care/chikuben/ben_01.html
- 交感神経が優位になると、
直腸を弛緩させ、肛門を締めている内肛門括約筋を収縮させるため、 直腸に便が送られてきても便を漏らさずにいられる(蓄便) 。 - 副交感神経が優位になると、(トイレで排便の体勢をとる時)
直腸を収縮させ、肛門を締めている内肛門括約筋を弛緩させるため、少しのいきみをきっかけに便が排出される。

内肛門括約筋は腸の筋肉の一部で、平滑筋という自律神経がコントロールする筋肉です。一方、外肛門括約筋は、体性神経支配の横紋筋です。手や足の骨格筋と一緒で、意識して動かすことができます。
直腸に便がある程度たまると、その刺激が直腸から脊髄を経て大脳まで伝わり、便意を感じます。便意がないと排便はできません。便意は15分程度で感じなくなるので、我慢しないことが大切です。
機能の低下・障害が及ぼす排便への影響
便秘
便秘は、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義され、原因により器質性便秘と機能性便秘に大別されています。
■器質性便秘
大腸の病気により大腸そのものに形態的な病的変化がみられる状態です。大腸がんやクローン病などで多く、便秘が長期間続く場合や血液が混じる場合に疑われます。
■機能性便秘
大腸に形態的な変化は認めないが、大腸の排便機能に何らかの障害が起こり便秘となった状態です。さらに細分され、具体的には以下のようなものがあります。
- 弛緩性便秘
加齢や運動不足による腸管の緊張低下や筋力低下、食物繊維不足、モルヒネなどの麻薬性鎮痛剤の服用などが原因で、大腸の蠕動運動が低下することにより、便が長時間排出できず、水分が吸収されて硬くなります。
治療には食物繊維の摂取や適度な運動、薬物療法として大腸刺激薬の使用などがあります。 - 痙攣性便秘
ストレスなどによる自立神経の失調が原因で、腸の規則的で大きな動き「蠕動運動」がうまく起こらず、バラバラに動くことにより、便が腸の中を行ったり来たりします。そのため、コロコロした兎の糞のようになったり、急に動きが強まって水のような便までが押し流されるような下痢になったりします。
腸は動いているのに、正しく順番に動いてないから結果としてうまく排便ができないという便秘です。 - 直腸性便秘
便意を我慢する習慣があったり、便意を感じる神経が障害されていることが原因で、直腸に便があるにもかかわらず、排便反射が弱く、便意を催さないことが原因です。
治療には、朝食をきちんと摂り、食後に便意があってもなくてもトイレに座るといった行動療法があります。困難な場合は、摘便、浣腸、座薬によって、直腸内の便を除去します。 - 薬剤性便秘
薬の副作用として起こる便秘です。便秘の原因となる薬剤には抗コリン作用剤(パーキンソン病治療剤、抗うつ剤など)などがあります。

痙攣性便秘の関連として、過敏性腸症候群について説明しておきます。
過敏性腸症候群は大腸に腫瘍や炎症など症状の原因となるような病気がないにも関わらず、おなかの調子が悪く痛みが続いたり、便秘や下痢などの症状が数ヵ月以上にわたって続く消化管の機能障害の疾患です。排便することで楽になる腹痛と、下痢や便秘などの便通異常が主な症状です。ストレスが症状を悪化させる要因の1つと考えられていますが、明らかな原因は不明です
睡眠に関連したこころとからだのしくみ
概日リズム(サーカディアンリズム)
人間の身体はおよそ1日24時間のリズムで変化しています。睡眠や起床といった目に見える行動だけではありません。体温や血圧、尿、ホルモン分泌などの生理活動も約24時間の周期で変動しています。
こうした周期を「体内リズム」あるいは「概日リズム(サーカディアンリズム)」「体内時計」といいます。

体内リズムを形成するための24時間周期のリズム信号を発振する機構は、脳の視床下部の視交叉上核に存在します。
人の体内リズムは平均が24.18時間(24時間10分)ということが、最新の研究でわかってきました。地球の自転周期である24時間とはズレがあり、これが日々積み重なると、最終的には昼夜が逆転することになります。ところが、実際にはそこまでの状況になる人はほとんどいません。
なぜなら、人体には「体内時計リセット機能」が備わっているからです。
体内リズムと地球の自転周期とのズレは、日常生活でさまざまな刺激を受けることで体内リズムが24時間周期に同調するように修正されます。それによって私たちは毎日を1日24時間周期の環境に従って生活することができるのです。ズレを修正するこの刺激を同調因子といいます。
同調因子には次のようなものがあります。
- 日光(毎朝起きて日光を浴びる等)
- 運動(決まった時刻の適度な運動習慣など)
- 食事
- 学校
- 仕事
自分から特に意識して行動しなくても、体内リズムと自転周期とのズレは修正されて、新しい周期を刻み始めます。

電波時計が定期的に自動で時刻を修正するようなイメージでしょうか
日光×セロトニン×メラトニン

日光を浴びることが、体内リズムの調整に効果があるというところを、もう少し深掘りしておきます。
日光を浴びることによって、脳内でセロトニンとよばれる神経伝達物質が分泌されます。
セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで、ドーパミン、ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをします。
セロトニンの分泌には日光を浴びることが欠かせません。また、一定のリズムで行う運動もセロトニンの分泌を高めてくれます。

朝、太陽の光を浴びながらの散歩などいいですね。
メラトニンは松果体から分泌されるホルモンで、体内リズム(サーカディアンリズム)を整える働きがあります。夜、暗くなると分泌が促進され、明るいと抑制されます。
メラトニンはセロトニンを原料として合成されます。日中はセロトニン濃度が高く、夜にメラトニンが分泌されているときは逆にセロトニン濃度は低下します。
夜のメラトニン分泌のためには、日中に光を浴びることが大切です。
トリプトファン
メラトニンの原料がセロトニンで、そのセロトニンの原料がトリプトファンです。
トリプトファンは体内では作ることができず、食物から摂取しなければならない必須アミノ酸のひとつです。
トリプトファンがセロトニンになり、そしてメラトニンになるまでには、時間がかかります。なので、夜にメラトニンを十分に分泌するためには、朝食にトリプトファンを摂取する必要があります。
トリプトファンを多く含む食材は、牛乳やバナナ、鶏むね肉、チーズ、大豆製品、牛肉、ナッツ、卵などがあります。

セロトニンからメラトニンを作る酵素は普段から目一杯働いていて余裕がありません。したがって、トリプトファンを摂取するほど、メラトニンがたくさん作られるというわけではありません。
原料がいくらあっても工場はフル稼働中という感じです。
睡眠の生理的意味
睡眠をとることで、短時間で効率的に休息をとることができます。睡眠時間には個人差があり、基準があるわけではありません。その日の睡眠の長さや深さは、目覚めていた長さや疲労の程度によります。睡眠に適している時間帯は、体内時計のはたらきにより決まります。
1日の睡眠時間は、20~50歳代で約7時間で、高齢になると短くなります。
また、睡眠をとることは、脳の機能を維持するために重要です。具体的な理由は、
- からだの組織の成長・修復を促進する成長ホルモンを分泌する。
- 病原体が体内に侵入すると、これを迎え撃つ免疫系の活動が活発になる。
- 脳に収集する情報が整理される。
などがあります。
睡眠のリズム(レム睡眠とノンレム睡眠)
レム睡眠
筋肉が弛緩し、からだはぐったりしているのに、脳は覚醒に近い状態で夢を見ていることが多いです。眼球が上下左右に動くため「Rapid Eye Movement:急速眼球運動」の頭文字をとりREM睡眠と呼ばれています。
ノンレム睡眠
ある程度の筋緊張を保ちながらぐっすり眠り、大脳を休ませ回復させる眠りです。睡眠にはリズムがあり、浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠を90~110分周期で繰り返すとされています。
睡眠不足の影響と睡眠に関する障害
睡眠不足が体に与える影響
- 血圧があがります。
これは交感神経の活動が活発になるためと考えられています。慢性の睡眠不足は高血圧の危険因子となります。 - インスリンのはたらきが弱まります。
- 食欲が増加します。
消化管からは食欲を増加させるグレリンというホルモンと、食欲を減少させるレプチンというホルモンが分泌されますが、睡眠不足が続くと、グレリンの分泌が増加し、レプチンの分泌がが減少し、食欲が増加します。そのために肥満になりやすい。
不眠の種類
- 入眠障害
なかなか寝つけない。 - 熟眠障害
長い睡眠時間をとっても、よく眠ったという満足感が得られない。 - 中途覚醒
夜中に何度も目が覚める。 - 早期覚醒
早朝に目が覚めて、その後眠れない。
レストレスレッグス症候群
夕方から深夜にかけて、 下肢を中心として、「ムズムズする」「じっとしていると非常に不快」といった異常な感覚が出現してくる病気です。足を動かすとこの異常感覚はすぐに消えますが、じっとしていると再び出現してきます。そのため、布団の中でじっとしていることができず、入眠障害や中途覚醒の原因となります。
周期性四肢運動障害
睡眠中に四肢の異常運動が生じて睡眠が妨げられる病気です。睡眠中に片足あるいは両足の不随意運動(ピクピク)が周期的に起こるため、夜間の不眠や日中の過眠が生じます。レストレスレッグス症候群と合併することが多く、年齢とともに増加します。本人が病気を自覚していないことも多いです。

過眠は、夜間十分な睡眠をとっているはずなのに、日中に目覚めていられないような病的な眠気がみられることです。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は眠り始めると呼吸が停止し、血液中の酸素濃度が低下して目が覚め、呼吸が再開するが、眠りはじめると再び呼吸が停止するという過程を一晩中繰り返します。
肥満型の人に多くみられます。のどの部分の空気の通り道(気道)が狭い人で、睡眠により周囲の筋肉が緩み、気道が閉塞してしまうことで起こります。気道が狭くなる原因として、肥満以外にも扁桃腺腫大や小下顎症(下顎が小さい)などがあります。
睡眠不足のために日中に過剰な眠気が出現し、居眠りや集中困難などがみられます。夜間に長時間続く低酸素血症のため、高血圧、動脈硬化が引き起こされ、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。
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