介護とICF|最初からわかりやすく解説!

ICF-アイキャッチ画像 介護の基本

そもそも、ICFって?

まずは、ICFとは何かというところから説明していきます。

ICFとは

ICFInternational Classification of Functioning, Disability and Health)は国際生活機能分類と訳されています。個人の情報(健康状態、家族関係、趣味、病歴etc)の整理の仕方というイメージで差支えありません。

ICFの目的を一言で言えば、「“生きることの全体像”を示す“共通言語”」です。生きることの全体像を示す「生活機能モデル」を共通の考え方として、さまざまな専門分野や異なった立場の人々の間の共通理解に役立つことを目指しています。

いまいちわかりません。

例えば、施設に入所している利用者が歩行訓練のために訪問のリハビリを受ける場合を考えてみてください。施設側はその利用者に関する必要な情報を訪問リハのスタッフに渡します。現在の歩行の様子や既往歴など関連情報等がキレイにまとめられている方が訪問スタッフにとってはありがたいですよね。ICFはその情報の分類の仕方とかまとめ方のテンプレートというイメージです。

ここから具体的に説明していきます。

ICFでは健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子の各要素を約1500項目に分類し、それぞれが相互作用していると考えます。

どのように分類されるのか、心身機能を例にとってみると、下図のようなかんじです。

ICFの分類例

このように細かく分類されるのですが、介護福祉士国家試験では細かい分類は一切覚える必要がありません

下の図はICFと検索するともっとも検索結果にあらわれる図です。この図を使って説明していきます。

ICFモデル
ICF(国際生活機能分類)モデル

ICFの中心概念は赤字になっている生活機能です。これは、心身機能・身体構造(視力、聴力、体格等)、活動(読み書き、入浴等)、参加(ボランティア、仕事等)の3つの要素に関する情報を包括した、その人の生活全般の情報です。

そしてこの生活機能に影響を与えるものとして、環境因子個人因子があります。

各要素を細かくみていきます。

ICFの各要素の説明

健康状態

疾患外傷に加えて、妊娠加齢ストレス状態その他いろいろなものを含む広い概念です。

心身機能・身体構造

心身機能とは、たとえば関節の動き、精神の働き、視覚、嗅覚、内臓の働きなどです。身体構造とは、四肢、心臓の一部(弁など)などの、体の部分のことです。また、「心身機能・身体構造」に問題が生じた状態を機能障害(構造障害も含む)としています。

例)

  • 右目が見えない
  • 左半身筋力低下 
  • 毎晩目つぶしをされるというような妄想がでてくる

活動

個人レベルのできる能力です。歩行やその他のADL(日常生活行為)だけでなく、調理、掃除などの家事行為、職業上の行為、スポーツをするために必要な行為、社会生活上必要な行為がすべて入ります。またICFでは「活動」をできる活動」(能力)している活動」(実行状況)との2つの面に分けて捉えます。活動に問題が生じた状態を活動制限としています。

例)

  • 入浴は自宅で一部介助
  • 外出時はシルバーカーを使用して移動
  • 電車やバスなどの公共機関を利用できる

参加

他者との関わり(家庭、組織等も含む)の中でできることです。また、その中で役割を果たすことです。

例)

  • 毎年、地域のお祭りに参加している
  • 施設の毎朝のゴミ出しを担当している
  • 会社に勤めている

環境因子

その人を取り巻き、その人の生活に影響を与える要素です。住んでいる建物のような物理的環境だけではありません。家族や友人、同僚といった人的環境や、生活保護などの制度的な環境も含みます。

例)

  • 息子夫婦が近所に住んでいる
  • エレベーターのついているマンションで暮らしている
  • 障害福祉サービスを受けている

個人因子

年齢や性別、職業など、その人個人の特徴です。非常に多様なので、ICFでは他の要素のように分類していません

例)

  • 価値観
  • 未婚でこどもがいない
  • 書道を教えることが好き

ICFではモデル図のように、ほとんどすべての要素が双方向の矢印で結ばれています。これはひとつの要素の変化が相互に複数の要素に影響することを示しています。例えば、両下肢切断で車いす生活になった場合、活動・参加において、外出しなくなる、仕事ができなくなる等、複数の要素に影響します。しかし、車いすバスケットをはじめる等、新しい参加の要素が加わることもあります。

介護の場面で利用されるICFの例

介護の場面でのICFの利用例を紹介しておきます。

ICF利用例

通所ケア2006

介護福祉士国家試験でのICFに関する問題の出題パターン

過去問をひとつ例にあげます。

Dさん(70歳、女性)は10年前に人工肛門(ストーマ)を造設し、2年前に脳出血を患って軽い右片麻痺が残った。最近、物忘れが目立ってきた。また、同居する娘の仕事が忙しくなってきた。
Dさんに関する情報のうち、ICFの環境因子に該当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。

1.70歳の女性である。
2.人工肛門(ストーマ)を造設した。
3.軽い右片麻痺が残った。
4.もの忘れが目立ってきた。
5.娘の仕事が忙しくなってきた。

第28回介護福祉士国家試験

選択肢の文章がICFのどの要素か答えさせるという問題がほとんどですね

ちなみに正解は、選択肢5です。選択肢1は個人因子、選択肢2、3、4は心身機能・身体構造です。

ICFとICIDH

ICIDHについても説明しておきます。

ICIDH(国際障害分類)ICFと同じ分類法なのですが、 この概念は障害のある人の状態のマイナス面を強調しています。機能障害があれば必ず能力障害が生じ、それが社会的不利につながる、というような一方向的な図式になっており、現実にそぐわない面がありました。例えば、盲目であるのに世界的に有名なピアニストになった人もいます。

そこで生活機能というプラス面からみるように視点を転換し、環境因子個人因子の観点を加えたものがICFです。

ICFICIDHの上位互換という認識でよいのですか?

そういうわけではありません。 病気やケガを治療することが主目的の医療の現場などではICIDHでまとめられた情報のほうが使いやすい場合もあります。

医学モデルと社会モデル

参考サイト
https://www.carefit.org/social_model/

医学モデル社会モデルは対照的で、従来対立するモデルとして考えられていましたが、ICFでは二つのモデルを統合したアプローチを提案しています。

お疲れ様です。「介護の基本」4/13読破です。元気があれば次の記事へ!
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