福祉に係る法律や施策、社会福祉法人について解説

社会の理解

この記事では、過去に介護福祉士国家試験で取り上げられたことのある福祉に係る法律を紹介しています。

福祉に係る法律

日本国憲法25条

すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

出典  日本国憲法第二十五条

「社会福祉」が法令用語として初めて用いられたのは、1947(昭和22)年施行の日本国憲法第25条生存権に関する規定です。この規定により、国民が生存権を有し、その保障を国が義務として負っていることが明らかにされました。この規定を受けて、第二次世界大戦後の日本の社会福祉制度は整備されていきました。

生存権つながりで、”ナショナルミニマム”とうい言葉も紹介しておきます。

ナショナルミニマム

イギリスウェッブ夫妻によって提唱された概念です。政府と自治体が社会保障その他の公共政策によって国民の最低限度の生活を保障することです。

老人保健法(現・高齢者の医療確保に関する法律(高齢者医療確保法))

昭和40年代後半から認知症高齢者の問題がクローズアップされはじめました。昭和50年代は高齢化に伴う在宅の要介護老人への介護サービスに対するニーズが増大し、1982(昭和57)年には老人保健法(現・高齢者医療確保法)が制定されました。

文字通り、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るための法律です。

社会福祉法

1951(昭和26)年には、福祉三法の実施体制を確立するために社会福祉事業法(現・社会福祉法)が制定され、社会福祉の実施機関として、福祉事務所が各都道府県と市に設置されました。その後、社会福祉基礎構造改革により2000(平成12)年に大幅に改正され、法の名称も社会福祉法となりました。これにより福祉サービスは、行政処分によってサービス内容を決定する措置制度から、利用者が事業者と対等な関係に基づいてサービスを選択する利用契約制度に転換されました。

社会福祉法に関して選択肢に使われそうなポイントをあげていきます。

社会福祉法 3条

3条には、福祉サービスの基本的理念が書かれています。ちなみに理念というのは、 物事がどうあるべきかについての根本的な考えのことです

3条はこう書かれています。「福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、またはその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない。」

個人の尊厳”と”有する能力に応じ”というのが重要ワードです。

社会福祉法4条

4条には、地域福祉の推進について書かれています。

4条「地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化、その他のあらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。」

要約すると、社会福祉事業に係る人はお互い協力して、地域の人が暮らしやすくなるように、努力してね、という感じです。

4条の3項には、地域生活課題を把握して、関係機関と連携してその課題を解決する努力をしてというようなことが書かれています。ちなみに地域生活課題というのは、医療機関が足りないとか、バスの本数が少なすぎるとか、その地域の住民が抱える、福祉、介護、保健医療などに関する課題です。

社会福祉法5条

福祉サービスの提供の原則として、「社会福祉を目的とする事業を経営する者は、その提供する多様な福祉サービスについて、利用者の意向を十分に尊重し、かつ、保健医療サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図るよう創意工夫を行いつつ、これを総合的に提供することができるようにその事業の実施に努めなければならない」と規定されています。

社会福祉法6条

6条には国や地方公共団体の責務が書かれています。

6条「国及び地方公共団体は、社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう、福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策、福祉サービスの適切な利用の推進に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない」 と規定されています。各般はさまざま、いろいろという意味です。

要約すると、行政は、福祉事業者と協力して、ちゃんと福祉サービスが提供できる環境を整えて、利用者が適切にサービスを受けられるように、必要な施策をちゃんとやってね。という感じです

社会福祉法23条

社会福祉法人以外の者は、その名称中に、「社会福祉法人」又はこれに紛らわしい文字を用いてはならない

社会福祉法 44条2項

監事は、理事、評議員又は社会福祉法人の職員を兼ねてはならない

社会福祉法23条44条にも書かれている”社会福祉法人”についてここで説明しておきます。

社会福祉法人

社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に基づいて設立される法人です。

社会福祉法人の設立認可は、その行う事業が2つ以上の市区町村をまたがっている場合は、法人の主な事務所が存在する都道府県の知事が行います。

ただし、 その行う事業が一つの市内、区内におさまる小規模な場合は、区長市長が設立認可を行う場合もあります。

逆に、事業が2つ以上の都道府県にわたり、かつ、全国組織として設立されるような場合は、厚生労働大臣等が認可を行います。

社会福祉事業には、第一種社会福祉事業第二種社会福祉事業があります。

第一種社会福祉事業は、利用者への影響が大きいため、安定して経営を行い、利用者保護の必要性が高い事業で、例えば、特養や児童養護施設の運営などです。
経営主体は、原則として国、都道府県などの行政や社会福祉法人です。

第二種社会福祉事業は、比較的利用者への影響が小さいため、 公的規制の必要性が低い事業で、訪問介護や、デイサービス、ショートステイ等です。
こちらは、経営主体にとくに制限はありません。だれでも事業を行うことができます。

社会福祉法人は、これらの社会福祉事業に加えて、 公益事業収益事業を行うことができます。

公益事業は社会福祉と関係のある公益を目的とする事業ですが、社会福祉法人は、公益事業をメインの事業にすることはできません、あくまでメインは社会福祉事業で、公益事業はメインの社会福祉事業に関連するもので、サブの事業という位置づけになります。具体的には、有料老人ホームの経営や、介護予防事業などで、さまざまな事業を行ってます。

公益事業を行うにあたって、次のように定められています。

  • 日常生活または社会生活上の支援を必要とする人に対して、無料または低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない
  • 事業運営の透明性を高めるために、定款計算書類、事業の概要を記載した書類等を備え置き閲覧できるようにし、インターネットでも公表しなければならない
    ※定款は、会社(法人)の組織や運営に関する根本規則をまとめた書類で、計算書類というのは、貸借対照表や資金収支計算書など、法人の財務状況や事業活動の内容を示す書類です。

収益事業は社会福祉事業もしくは公益事業の経営に充てることを目的とする事業のことです。こちらも公益事業と同じで社会福祉法人のメインの事業にすることはできません。あくまでメインの社会福祉事業や一定の公益事業の運営を補助するための事業です。具体的には、社会福祉法人が所有する不動産を活用した貸しビル業や、駐車場の経営などです。

社会福祉法人に関するポイントをまとめておきます。

社会福祉法人の組織をざっくりまとめると、まず、業務の執行機関として、6人以上の理事からなる理事会があります。その理事が適切に仕事してるかチェックするのが監事です。チェック役なので、当然理事と監事を兼任することはできません

この理事と監事を選んだり、解任したりするのが評議員会です。評議員会は、理事会からあがってきた議案や決算承認等の重要事項の議決機関です。

社会福祉法人組織図

出典 厚生労働省
  • 社会福祉法人には、役員として、理事6人以上及び監事2人以上を置かなければなりません。なお、監事理事や職員を兼ねることはできません
  • 社会福祉法人は理事会評議員会置かなければなりません

理事会は、経営者として社会福祉法人の業務の執行を決定して、各理事の職務の執行を監督し、理事長を選んだり、理事長の職を解いたりします。

評議員会は、 法人運営の基本的なルールを決めるとともに理事や監事などの役員の選任・解任等を通じて、社会福祉法人が適切に運営されるようにチェックする役を果たします。評議員は、その社会福祉法人の職員や役員はなることができません。外部の人間で、社会福祉法人の適正な運営に必要な見識を持ち、正しい判断をできる人が選ばれます。

社会福祉法人は他の社会福祉法人と合併することができ、また、解散することもできます。

あと、一定規模以上の社会福祉法人は会計監査人を置かなければならないとされています。

会計監査人というのは、事業運営の透明性の向上などのため、一定規模を超える社会福祉法人に設置が義務付けられている外部監査機関で、公認会計士や監査法人が会計監査人となって、計算書類等の監査を行います。

社会福祉連携推進法人制度

社会福祉連携推進法人とは、令和4年度に施行された複数の社会福祉法人がグループ化した一般社団法人です。

一般社団法人についてざっくり説明しておきます。

一般社団法人は、利益の追求を目的としない非営利の人の集まり・団体に対して法人格が与えられたもので、監督官庁が存在しないため、活動は一切自由です。

例えば、町内会・同窓会・サークル等のように構成員に共通する利益を図る目的の事業(共益的な事業といいます)や収益的な事業も認められます。

「非営利」といっても、一般社社団法人は、とくに目的や事業内容について法律上の制限があるわけではなく、どのような事業内容であっても自由です。株式会社と同じように収益事業や共益事業なども行うことができ、利益を追求して多くの利益を出しても構いません。

ただし、営利法人である株式会社と異なり、社員(株式会社でいうところの「株主」)に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与えることはできません。

株式会社では、利益が生じた場合、株主に配当を行いますが、一般社団法人では、利益が出ても社員に利益配当はできませんし、社員に報酬はありません。

社会福祉連携推進法人の話へ戻ります

これまでの社会福祉法人間の連携方法として存在していたものは、合併や事業譲渡などですが、今後、同じ目的意識を持った複数の社会福祉法人でグループを作り、連携・協働化することで、より円滑に社会福祉の場を整えていくことを狙いとして、一歩踏み込んだのが社会福祉連携推進法人制度です。

社会福祉法人等が社員となり、福祉サービス事業者間の連携・協働を図るための取組等を行う新たな法人制度で、社会福祉連携推進法人の活用により、福祉・介護人材の確保や、法人の経営基盤の強化、地域共生の取組の推進などが可能となります。

例えば↓の画像のようなイメージで

出典 チアケアズ

社員として「特別養護老人ホームA」「特別養護老人ホームB」「特別養護老人ホームC」が参画して、社会福祉連携推進法人を設立。

設立した社会福祉連携推進法人にて介護人材の募集活動などを合同で開催したり、まとめて社員研修を実施したり、社員(特養A~C)の間での人事交流などを行い、

同じ目的意識を持つ法人が個々の自主性を保ちながら連携し、規模の大きさを活かした法人運営が可能となります

福祉三法

太平洋戦争後まず、1946年生活保護法が公布・施行されました。また、戦後の大きな課題は、戦災孤児をはじめとする子どもたちの保護でした。そのため、1947年児童福祉法が制定され、児童相談所の設置や児童福祉施設の整備などが定められました。それに加えて、1949年身体障害者福祉法が制定され、この3つの法律のことを福祉三法といいます。

福祉三法

  • 生活保護法
  • 児童福祉法
  • 身体障害者福祉法

福祉六法

1960年に知的障害者の自立と福祉のための法律、知的障害者福祉法が制定され、1963年には、特別養護老人ホームの根拠法である老人福祉法が制定されました。そして1964年に一人親家庭の生活を支援するための様々な福祉サービスの法律、母子及び父子並びに寡婦福祉法が制定されました。

上記3つの法律に福祉三法を加えて福祉六法といいます。

福祉六法

  • 生活保護法
  • 児童福祉法
  • 身体障害者福祉法
  • 知的障害者福祉法
  • 老人福祉法
  • 母子及び父子並びに寡婦福祉法

ざっくりした年代も問われたことがあるので、↓のような感じで覚えておきましょう

1940年代⇒福祉三法体制

1960年代⇒福祉六法体制

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)

この法律は2013(平成25)年に成立。障害を理由とする差別の解消を推進することにより、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すことを目的とし、差別の解消の推進に関する基本方針、行政機関や事業者における障害を理由とする差別解消措置などを定めています。(施行は2016(平成28)年)

また、この法律では、国の行政機関地方公共団体民間事業者などに不当な差別的取り扱いを禁止し、社会的障壁の除去についても必要かつ合理的な配慮が義務付けられています

必要かつ合理的配慮の具体例を以下に示しておきます。

  • 車いすの社員のために段差にスロープを渡す。
  • 視覚障害者のために資料を拡大文字や点字によって作成したり、資料の内容を読み上げて伝えたりする。
  • 障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更を行う。

障害者虐待防止法

この法律は、障害者の尊厳を守り、自立や社会参加の妨げとならないよう虐待を禁止するとともに、その予防と早期発見のための取り組みや、障害者を現に養護する人に対して支援措置を講じることなどを定めたものです。

対象となる障害者

身体障害知的障害精神障害発達障害を含むその他心身の機能の障害がある人で、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある人とされています。障害者手帳を取得していない場合も含まれます

障害者虐待の3パターン

  • 養護者による虐待
    「養護者」とは、障害者の身辺の世話や金銭の管理などを行う、障害者の家族、親族、同居人等です。また、同居していなくても、現に身辺の世話をしている親族・知人などが該当する場合があります。
  • 障害者福祉施設従事者等による虐待
    「障害者福祉施設従事者等」とは、障害者福祉施設または障害福祉サービス事業等に係る業務に従事する人です。
  • 使用者による虐待
    「使用者」とは、障害者を雇用する事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする人です。

高齢者虐待防止法では、「養護者による虐待」「施設従事者等による虐待」が明記されていましたが、障害者虐待防止法では、これらに加えて「使用者による虐待」が追加されています。

障害者虐待を発見した場合は、市区町村通報する義務があります。
使用者による虐待の場合は、市区町村または都道府県通報する義務があります。)

具体的にどこに通報すれば?

障害者虐待防止法の施行に基づき都道府県に設置されている、都道府県障害者権利擁護センターや市区町村に設置された、障害者虐待防止センターが障害者虐待に関する通報、および相談の窓口となります。
具体例↓
https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/shofuku/kikaku/shofuku/g/g-1-2.html

ゴールドプラン

ゴールドプランは高齢化社会を支えるために国が打ち出した施策です。策定されることになった背景には、1986年に閣議決定された「長寿社会対策大綱」と、1988年に策定された「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え」があります。

  • 1989  
    (平成元)年
    ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10か年戦略)が策定された。

    ホームヘルパーを10万人、特別養護老人ホームを24万床にするなど、10年間の具体的な数値目標が定められた。

  • 1994   
    (平成6)年
    新ゴールドプランが策定された。

    高齢化が当初の予想を超えて急速に進んだため、数値目標の修正が必要になり、1994(平成6年)にゴールドプランを見直した。

  • 1999   
    (平成11)年
    ゴールドプラン21が策定された。

    1999(平成11)年度で新ゴールドプランが終了すること、そして、2000(平成12)年には日本は高齢化率が世界最高水準に到達することが予測されることなどを受け、1999(平成11)年12月に「ゴールドプラン21」が策定された。ゴールドプラン21は5年間の計画で別名「今後5年間の高齢者保健福祉施策の方向」と呼ばれている。

お疲れ様です。「社会の理解」2/7読破です。
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障害者総合支援法をわかりやすく解説

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