「人間関係とコミュニケーション」「コミュニケーション技術」の2科目はセットで勉強してしまったほうが効率がいいので、まとめて解説しています。
「人間関係とコミュニケーション」の過去問
介護職と利用者のコミュニケーションを促す場面づくりに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.利用者との関係性を作る座り方として、直角法より対面法の方が有効である。
2.対面法で座る場合、視線を向けることのできる花瓶などを机の上に置くとよい。
3.利用者に近づけば近づくほど、親密な雰囲気になって利用者は話しやすくなる。
4.利用者が座っているときも、介護職は立ったままで話しかけてよい。
5.介護職が腕や足を組んだ姿勢をとると、利用者はより話しやすくなる。
正解2
1.対面法はお互いの顔が見える真正面に座るもので、相手から視線をそらしにくくなるので、比較的緊張感があります。直角法は相手の斜め45度の位置に座ることで、視線を合わせたり自然にそらしたりすることができ、よりリラックスした雰囲気を作ることができます。なので直角法の方が有効です。
2.対面法では視線をそらしにくくなるので、その対策として選択肢2の内容は有効なので、これは正しいです。
3.息がかかるくらい近づかれては気持ち悪いです。
4.介護職員は利用者の目線の高さに合わせるのが基本です。上から見下ろすような感じで話しかけると威圧感を与えてしまう可能性があります。
5.場面を想像すると、「何この偉そうな人・・」と感じてしまいます。
Bさん(75歳、男性)は施設に入所後3日たったが、表情が硬く、まだ誰とも話をしていない様子である。Bさんに対しての介護職の初期のかかわり方として、適切でないものを一つ選びなさい。
1.何に興味を持っているかを把握するため表情や行動を観察する。
2.さりげない会話をして関係の構築を図る。
3.どの場面で、どの場所に座るかなどを観察する。
4.肩に手を回すなど身体への接触を中心にする。
5.言葉だけでなく笑顔やうなずきを交える。
正解4
「適切なものを選べ」ではなく、「適切でないものを選べ」という問題です。初期の頃の介護福祉士試験では、あったパターンなんですが、近年ではみかけなくなりました。このパターンで出題される確率は低いと思いますが、一応頭の片隅に。問題の方は、選択肢4がなれなれしすぎて不快感を与える可能性が高いので、不適切です。
対人援助関係におけるコミュニケーションの基本に関する次の記述のうち、最も適切なものを一つ選びなさい。(第24回介護福祉士国家試験)
1.一方的な意思表示ではない。
2.その人の生き方や経験は反映されない
3.感情の伝達は含まない。
4.情報の伝達を目的としない。
5.人間関係の形成とは関連しない。
正解1
1.コミュニケーションは双方向の意思伝達なので、一方的な意思表示ではないというこの選択肢は正しいです。
2.生き方や経験はコミュニケーションに反映されます。
3.感情の伝達はコミュニケーション含まれます。
4.情報の伝達も目的のひとつです。
5.コミュニケーションによって人間関係は形成されます。
Bさんの父親は認知症があり、同じ話を繰り返す。Bさんが、「同じ話を聞いて疲れる。疲れるのは父親のせいだ。つらいです」と介護職員話した。このときの介護職の、感情の反射を用いた返答として、適切なものを1つ選びなさい。(第25回介護福祉士国家試験)
1.「どんなふうにつらいですか」
2.「つらい気持ちなのですね」
3.「うまくいってないですね」
4.「つらい気持ちは怒りみたいなものですね」
5.「あなたが話していることは、お父さんに対するつらさですね」
正解2
感情の反射とは、言葉のなかに含まれている相手の気持ちを受け止め、その気持ちを相手に言葉で伝え返すことです。
気持ちを伝え返しているのは2のみです。
自己覚知のために、最も重視するものを一つ選びなさい。(第26回介護福祉士国家試験)
1.自分の感情の動きとその背景を洞察する。
2.自分の将来の目標を設定する。
3.自分中心ではなく、他者中心に考える。
4.自分を肯定的にとらえる。
5.自分の価値観に基づいて行動する。
正解1
自己覚知とは自分の価値観や感情を客観的に理解することであるから選択肢4、5は適切ではありません。
また、自己覚知は、選択肢3のように他者中心に考えるのでもなく、あくまで、自分が自分のことを客観的に理解することが重要です。例えば、「利用者のこういう反応に自分はイライラするのか」と冷静に自分自身を観察することです。
選択肢2は自己覚知のために重視されるものではありません。
Bさん(85歳、女性)は、認知症である。ショートステイを一週間利用することになった。1日目の夕方、介護職が忙しい時間帯に、Bさんは何回も、「私はここにいていいの」と繰り返し尋ねた。介護職の最初の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第26回介護福祉士国家試験)
1.「どこに行きたいのですか」
2.「後からゆっくり聞きますね」
3.「同じことを何度も聞かないでください」
4.「ここにいてくださっていいですよ」
5.「ここにじっとしていてください」
正解4
Bさんは利用初日でサービスに慣れておらず、不安な様子なので、不安を軽減するような声掛けが必要です。選択肢1~5の中で最も適切なのは4です。
ラポールの形成の初期段階の関りとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第27回介護福祉士国家試験)
1.利用者の感情に関心を持つ。
2.利用者の家庭環境を詳しく聞く。
3.介護福祉職が詳しく自己紹介する。
4.黙って聞くことに徹する。
5.「なぜ」で始まる質問を繰り返す。
正解1
ラポールとは互いに信頼し合い、心理的距離が縮まり、感情の交流を行うことができる状態をいいます。ラポールを形成するために共感と受容の態度で接することが大切です。
ラポール形成の初期段階は“援助者と利用者との間に信頼関係を築くこと”です。
1.相手に関心がなければ、信頼関係を築くこともできないので、これはよさそうです。
2.信頼関係が構築された後でなら問題ないですが、ラポール形成の初期段階で、いきなり家庭環境を詳細に聞かれると、不信感につながるリスクがあるので、不適切です
3. ラポール形成の初期段階で、援助者の自己紹介や役割を伝えることは大切ですが、いきなり詳しく自己紹介する必要はありません。簡単な自己紹介にとどめておくほうが無難です。
4. 受容、共感してもらえていると利用者が感じられるように、適宜うなずきや相槌が必要なので、適切ではありません。
5.これは受容的、共感的態度ではないので不適切です。
共感的態度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.利用者に対して審判的態度で関わる。
2.利用者の感情をその人の立場になって理解して関わる。
3.利用者と自分の感情を区別せず、同調して関わる。
4.利用者の感情に共鳴して、同情的に関わる。
5.利用者が示す否定的な感情を避けて関わる。
正解2
1.利用者を審判するような態度は共感的とは言えません。
2.これは適切です。
3.同調は、利用者の感情とか考えなどをあまり考えずに、調子を合わせる感じで、共感的態度とは違うので×です。
4.同情的な態度は憐みを向けることであり、その人の立場に立って理解する共感とは異なります。
5. 避けずに受容して関わることが大切です。
Bさんは、パーキンソン病で、要介護3である。車いすを使用しているが、自分では移動できない。声が小さく、聞き取りにくい。難聴はない。食堂にいたBさんが、10mほど離れた窓の方向を指して何か言ったが、少し離れた場所にいた介護職員には聞こえなかった。そのときの介護職員の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.Bさんのそばに行き、何も言わずにBさんの口元に耳を近づける。
2.Bさんのそばに行き、もう一度話すように依頼する。
3.その場所からBさんに、大きな声で話すように促す。
4.その場所からBさんに、聞こえないと伝える。
5.Bさんを窓のところに案内する。
正解2
1.無言で他人の顔が口元に近づいてきたら怖いので不適切です。
2.これはよさそうです。
3.Bさんは声が小さいと書いてあるのに、この対応は不適切です。
4.Bさんの話を聞く気がないというように感じられるので、×です。
5.窓の方向を指さしただけで、窓のところに行きたいのかどうか聞いてみないとわかりません。
自己開示に関する次の記述のうち、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)
1.相手に自分のことを良く思ってもらうために行う。
2.初対面の人には、できるだけ多くの情報を開示しながら行う。
3.相手の情報を強制的に引き出すために行う。
4.良好な人間関係を築くために行う。
5.ジョハリの窓(Johari Window)の「開放された部分」(open area)を狭くするために行う。
正解4
1. 自己開示とは、自分自身に関する情報を相手に伝えることであり、自分のことを良く思ってもらうためというよりも、お互いの理解を深めていくために行うものなので×です。なので選択肢3も×です。
2.できるだけ多くではなく、相手との関係を考慮して行います。親しくない相手に対して自己開始しすぎると、関係がうまくいかなくなってしまう場合もあります。
4.これは適切です。
5.ジョハリの窓は自己理解のズレに気づくためのフレームワーク(手法)の1つです。自己理解のズレを一致させていく、つまり開放の窓を大きくして、未知の窓を小さくすることで他人とのコミュニケーションを円滑にできると考えられています。
参考)➡ ジョハリの窓
Bさん(60 歳、男性)は、先天的に耳が聞こえないろう者である。ろう学校入学以後、同じ障害のある仲間とのコミュニケーションが心の支えになってきた。数年前に緑内障(glaucoma)を発症して視覚障害が残り、両眼とも外界の明暗が分かる程度の視力となった。
Bさんと円滑なコミュニケーションをとるときの手段として、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)
1.触手話
2.筆談
3.点字
4.透明文字盤
5.携帯用会話補助装置
正解1
1. 触手話とは、視覚と聴覚のどちらにも障害のある人が用いるコミュニケーション手段です。話し手が手話を使い、聞き手は話し手の手に触れて手の形を把握して手話を行うコミュニケーションです。これが正解です。
筆談と透明文字盤は外界の明暗が分かる程度の視力では使えないと考えられるので選択肢2、4は×です。ちなみに透明文字版は↓、
出典 看護roo!
透明板に五十音表を記入して、発信者と受信者が文字盤を挟んで向かい合い、メッセージを1文字ずつ伝えて、読みとっていくきます。 話し手(要介護者)と聞き手(介護者)は正面に向き合って、目線が一直線になった文字や単語が言いたい言葉になります。
3. 以前は視力に問題のなかったBさんが点字を習得しているとは考えにくいので×です。
5. 携帯用会話補助装置はキーボードなどから文字を入力していく必要があり、Bさんの現在の視力では、キーボードの文字を識別するのは難しいと考えらるので×です。
利用者との関係を構築するためのコミュニケーションの基本として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.聞き手に徹する。
2.声の高低や抑揚を一定に保つ。
3.身振りや手振りは最小限にする。
4.介護福祉職の主観を基準にする。
5.利用者の生活史を尊重する。
正解5
1. コミュニケーションの基本は双方向の意思伝達です。聞き手に徹する場面でも、ただ聞くのではなく、うなずいたり、相づちをうったり、傾聴することが大切なので、適切ではありません
2. 抑揚を一定に保つよりも、相手の気持ちに沿えるよう、適切に感情を表に出すことが必要です。
3. 身振りや手振りは、介護福祉職が意図を正確に伝達したりする上で必要です。特に高齢者は耳が遠い場合が多いので、身振りや手ぶりは大切です。
4. 介護福祉職の主観を基準にしてしまうと、先入観や思い込みが生じてしまい、利用者のニーズがみえなくなる可能性があるので、不適切です。
5.これは正しいです。
Oさん(87歳、女性)は、介護老人保健施設に入所している。
最近、Cさんがレクリエーション活動を休むことが多くなったので、担当のD介護福祉職はCさんに話を聞いた。Cさんは、「参加したい気持ちはあるので、次回は参加します」と言いながらも、浮かない表情をしていた。D介護福祉職は、「自分の気持ちを我慢しなくてもいいですよ」 とCさんに言った。
この時のD介護福祉職の言葉かけに該当するバイステック(Biestek, F.)の7原則の内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.秘密保持
2.自己決定
3.非審判的態度
4.意図的な感情表出
5.個別化
Bさん(90歳、男性)は、介護老人福祉施設に入所することになった。一人暮らしが長かったBさんは、入所当日、人と会話することに戸惑っている様子で、自分から話そうとはしなかった。介護福祉職は、Bさんとコミュニケーションをとるとき、一方的な働きかけにならないように、あいづちを打ちながらBさんの発話を引き出すように心がけた。
このときの介護福祉職の対応の意図に当てはまるものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第31回介護福祉士国家試験)
1.双方向のやり取り
2.感覚機能低下への配慮
3.生活史の尊重
4.認知機能の改善
5.互いの自己開示
正解1
選択肢3を選んでしまう人も多かったのではないでしょうか。
問題のポイントは、
- 介護福祉職の対応の意図に当てはまるもの
- 一方的な働きかけにならないように、あいづちを打ちながらBさんの発話を引き出すように心がけた。
であり、最も適当なものは選択肢1です。
聴覚障害のある利用者と介護福祉職との間での筆談に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第31回介護福祉士国家試験)
1.中途失聴者が用いることは少ない。
2.空中に字を書くことは控える。
3.多人数での双方向のコミュニケーションに用いる。
4.図や絵よりも文字を多用する。
5.キーワードを活用して内容を伝達する。
正解5
1.筆談は聴力を失って間もない中途失聴者とのコミュニケーションに有効な手段なので×です。
2.空書は指で空中に字を書くことで、補足的に空書を使うことも有効です。
3.筆談は多人数での双方向のコミュニケーションには不向きです。
4.図や絵の方が一度に多くの情報を伝達することができるので、 文字は必要最小限にし、図や絵を活用することは有効です。
5.いくつかの事柄が関係する複雑な内容については、手話などと併せて、要点やキーワードを書き示すことは有効です。
他者とのコミュニケーションを通した自己覚知として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第32回介護福祉士国家試験)
1.自己の弱みより強みを重視する。
2.自己の感情の動きとその背景を洞察する。
3.自己の行動を主観的に分析する。
4.自己の私生活を打ち明ける。
5.自己の価値観を他者に合わせる。
正解2
自己覚知とは自分の思想や価値観、感情などについて、客観的に理解することを言います。援助者が自分の価値観や感情などに左右されると、誤った支援をしてしまうこともあるため、自己覚知が必要になります。
人間関係における役割葛藤の例として、適切なものを1つ選びなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
1 就労継続支援B型の利用者が、生活支援員の期待に応えようとして作業態度をまねる。
2 家族介護者が、仕事と介護の両立への期待に応えられるかどうか悩む。
3 通所介護(デイサービス)の利用者が、レクリエーションを楽しんでいる利用者の役を演じる。
4 就労移行支援の利用者が、採用面接の模擬訓練中にふざけて冗談を言ってしまう。
5 高齢者が、家事を行う家族に代わり、孫の遊び相手の役割を担う。
正解2
役割葛藤の意味ははそのままで、役割に葛藤することです。
例えば、子どもが、父親からスポーツに力を入れること、母親から勉強に力を入れることをそれぞれ期待されて、葛藤するとか
一人親が仕事と子育ての役割の間で葛藤することなどです。
葛藤しているのは、選択肢2です。
Bさん(80歳、男性)は、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用しながら自宅で一人暮らしをしている。最近、自宅で転倒してから、一人で生活していくことに不安を持つこともある。訪問介護員(ホームヘルパー)がBさんに、「お一人での生活は大丈夫ですか。何か困っていることはありませんか」と尋ねたところ、Bさんは、「大丈夫」と不安そうな表情で答えた。Bさんが伝えようとしたメッセージに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
1 言語メッセージと同じ内容を非言語メッセージで強調している。
2 言語で伝えた内容を非言語メッセージで補強している。
3 言語の代わりに非言語だけを用いてメッセージを伝えている。
4 言語メッセージと矛盾する内容を非言語メッセージで伝えている。
5 非言語メッセージを用いて言葉の流れを調整している。
正解4
言語的メッセージ
文章や会話など、言葉で伝えるメッセージ
非言語メッセージ
救急車のサイレンの音やジェスチャー、表情など言葉によらないメッセージ
Bさんは、「大丈夫」と不安そうな表情で答えたとあり、言語メッセージは【大丈夫】、非言語メッセージは【不安そうな表情】ということになり、言語メッセージと矛盾する内容を非言語メッセージで伝えているので選択肢4が正解です。
介護福祉職はBさんから、「認知症の母の介護がなぜかうまくいかない。深夜に徘徊するので、心身共に疲れてきた」と相談された。介護福祉職は、「落ち込んでいてはダメですよ。元気を出して頑張ってください」とBさんに言った。後日、介護福祉職はBさんに対する自身の発言を振り返り、不適切だったと反省した。介護福祉職はBさんに対してどのような返答をすればよかったのか、最も適切なものを1つ選びなさい。(第34回介護福祉士国家試験)
1.「お母さんに施設へ入所してもらうことを検討してはどうですか」
2.「私も疲れているので、よくわかります」
3.「認知症の方を介護しているご家族は、皆さん疲れていますよ」
4.「近所の人に助けてもらえるように、私から言っておきます」
5.「お母さんのために頑張ってきたんですね」
正解5
Bさんのこれまでの介護の努力を認め、介護福祉職に分かってもらえているという安心感をBさんに与える返答であり、適切です。
1.Bさんが母親の施設入所を望んでいるのか、またそれが適切な時期であるかがわかりません。無理に提案するとBさんを圧迫することになる可能性があり、適切ではありません。
2.一見、共感を示そうとしていますが、介護福祉職とBさんとの疲労の程度や原因が異なるため、実際には共感とは言えません。
3.この返答では、Bさんに「疲れても仕方がない」と受け止められる可能性があります。また、Bさんの個別の状況や感情を尊重していない感じさせてしまう可能性もあり、適切ではありません。
4.Bさんが近所の人々の協力を望んでいるか、またはそのような協力が適切であるかは不明で、さらに、この提案はBさんのプライバシーを侵害する可能性があります。
利用者とのコミュニケーション場面で、介護福祉職が行う自己開示の目的として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第34回介護福祉士国家試験)
1.ジョハリの窓の「開放された部分」を狭くするために行う。
2.利用者との信頼関係を形成するために行う。
3.利用者が自分自身の情報を開示するために行う。
4.利用者との信頼関係を評価するために行う。
5.自己を深く分析し、客観的に理解するために行う。
正解2
自己開示は自分自身に関する情報を、自分の意思により、強制されることなく、他者に話し、伝えることです。
積極的に自己開示をすると、自分がどんな人間かを相手に理解してもらえるので、好感や信頼感をもってもらえます。ただし、初対面の人にひたすら自分のことを話まくると逆に警戒感などを持たれることもあるので、相手との関係性に応じて徐々に自己開示していくことが大事です。
1.ジョハリの窓は自己理解のズレに気づくためのフレームワーク(手法)の1つです。自己理解のズレを一致させていく、つまり開放の窓を大きくして、未知の窓を小さくすることで他人とのコミュニケーションを円滑にできると考えられています。
参考)➡ジョハリの窓
3.自己開示は利用者が自分自身の情報を開示するために行うのではありません。介護福祉職自身の情報を開示することで、利用者との信頼関係を構築するためです。
4.利用者との信頼関係を評価するために行うのではなく、信頼関係を形成するために行われます。
5.自己を深く分析し、客観的に理解するために行う。というのは自己開示ではなく、自己覚知です。
介護老人福祉施設は、利用者とその家族、地域住民等との交流を目的とした夏祭りを開催した。夏祭りには、予想を超えた来客があり、「違法駐車が邪魔で困る」という苦情が近隣の住民から寄せられた。そこで、次の夏祭りの運営上の改善に向けて職員間で話し合い、対応案を作成した。次の対応案のうち、PDCAサイクルのアクション(Action)に当たるものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第35回介護福祉士国家試験)
1.近隣への騒音の影響について調べる。
2.苦情を寄せた住民に話を聞きに行く。
3.夏祭りの感想を利用者から聞く。
4.来客者用の駐車スペースを確保する。
5.周辺の交通量を調べる。
正解4
PDCAは、
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)
このサイクルを繰り返し回すことで、業務の改善を目指す方法です。選択肢4は改善して実行している内容となっているため適切です。
1.これは問題の詳細な理解を得るための情報収集と考えることができます。そのため、Planのフェーズとして解釈することができます。また、実施された夏祭りという活動の影響を検証する行為ともとれるので、Checkとも考えられます。
2.これは具体的な苦情の内容や理由を理解するための活動です。これも問題の詳細な理解を目的としているため、Planのフェーズとして解釈することができます。また、夏祭りに関する実際のフィードバックや評価を直接聞くことで、夏祭りの影響や実施の適切さを検証するものともとれるので、Checkと考えることもできます。
3.利用者の感想を知ることで、夏祭りがどのように受け取られているのかを知ることができ、これをもとに次回の改善策を考えるための情報として使うことができます。なのでPlanのフェーズとして解釈することができます。また、利用者からの感想を収集することは、施設が提供したサービスやイベントがどのように受け取られたのか、またどのような影響を持ったのかを確認する行為と言えます。したがって、夏祭りの実施を検証するCheckのフェーズに該当すると考えることもできます。
5.駐車場の必要性やサイズなど、計画を作るための情報収集と考えるとPlanのフェーズととれます。また、夏祭りが終わった後で「周辺の交通量を調べる」とみると、夏祭りが近隣の交通状況にどのような影響を与えたかを検証するCheckのフェーズと解釈することもできます。
D介護福祉職は、利用者に対して行っている移乗の介護がうまくできず、技術向上を目的としたOJTを希望している。次のうち、 D介護福祉職に対して行うOJTとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第35回介護福祉士国家試験)
1.専門書の購入を勧める。
2.外部研修の受講を提案する。
3.先輩職員が移乗の介護に同行して指導する。
4.職場外の専門家に相談するように助言する。
5.苦手な移乗の介護は控えるように指示する。
正解3
OJTはOn-the-Job Trainingの略で、職場での実践を通じて業務知識を身につける育成手法のことです。職場での実践を通じての指導は選択肢3以外ありません。
ちなみに選択肢2のような研修をOff-JTといいます。
Off-The-Job Trainingの略で、新入社員研修や管理職研修、また個別のスキルを高めるための研修など、実務の場を離れて行う教育施策のことです。
「コミュニケーション技術」の過去問
バイステックの7原則を介護場面に適用したときの記述として、適切なものを1つ選びなさい。(第27回介護福祉士国家試問)
1.「個別化」とは、利用者に具体的な指示を出すことである。
2.「意図的な感情表出」とは、介護福祉職の感情表出を大切にすることである。
3.「統制された情緒的関与」とは、利用者の感情をコントロールしてかかわることである。
4.「受容」とは、利用者の同意を得ることである。
5.「非審判的態度」とは、介護福祉職の価値観で評価せずに利用者にかかわることである。
正解5
参考テキスト⇒バイステックの7原則
1.個別化とは、利用者の抱える困難や問題は、どれだけ似たようなものであっても、人それぞれの問題であり同じ問題は存在しないとする考え方です。援助者の主観で人格や環境を決め付けず、利用者を個人としてとらえるようにします。
2.意図的な感情表出とは、利用者が自由に自分の感情や考えについて表現できるように工夫することです。
3.援助者自身の感情のコントロールのことです。
4.利用者の同意ではなく、援助者が利用者の性格や行動傾向を受け入れ、共感的な姿勢で対応することです。
介護福祉職が利用者とコミュニケーションを図るときの基本として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第27回介護福祉士国家試験)
1.緊張感が伝わるように、背筋を伸ばして接する。
2.愛称で呼んで心理的距離を近づける。
3.自分の意見と違っても賛同する。
4.利用者の言葉に感情的に反応する。
5.利用者の主観的な訴えに耳を傾ける。
正解5
「主観的」という言葉は、個人の感情や考え、体験に基づいた見方や判断を意味します。つまり、客観的な事実や共通の基準ではなく、あくまでその人自身の視点や感じ方によるものです。
例えば、映画を見た時に、「面白い」と感じるか「つまらない」と感じるかは、見る人の「主観」によります。同じ映画を見ても、人によって評価が異なるのは、それぞれの人が持っている好みや経験、感情などの「主観的」な要素によるためです。
「主観的」をもっと簡単に言うと、「自分だけの考え」とか「個人的な感じ方」という意味になります。
介護福祉職として利用者とのコミュニケーションを取る上で基本となるのは、利用者の話を注意深く聞き、その人の気持ちや考えを理解しようとする姿勢であり、利用者の主観的な話に耳を傾けることは重要です。
1.リラックスし、安心してコミュニケーションをとれるような環境を作ることが大切です。
2.利用者を愛称で呼ぶのは基本的にNGです。理由は、
- 家族が不快に思う可能性がある。
- 他入居者がえこひいきを感じる可能性がある。
などがあります。
3.介護福祉職は、利用者が自分と異なる意見を述べた場合、その意見に理解を示しつつも専門職として必要なことは伝えなければなりません。例えば、「リハビリなんてやっても効果がない」「こんな薬飲んでも効かない」などと利用者が言っているような場合です。
4.介護福祉職は“感情のコントロール”(統制された情緒)が必要であり、利用者の言葉に感情的にならないようにする必要があります。
利用者と家族が対立しているとき、介護福祉職の初期の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第27回介護福祉士国家試験)
1.両者がそれぞれの思いを語り合う場をつくる。
2.どちらが正しいか、専門職としての判断を伝える。
3.ほかの家族の解決例を紹介する。
4.利用者の判断が間違っている場合、家族の判断を支持する。
5.専門職としての役割を果たすために、責任をもって一人で対応する。
正解1
2.介護福祉職は、利用者とその家族が対立した場合、双方の意見を聞き、中立的な立場で意見の調整を図る必要があります。
3.利用者とその家族が対立した初期の段階では、双方の意見を聴く必要があります。利用者やその家族についても個別的にとらえることが重要であり、初期の段階で他の家族の解決例を示しても、利用者やその家族から反感をかう恐れがあります。
4.介護福祉職はどちらか一方を支持するのではなく、中立的な立場で意見を調整する必要があります。利用者の判断が明らかに間違っている場合は、家族を支持するのではなく、利用者の判断を修正していくことが望ましいです。
5.一人で対応することが責任ではなく、利用者と家族の問題を調整するために、他の専門職や関係機関と連携してよりよい解決を目指すのがプロです。
Hさん(80歳、女性)は、介護老人福祉施設に入所している。アルツハイマー型認知症と診断されており、複数の話題や複雑な内容を理解することは困難である。いつも同じ話を繰り返している。Hさんが同じ話を繰り返すときの介護福祉職のかかわり方として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第27回介護福祉士国家試験)
1.時間の流れに沿って、話すように伝える。
2.新しい話題を提供する。
3.話の内容に沿った会話をする。
4.ゆっくり、はっきり話すように伝える。
5.途中で話を中断する。
正解3
1.認知症の中核症状に見当識障害があり、時間の流れにそって話すことが困難になります。
2.新しい話題というのが、最近のニュースのようなものの場合、理解できない可能性があるだけでなく、自分の話を中断されたことに疎外感や不安感を感じる場合もあります。ただ、話を切り替えるという意味合いならば、うまくいくこともあるので、100%この選択肢が間違いであるとは言いにくいですが、選択肢3の方がベターです。
3.認知症対応では利用者の主観を大切にするということが重要です。
4.アルツハイマー型認知症がある利用者に対しては、コミュニケーション意欲の維持・向上を図ることが大切であり、話す内容や話し方を修正させるような対応は不適切です。
5.利用者の話を途中で中断することは、利用者に疎外感や不安感を与える可能性があります。
行動・心理症状(BPSD)のある認知症の人への介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第27回介護福祉士国家試験)
1.「何もやる気がしない」に対して、励ます。
2.「失敗しそうで怖い」に対して、かかわりを少なくする。
3.「財布を盗まれた」に対して、利用者と話し合う。
4.「亡くなった人が立っている。」に対して、受容する。
5.「夫が呼んでいるので家に帰りたい」に対して、帰らないように指示する。
正解4
1.励ますのではなく、その気持ちに共感的な理解を示すことが大切です。
2.かかわりを少なくするのではなく、その気持ちに共感的な理解を示し、安心できる環境を提供することが大切です。
3.話し合うのではなく、まずは利用者の主観を受容することが大切です。
5.施設に入所した場合など、しばらくは慣れない環境で帰宅願望がでることは少なくありません。帰らないように指示するのではなく、その気持ちに共感的な理解を示しつつ、話題を変えるなどの対応により、利用者の気持ちが落ち着くように働きかけることが大切です。
介護福祉職が行う報告に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第27回介護福祉士国家試験)
1.状況を詳細に述べてから結論を報告する。
2.自分の主観的意見を中心に報告する。
3.報告の内容にかかわらず、報告のタイミングは上司の都合に合わせる。
4.指示を受けた仕事の報告は、指示者へ行う。
5.抽象的な表現に整理して報告する。
正解4
1.まず結論を報告した後で、状況の詳細を説明します。
2.客観的な事実を正確に伝える必要があります。
3.利用者の急変など、緊急に報告しなければならない内容もあります。
4.仕事の指示を受けた場合、その報告は指示者に対して行うことが基本です。
5.抽象的な表現ではなく、客観的、具体的な事実を5W1Hに沿って正確かつ簡潔に伝えます。
※5W1Hは、when(いつ)where(どこで)who(だれが)what(何を)why(なぜ)how(どのように)です。
次の事例を読んで、A、Bの設問に答えよ。(第27回介護福祉士国家試験)
【事例】
J介護福祉職は介護老人福祉施設で勤務して1年目である。担当利用者Kさんの家族が面会に来た時に、「衣服が散らかっているから整理してほしい」と言われた。J介護福祉職は自分の判断で衣服の整理を行った。その1週間後、Kさんの家族から、「まだ十分に整理できていない」と苦情を受けた。J介護福祉職にとっては初めての苦情であった。J介護福祉職は上司に報告した。
【A】 J介護福祉職が上司に報告する内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.Kさんの最近の日常生活のこと
2.衣服の整理の仕方に問題がないこと
3.自分が責任をもって苦情処理をすること
4.苦情を受け、まだ解決していないこと
5.衣服の散乱は、Kさんの認知症の悪化が原因だということ
正解4
1.利用者の近況を報告しても問題解決になりません。
2.衣類の整理の仕方に問題ないとしても、実際に家族から苦情がきているので、その事実を報告しなければなりません。
3.まずは上司が現状の問題を正確に把握できるように状況を報告しなければなりません。
5.利用者の家族からの要望を受け、その要望が満たされず、苦情につながったという事実を報告しなければなりません。
【B】 その後、J介護福祉職は上司に、家族への対応方法について相談した。上司のJ介護福祉職への助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.「家族の指摘は気にしないでいいですよ」
2.「家族とKさんが一緒に衣服の整理をするように伝えたらどうですか」
3.「家族に衣服の数を減らすように助言したらどうですか」
4.「私に相談する前に自分で考えてください」
5.「私と一緒に考えましょう」
正解5
選択肢1、4は明らかに不適切です。
選択肢2、3.家族の要望は職員に散らかった衣類を整理してほしいということなので、この助言では解決しません。
5.指示するだけではなく、一緒に考えることでJ介護職員のスキルアップにもつながります。
傾聴の技法として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.最初に客観的事実を確認してから聴く。
2.相手の言葉を妨げないで、じっくり聴く。
3.相手の目をじっと見つめながら聴く。
4.早い動きでうなずきながら聴く。
5.解決策を提案しながら聴く。
正解2
1.認知症の影響などで、事実と異なることを本当のことと思い話している場合もあります。相手の思いや考えといった主観的な側面も重視する必要があります。
3.じっと目を見続けられたらどうでしょうか。
4.相手も落ち着かず、ちゃんと話を聴いてもらえていないのではという疑いを抱かせてしまう可能性があります。傾聴ではゆっくりとうなずき、しっかりと聴いているということを相手に示すことが大切です。
5.支援者側が途中で提案をいれると、支援者側のペースで話が進んでしまう場合があり、相手が本当に伝えたい内容が隠れてしまう可能性があります。
Jさん(82歳、女性)は、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で暮らしている。Jさんは朝食を済ませていたが、また朝食の準備を始めた。他の利用者が「さっき食べたでしょう」と言うと、Jさんは「まだです。今起きたばかりです」と答えた。このときのJさんに対する介護福祉職の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.「おなかがすきましたか」
2.「さっき、食べたばかりですよ」
3.「後片付けまで終わりましたよ」
4.「もう一回食べるのですか」
5.「食事より掃除をしませんか」
正解1
Jさんにとっては“朝食を食べていない”というのが事実です。認知症対応の基本はその人の主観を大事にすることなので、否定的な言葉かけである選択肢2,3,4は不適切です。5はJさんにとっては「食事せずに掃除しなければいけないの??」という感じで適切ではありません。
Kさん(72歳、女性)はアルツハイマー型認知症である。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で暮らしているが、いつも「夫に迷惑をかけて申し訳ない」と言っている。ある日、面会に来た夫に対して、「いつもお世話様です」とあいさつしながら、誰なのかわからないで不安そうな様子であった。Kさんへの介護福祉職の最初の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.「誰でしょうか、覚えていますか」
2.「顔は覚えているけど、名前を忘れたのですね」
3.「頑張って思い出してみましょう」
4.「ご主人ですよ。来てもらってよかったですね」
5.「迷惑をかけて申し訳ないと伝えましょう」
正解4
認知症の中核症状の一つである見当識障害のために夫が誰なのかわからなくなっており、がんばっても思い出すのは難しい。選択肢1,3は不適切です。特に1は試すような言葉かけで、自尊心を傷つけるのでより不適切です。選択肢2は、誰なのかわからないというKさんの不安解消につながりません。選択肢5は「誰にも迷惑はかかっていませんよ」と安心してもらうのが適切な言葉かけであって。謝らせようとする行為は不適切です。
Lさん(70歳、男性)は、脳梗塞の後遺症で聴覚的理解と視覚的理解の障害があるが、発語はできる。日常会話で使用する単語は理解できるが、うまくコミュニケーションをとれないことが多い。介護福祉職が「あしたは晴れですね。あしたの午後散歩に行きましょう」と伝えると、Lさんは話の内容がわからない様子である。Lさんが理解できるようなかかわり方として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.もう一度、低い声で同じ言葉を伝える。
2.もう一度、大きな声で同じ言葉を伝える。
3.「あした、散歩」と短い言葉で伝える。
4.「あした、さんぽ」とひらがなで書いて伝える。
5.言葉を1音ずつに区切って、「あ・し・た・さ・ん・ぽ」と伝える。
正解3
1,2.加齢による老人性難聴には“高音域が聞き取りにくくなる”という特徴があるので、低い声で伝える効果はあるが、Lさんは難聴ではなく、聞き取りにくくて話の内容がわからないわけではありません。
4 視覚的理解に障害のある人は、通常使われている漢字よりも、ひらがなを読むことのほうが難しい場合があります。
5 かえってわかりづらい。
Mさん(72歳、女性)は、介護老人保健施設に入所している。糖尿病性網膜症で、3か月前に右目を失明した。左目はかすかに見える状態である。聴覚機能、言語機能、認知機能に問題はない。Mさんへの介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.Mさんの右側から話しかける。
2.Mさんの体に触れてから挨拶する。
3.物音を立てないように関わる。
4.「あそこ」「これ」と代名詞で説明する。
5.視覚情報は整理して口頭で伝える。
正解5
1.見えない側の右側から話しかけると、急に声だけ入ってきて、驚かせることになります。
2.無言で体に触れられるとどうであろうか。
3.聴覚、認知機能に問題がないので、物音一つないコミュニケーションはかえって不安になります。
4.聴覚、認知機能に問題がないので、視覚情報を整理して具体的にわかりやすく説明するのが適切です。
箱型補聴器を使用する利用者と介護福祉職のコミュニケーションに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.介護福祉職は、イヤホンを装着した耳に向かって話しかける。
2.介護福祉職は、できるだけ大声で話す。
3.利用者は、比較的聞こえる側の耳にイヤホンを装着する。
4.利用者は、箱型補聴器を会話の時に限って使用する。
5.利用者は、雑音の多い場所では箱型補聴器の音量を上げる。
正解3
1、2.箱型補聴器の集音機能は箱部分(本体)にあります。正面から普通の大きさでゆっくり話しかけるのが適切です。
4.活動しているときは常に使用するのが基本です。
5.補聴器の音量自体を上げると雑音も大きくなってしまいます。なので箱型補聴器の音量を下げ、補聴器本体のマイクに話しかけてもらうようにします。ただ、最近のものは雑音抑制機能もついている場合も多く、会話以外の音は雑音と認識し、自動的に抑制することが可能です。その場合は、音量は常にその人の聴力に応じたものに調整しておく必要があります。
介護記録に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第28回介護福祉士国家試験)
1.介護福祉職の意見を中心に記録する。
2.調査・研究目的で記録を利用することは避ける。
3.記録は非言語的コミュニケーションのツールとして活用する。
4.利用者と家族は記録を閲覧することができる。
5.介護保険法では記録の様式を統一している。
正解4
1.介護記録は介護福祉職の意見ではなく、客観的に利用者の状況を中心に記録する必要があります。
2.記録には調査・研究目的も含まれます。
3.基本的に言語的コミュニケーションのツールとして活用できます(記録を見ながら職員間での話し合い等)
5.介護保険法では、記録の様式を統一させるという規定はありません。
コミュニケーション技術の基本に関する次の記述のうち、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)
1.言葉だけではなく、表情やしぐさにも注意しながら聞く。
2.理解できない話には、反応をせずに沈黙する。
3.利用者の発言が正しいかどうかを、評価しながら聞く。
4.介護福祉職が多く発言する方が、良い関係が構築できる。
5.利用者と家族の意見が異なるときは、家族の意見を優先する。
正解1
2.相手が不快感を覚える可能性があります。コミュニケーションは双方向のやり取りであるため、理解できない場合でも「~の部分がよく理解できないのですが・・」等、適切なフィードバックをすることが大切です。
3.評価するという姿勢が相手に対する敬意を欠く可能性があります。相手の発言を尊重し、オープンな心で聞くことが求められます。
4.利用者が自分の気持ちや考えを開示できるように、介護職はできるだけ聞き手に回るほうがよい。
5.家族と利用者の意向が異なる場合、常にどちらかを優先させるのではなく、できる限り両者の意向を調整することが大切です。
Gさん(38 歳、女性)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で、居宅介護を利用して、排泄と入浴の支援を受けながら、日中は車いすで過ごしている。同居の母親も要介護4で、訪問介護(ホームヘルプサービス)と通所介護(デイサービス)を利用しており、定年退職した父親が家事と二人の介護をしている。
ある日、H介護福祉職の前でGさんが、「最近、父親が体調不良でつらそうで…」「私が一人暮らしをした方が父も楽になるんだけど、だめだと言うし…」と言った。
Gさんに共感を示すH介護福祉職の対応として、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)
1.父親の気持ちを想像してみるように助言する。
2.Gさんの話に応えながら、気持ちを確認する。
3.障害者の一人暮らしに関する情報を提供する。
4.これからの生活について、自己決定を促す。
5.前向きな話題を出して、Gさんの気持ちを切り替えてもらう。
正解2
これは共感を示し、Gさんの感情を理解しようとする適切なアプローチです。
1.これはGさんに共感を示すものではなく、父親の立場に立って考えることを促しているので、適当ではありません。
3.これはGさんの感情に直接共感を示すものではなく、具体的な情報提供に焦点を当てています。情報を提供するよりも、Gさんの話を傾聴し、気持ちを理解していくことが必要な段階です。
4.これからの生活について自分自身で決めてください、と自己決定を促すのは共感を示す対応ではありません。Gさん自身の生活について決定を促す前に、Gさんの気持ちや考えを理解していくことが必要です。
5.気持ちを切り替えろということは、Gさんの現在の感情に対して共感を示していません。また、Gさんが直面している問題に対処することを避けているようにもとれます。
重度の失語症(aphasia)のある人とのコミュニケーションの方法として、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)
1.五十音表を見せて、指でさしてもらう。
2.口を大きく開けて、声を出すように促す。
3.重度障害者用意思伝達装置を使う。
4.単語をひらがなで書いてもらう。
5.いくつかの絵の中から選んで、指でさしてもらう。
正解5
1.重度の失語症の場合、文字の識別も困難な可能性があるため、適当ではありません。
2.失語症では頭の中のイメージを言葉にするような、言語の処理機能に障害があるため、単純に声を出すよう促してもコミュニケーションが改善されるわけではありません。
3.重度障害者用意思伝達装置は、発語や発声が困難な重度の身体障害者が使用するコミュニケーションツールです。視線による入力が可能であるものもあります。問題文には失語症としか書かれていないので、この装置が必要かどうかわかりません。
4.失語症では、”漢字は読めるが、ひらがなが読めない”、”漢字よりひらがなを書く方が難しい”という場合がよくみられます。
5.「聴く」「話す」「読む」「書く」といった言語機能全般にわたる障害の人に対しては、絵や具体的なものを利用してコミュニケーションをとっていく方法があります。
中程度の老人性難聴のある人とのコミュニケーションに関する次の記述のうち、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)
1.補聴器には短期間で慣れると説明する。
2.認知症(dementia)がある場合は、補聴器の使用を避ける。
3.話し手の口元に注目するように促す。
4.耳元で、できるだけ大きな声で話す。
5.後ろから近づいて、静かに話しかける。
正解3
話し手に注目してもらうことで、音声に加えて口の動きや表情などもコミュニケーション手段とすることができます。
1.補聴器は装用訓練を行う必要があり、その人に合わせて徐々に調整していくものなので、慣れるまでの期間には個人差があります。
2.気になってイヤホンをすぐとってしまう等あれば、補聴器を使うのが難しい場合もありますが、問題なければ認知症でも補聴器の使用は可能です。
4.大きな声で話すことは、音量を上げることになるので、一見有効のように思えますが、耳元で大きな声で話すと音が歪んだり、不快に感じることがあります。また、声が大きいと高い周波数の音が増幅されすぎて、かえって聞き取りにくくなることもあります。
5.気づいてもらえない可能性や、高齢者を驚かせてしまう可能性があります。
介護記録をもとにまとめた事例を、地域での多職種による事例検討会で報告する場合の個人情報の取扱いとして、適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)
1.家族情報は匿名化しない。
2.利用者の音声や映像は同意なしに使用できる。
3.利用者の氏名や住所は匿名化する。
4.介護記録のデータは匿名化せずに、電子メールで送受信する。
5.介護記録のデータを保存するときは、誰でも修正ができるようにパスワードは使用しない。
正解3
1.実際の支援チームが行う以外の検討会では、家族や本人が特定できないよう匿名化する必要があります。サービス担当者会議など家族や本人も参加するものは匿名にする必要はありません。
2.利用者の音声や映像を使用する場合は、本人(必要があればその家族)の了解を得てから使用するようにしなければなりません。
4.電子メールは送信ミスや不特定多数の人の目に触れてしまう可能性があります。電子メールを使用する必要がある場合は、データを匿名化します。
5.データの安全性を確保するためには、アクセス制御が必要です。パスワードを設定することで、不正アクセスや不適切な修正を防ぐことができます。
ヒヤリ・ハット報告書に関する次の記述のうち、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第29回介護福祉士国家試験)
1.口頭で報告したことは、報告書に記載しなくてもよい。
2.報告者の責任を追及することを目的とする。
3.介護事故の状況を報告する。
4.管理者以外の職員の目にふれないように保管する。
5.事故報告書とは分けて記載する。
正解5
ヒヤリ・ハット報告書はインシデントリポートともいい、介護現場での事故発生前に、危険な状況や問題が発見された際に用いられる報告書です。事故が起こった後の事故報告書(アクシデントリポート)とはわけて記載する必要があります。
1&4.口頭だけではなく文字で記録し、関係者が情報を共有できるようにします。
2.ヒヤリハット報告書の目的は、事故につながる可能性のある出来事を記録・共有し、事故を未然に防ぐことです。
3.介護事故の状況は事故報告書で行います。
次の事例を読み、後の問ABに答えよ。(第29回介護福祉士国家試験)
〔事 例〕
Jさん(78 歳、女性)は、軽度の認知症(dementia)がある。K訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問した時、Jさんは、K訪問介護員(ホームヘルパー)が前日に準備した夕食を食べていなかった。
Jさんは、不安そうな表情で昨日から食卓にある料理を指さして、「これは私が食べていいの?」「これは誰のもの?」と、K訪問介護員(ホームヘルパー)に尋ねてきた。冷蔵庫の中のお茶を飲んでいただけで、他には何も食べていない様子だった。
【A】食卓にある料理はJさんのものだと説明した後、Jさんに対するK訪問介護員(ホームヘルパー)の声かけとして、最も適切なものを1 つ選びなさい。
1.「なぜ食べなかったのですか」
2.「食べなければだめですよ」
3.「無理してでも食べてください」
4.「一緒に作って食べましょう」
5.「1日に3食は食べましょう」
正解4
具体的な提案がされていて、Jさんが安心して、食事に対してよりポジティブな感情を持つことが期待できるので適切です。
ただ、すでに食事があるのに、「一緒に作って」というのは少し違和感がありますが、明日以降の話と解釈すれば納得できます。他の選択肢がすべて適当ではないので、この選択肢を選びます。
1.この選択肢は、Jさんに対して批判的な印象を与える可能性があります。認知症のある方が食事を摂らない理由は多様で、単純なもの忘れや混乱も含まれます。なので、この問いかけは適切ではありません。
2.K訪問介護員が意識していなくても、「だめ」という言葉を聞いたJさんが「否定された」「怒られた」と感じてしまう可能性があります。
3.無理やり食べさせるような声かけは不適切です。
5.Jさんに食事の重要性を伝える声掛けですが、具体的な対応方法を伝えていません。Jさんが安心して食事ができるような働きかけを行っていくことが大切なので、選択肢4のほうがベターです。
【B】Jさんについてのケアカンファレンス(care conference)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1 つ選びなさい。
1.K訪問介護員(ホームヘルパー)はJさんに対する自分の感想を発言した。
2.K訪問介護員(ホームヘルパー)は支援状況を報告して、参加者に意見を求めた。
3.施設入所の時期について話し合った。
4.支援する関係者が全員参加したので、議事録は作成しなかった。
5.途中退席した参加者には、口頭で結果を伝えた。
正解2
1.ケアカンファレンスの目的は、Jさんに対するより良いケアを行っていくことです。そのためにK訪問介護員が行うことは、感想ではなく客観的な事実を報告し、参加者の意見を求めることです。
3.軽度の認知症であるJさんが在宅で安全かつ快適に生活できるように話し合うことが必要な段階であり、適当ではありません。Jさんが入所を希望しているかどうかもわかりません。
4.ケアカンファレンスでは、必ず議事録を作成します。
5.途中退席した参加者には議事録を読んでもらうようにします。
受容の説明に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.価値観を尊重する。
2.問題行動を否定する。
3.言い分に同調する。
4.感情を分析する。
5.否定的感情を抑圧する。
正解1
受容とは、利用者のありのままの姿を無条件で受け入れることです。
3.同調とは違います。例えば利用者Aさん「(入居者の)Bさんがキライ!」という発言があった時に、職員が「私もキライです!」と応答するのが同調で、これは受容とは異なります。
コミュニケーションがより円滑になるように、開かれた質問をする目的として、 最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.初対面の利用者と会話を始めるときに緊張をほぐすきっかけをつくる。
2.話す気分になれなくて口数が少ない利用者と会話を続ける。
3.漠然としていて伝わらない利用者の考えを明確にする。
4.重度の認知症(dementia) でコミュニケーション能力が低下している利用者から情報を得る。
5.利用者の繰り返す同じ話を一旦止める。
Kさん(75歳、女性)は、脳梗塞(cerebral infarction)を発症して、1か月間入院した後、介護老人保健施設に入所した。Kさんは重度の運動性失語症(motor aphasia) のため、自分から話すことはなかった。
入所して2か月ほど過ぎた頃、Kさんは、少しずつ言葉が話せるようになった。ある日の午後2時頃、介護福祉職に向かって、「お茶、いや、違う、お、お、違う、ええと」 と話し始めたが、伝えたい言葉が見つからないようで、もどかしそうであった。
この時のKさんへの介護福祉職の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.「何を言いたいのでしょうか」
2.「もう1回繰り返してください」
3.「おやつの時間まで待ってください」
4.「何か飲みたいのですね。お水ですか?」
5.「言葉が出てきてよかったですね」
正解4
1.Kさんを焦らせてしまったり、自尊心を傷つけたりしてしまうため、適切とはいえない。
2.自発的に話すことが困難なKさんに、しっかり話すように促す言葉かけは適切とはいえません。
3.Kさんは何を伝えたいのかを理解しようとすることが大切です。おやつのことを話したいのかどうかはわかりません。
4.Kさんが返答しやすいように閉じられた質問を使っており、確認する方法も適切です。
5.「言葉が出てきてよかったですね」は、伝えたい言葉が見つからず、もどかしそうなKさんに対する言葉かけとして適切とはいえない。
抑うつ状態(depressive state)の利用者への介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.元気を出すように言う。
2.沈黙している理由を問いただす。
3.会話を促す。
4.気晴らしに散歩に誘う。
5.見守っていることを伝える。
正解5
~うつ状態の人とのコミュニケーション~
安易に励ましたり、気分転換を強制したりするより、受容的・共感的な対応で安心できる環境を作ることが必要です。性急な変化を求めず、支持的に関わることが大切です。
Lさん(75歳、女性)は、介護老人福祉施設に入所している。中等度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断されて、担当のM介護福祉職(男性)を、既に亡くなった自分の夫であると認識している。何か心配なことがあると、M介護福祉職を探しだして、「お父さん聞いて…」 と不安そうな表情で話してくる。
不安そうな表情で話すLさんへの、M介護福祉職の対応として、最も適切なものを1 つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.女性職員に対応してもらうように伝える。
2.夫は既に亡くなっていることを伝える。
3.Lさんの話に耳を傾ける。
4.おしぼり畳みの軽作業を依頼する。
5.忙しくて手が離せないことを伝える。
正解3
1.Lさんは、M介護福祉職のことを自分の夫と認識して頼っているのであって、女性職員の対応を求めているわけではありません。
2.中等度のアルツハイマー型認知症では理解できない可能性が高い。
4.Lさんが感じている不安の解消にはつながりません。
5.忙しくて手が離せないことを伝えた場合、Lさんは、自分のことを受け入れてもらえないことを察し、不信感や怒りを抱く要因となります。
Aさん(97歳、女性)は、介護老人福祉施設に入所している。最近、衰弱が進んで水も飲めなくなり、「もう、逝ってもいいんだけどね」 とつぶやくことが増えた。 ある日、夜勤の介護福祉職がAさんの様子を確認しようとベッドに近づくと、Aさんが目を開けて、「お迎えはまだかしらね」と穏やかな顔で言った。
Aさんの発言に対する介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.何も考えずに早く寝た方がいいと就寝を促す。
2.Aさんの手を握り、ゆっくりさする。
3.そのような言葉を言ってはいけないと伝える。
4.明日、家族に連絡して来てもらうことを伝える。
5.いつものことだと思って、声をかけずにそのまま部屋を出る。
正解2
1,5. Aさんは、介護福祉職に自身の気持ちを聞いてもらいたいという思いがあって発言したと考えられます。就寝を促すような対応は、Aさんの気持ちを無視した行為です。
2.死期が迫っていることはAさん自身が感じ取っていると思われ、死に対する不安から、 不安定な状態に陥りやすい。そのような場合、言語によるかかわりだけでなく、手を握り、ゆっくりさするなどのスキンシップを用い、寄り添う対応をとることで不安の軽減につながります。
3.死期が迫っていることを感じている人が沈黙せず、訴えかけるということは、話を聞いてもらいたい、受け止めてもらいたいという心情を表していると考えられます。そのような場合は、発言を否定するのではなく、受容・共感の姿勢をもって傾聴することが求められます。
4.問題文からAさんが、家族に会いたいと希望しているかどうかが判断できません。
介護業務の事故報告に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.口頭での報告は、結論を述べてから事故に至る経過を説明する。
2.事故報告書は、管理者以外は閲覧できないように保管する。
3.軽微な事故の場合は、後日報告する。
4.介護福祉職としての判断を除外して報告する。
5.記録した内容は、口頭での報告が不要である。
正解1
2.職員間で事故内容を共有し、再発しないようにすることが重要です。
3.軽微な事故の場合でも、報告は迅速に行うということを徹底することが大切です。
4.報告の際には、客観的事実に加えて、そのことに対する介護福祉職としての判断を含めるように心がける。
5.文書による記録だけでは、伝わりにくいこともあるので、口頭での報告をつけ加えることも必要です。
ブレインストーミングの原則に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第30回介護福祉士国家試験)
1.奇抜な意見を除いて、自由に意見を出す。
2.他人の意見が正しいかどうかをその場で判断する。
3.意見の質よりも、数多くの意見を出すことに価値を置く。
4.他人の意見を参考にしてはいけない。
5.他人の意見を自由に批判する。
正解3
ブレインストーミングとは、集団でアイデアを出し合うことによって相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法です。
ブレインストーミングの4原則
1.アイデアに対して批判・否定をしない
ブレインストーミングでは、参加メンバーが自由なアイデアを出せる場を作ることが大切です。もしも、アイデアを出している途中で他の参加メンバーを批判・否定してしまうと、自由に意見できない雰囲気になったり、他の参加メンバーを萎縮させたりすることにつながります。自分が他人のアイデアに対して間違っていると思ったとしても、客観的視点から、そのアイデアに至った理由を深掘りすることが望ましいです。
2.変わったアイデアを歓迎する
誰もが思いつきそうなアイデアよりも、奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアを重視する。新規性のある発明はたいてい最初は笑いものにされる事が多いが、そこから価値のあるアイデアが生まれることがあります。
3.質より量を重視する
突飛な意見や荒唐無稽な意見であっても、それらを組み合わせるなど工夫することによって、新しいものを生み出せる可能性があります。量より質を重視すると、「他の発言者よりも優れたアイデアを出そう」「採用されるような質の高いアイデアのみを出そう」など、参加メンバーが発言の質にこだわってしまい発言が少なくなるといった事態が考えられます。アイデアの量を優先することで、メンバーが新しいやり方や発想にオープンになり、その結果として出てくるアイデアの質が良くなります。
4.アイデアをまとめる
ブレインストーミングに期待されるメリットの1つに、「参加メンバーから出されたあるアイデアが、他のアイデアの種になる」といったシナジー効果が挙げられます。たとえば、一人が面白いアイデアを出したら、そのアイデアをベースに他の人がさらに良いアイデアを思いつくことがあります。このようにして、一つ一つのアイデアが集まって、より高品質なアイデアが生まれるわけです。また、各アイデアを深掘りしたり改善したりする過程で、新しい視点や方向性が見つかることも多いです。
介護福祉職が行う傾聴に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選 びなさい。(第31回介護福祉士国家試験)
1.利用者が抱いている感情を推察する。
2.利用者が話す内容を介護福祉職の価値観で判断する。
3.対話の話題を介護福祉職の関心で展開する。
4.利用者が体験した客観的事実の把握を目的とする。
5.利用者が沈黙しないように対話する。
正解1
2、3.介護福祉職の価値観や関心で判断するのではなく、利用者の話す内容のありのままを受容することです。
4.利用者の主観的な気持ちを受け止める、理解することが傾聴の目的です。
5.利用者が沈黙した時には、黙って待つことも大切です。
Hさん(75歳、男性)は、脳梗塞(cerebralinfarction)を発症して入院し、後遺症として左片麻痺が残った。退院後、介護老人保健施設に入所し、在宅復帰を目指してリハビリテーションに取り組んでいる。ある日、HさんはJ介護福祉職に、「リハビリを頑張っているけれど、なかなかうまくいかない。このままで自宅に戻れるようになるのか…」と暗い表情で話しかけてきた。
このときの,Hさんに対するJ介護福祉職の共感的な応答として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第31回介護福祉士国家試験)
1.「不安な気持ちに負けてはいけません」
2.「きっと自宅に戻れますよ」
3.「Hさんが不安に思う必要はありません」
4.「不安に思っているHさんがかわいそうです」
5.「リハビリがうまくいかなくて不安なのですね」
正解5
介護職の共感的な対応は、カウンセリング技法の「感情の反射」に通じます。
「感情の反射」とは言葉のなかに含まれている相手の気持ちを受け止め、その気持ちを相手に言葉で伝え返すこと。感情の反射に期待される効果は以下のようなものがあります。
- 相手が自分の気持ちをわかってくれていると思ってくれる
- 相手の口から自分の気持ちを聞くことで気づきにつながることがある。
- 自分の気持ちを伝え返されることで、気持ちの吟味ができることがある。
選択肢4は共感的ではなく、同情的です。
次の事例を読んで、答えなさい。(第31回介護福祉士国家試験改)
〔事例〕
Kさん(75歳、女性)は、小学校教諭を定年退職した後,しばらく趣味やボランティア活動を楽しんでいたが、認知症(dementia)を発症し、介護老人福祉施設に入所した。見当識障害や記憶力低下がみられた。入所後、初めて息子夫婦が面会に来た。Kさんは息子に向かって、「ここで、国語を教えているの」と嬉しそうに語った。Kさんの病状は進み、自分から話すことはほとんどなくなり、こちらの問いかけにも応えたり応えなかったり、という状況になった。 このようなKさんとコミュニケーションをとる方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.沈黙を守る。
2.表情を一定に保つ。
3.開かれた質問を使う。
4.ボディタッチを増やす。
5.コミュニケーションノートを使う。
正解4
1.自分から話すことがほとんどなくなっているKさんに、沈黙を守ればコミュニケーションが成り立たなくなってしまいます。
2.介護福祉職の感情が伝わりにくくなり、不適切です。
3.自分からほとんど話さず、こちらからの問いかけに応えたり答えなかったりという様子のKさんに対して、自由な返答を求める開かれた質問は不適切です。
4.優しく触れることで、共感やいたわりの気持ちを伝えることができます。
5.認知能力が低下しているKさんに対し、文字を使ったノートでのコミュニケーションはうまくいかない可能性が高い。
Lさん(30歳、女性)は、パートタイムで仕事をしながら、自宅で母の介護をしてきた。ある日、母の訪問介護(ホームヘルプサービス)で訪れたM訪問介護員(ホームヘルパー)に対して、Lさんは、「寝ている間に頭の中に機械が埋め込まれて、行動を監視されている」と興奮気味に訴えた。
このときのM訪問介護員(ホームヘルパー)の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第31回介護福祉士国家試験)
1.それは現実のことではないと説明する。
2.気にしなくてもよいと話をそらす。
3.Lさんの訴えを肯定も否定もせずに聞く。
4.監視されているのは間違いないと肯定する。
5.Lさんの感情に合わせて興奮気味に接する。
正解3
Lさんは統合失調症の妄想の症状であると考えられます。
統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなる病気です。そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には健康なときにはなかった状態があらわれる陽性症状と、健康なときにはあったものが失われる陰性症状があります。
陽性症状の典型は、幻覚と妄想です。幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられます。
陰性症状は、意欲の低下、感情表現が少なくなるなどがあります。
現実離れして理解できない言動や、幻覚・妄想があっても中立的な態度でかかわり、「それは違う」「それは間違いない」というような応答は避け、否定も肯定もせず、受容的かつ非審判的態度で接することが大切です。
叙述体を用いて介護記録を作成するときの留意点として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第31回介護福祉士国家試験)
1.情報を項目別に整理する。
2.問題のポイントを明確にする。
3.介護福祉職の解釈を記録する。
4.論点を明確にする。
5.利用者に起こったことをそのまま記録する。
正解5
叙述体は、時間の流れに沿って、利用者の状況の変化や支援の内容などを客観的に記録していく方法です。この記録法では、過去からの時間の流れに沿って、何がどのように変化したのかがわかるとともに、どの時点で何が行われたのか、いつ誰がどのようなことを行ったのかなどが明確になります。したがって、起こった出来事の前後関係が明確になり、その原因の分析や対応の妥当性を検証することなどが可能になります。
参考テキスト⇒介護記録の形式
1.記録を整理する上で有用ですが、叙述体の特徴としては、時系列で、連続した文章で記録するスタイルなので適当ではありません。
2.これも重要ですが、特に叙述体での記録に特有の要素ではありません。
3.叙述体での記録では、客観的な事実に基づく記録が求められ、個人的な解釈や意見は書きません。
4.一般的な記録の原則ですが、叙述体特有の要素とは言えません。
介護福祉職が行う報告の留意点に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第31回介護福祉士国家試験)
1.報告するときは、自分の意見を最初に述べる。
2.予定より時間がかかる業務であっても、完了後に報告する。
3.起こった事実は、抽象的な言葉で報告する。
4.指示を受けた業務の報告は、指示者に行う。
5.自分の推測を、事実であるとみなして伝える。
正解4
1.報告するときは、まず結論を先にのべると伝わりやすい。
2.予定より遅れる旨の連絡を入れる必要があります。
3.具体的な言葉で報告します。
直面化の技法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第32回介護福祉士国家試験)
1.利用者の感情と行動の矛盾点を指摘する。
2.うなずきやあいづちを用いて、利用者の話を促す。
3.利用者が話した内容を、整理して伝える。
4.利用者が話した内容を、別の言葉を使って簡潔に返す。
5.「はい」や「いいえ」だけで答えられる質問をする。
正解1
直面化は、利用者に、自分のテーマ(課題、悩み)はなにか気づいてもらうためのヒントを与えることです。利用者は、しばしば、問題の本質から目をそらすために、さまざまな心理的防衛(抑圧、合理化等)をします。
1.利用者が目をそらしている課題・悩みに気づくヒントになります。
2.「受容」です
3.「要約」です
4.「言い換え」です
5.「閉じられた質問」です
構音障害のある利用者とのコミュニケーションに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第32回介護福祉士国家試験)
1.閉じられた質問の活用を控える。
2.聞き取れないところは、再度言ってもらう。
3.はっきりと発音するように促す。
4.耳元で大きな声で話しかける。
5.筆談の活用を控える。
正解2
構音障害とは構音器官(口唇、舌、軟口蓋、咽頭、下顎など)の欠陥により、話す機能が障害された状態です。
構音器官の問題で話す機能が障害されているだけであり、言葉の理解に問題はありません。言葉にうなずいたり、聞き取れた通りに言葉を繰り返したりしながら、ゆっくりと話を聴く姿勢が大切です。
話が聞き取れないときは、わかったふりをするのではなく、筆談や五十音表、閉じられた質問を用いるなどして意思の確認をする必要があります。
1、5.筆談や閉じられた質問の活用は有効です。
3.障害があり、はっきりと発音できない人に、はっきりと発音するように促すのは不適切です。
4.構音障害は話す機能が障害されているだけであり、聴力に問題はありません。
次の事例を読んで、【A】【B】の問に答えなさい。(第32回介護福祉士国家試験)
〔事例〕
Jさん(20歳、男性)は、中度の知的障害を伴う自閉症(autism)があり、2か月前から就労継続支援B型事業所を利用している。Jさんは、日常生活に関することは自分の感情を伝えることができるが、他者の感情を読み取ることや抽象的な言葉の理解は苦手である。また、社会的な善悪に照らして自分の言動を判断することが難しい。
ある日、事業所で作業中にJさんが興奮して他の利用者を叩いた。介護福祉職は二人を引き離し、Jさんを個室に連れて行って対応した。
作業終了後、同居している家族にJさんの出来事を伝えた。家族はJさんに、「どうしてそんなことをするの。いつもだめなことばかりして」とイライラした口調で叱った。
【A】Jさんを個室に連れて行ったときの、介護福祉職のJさんに対する最初の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.「人を叩くのは許されません」
2.「相手の気持ちを想像しましょう」
3.「自分のしたことを反省しましょう」
4.「ここで話をしましょう」
5.「なぜ叩いてしまったのですか」
正解4
「社会的な善悪に照らして自分の言動を判断することが難しい」と書かれているので、人を叩いてはダメということの理解が難しいと考えられます。よって選択肢1と3は適当ではありません。また、「他者の感情を読み取ることや抽象的な言葉の理解は苦手」と書かれているので、選択肢2も適当ではありません。
選択肢4か5か迷うところですが、Jさんはなぜ個室に連れていかれたかわからないので、最初の言葉かけとしては4が適切です。その後に5のような質問に続けます。
【B】Jさんを叱った家族への介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.叱ることは正しいと支持する。
2.家族の対応は間違っていると否定する。
3.Jさんへのこれまでの対応や思いを聴く。
4.家族の対応には介入せずに黙認する。
5.介護福祉職の指示どおりに対応するように伝える。
正解3
「イライラした口調で叱った」と書かれており、家族のストレスが伺えます。Jさんへのこれまでの対応や思いを聴くことで、家族の感情や困難を理解し、適切なサポートを提供するための情報を得ることができます。また、家族との信頼関係を築くことにも役立ちます。
1.設問に書かれているような叱り方は不適切ですが、家族にしかわからない苦しみもあるので、ここでは、肯定も否定もしない態度をとることが適切です。同じ理由で選択肢2も✖です。
4.家族の対応を無視しても、問題の解決にはなりません。
5.介護福祉職は、Jさんやご家族へ助言することはできますが、対応を指示する権限はありません。また、家族の感情も十分に考慮していない可能性があり、適当ではありません。
次の事例をよんで、【A】【B】について答えなさい。
〔事例〕
Kさん(80歳、男性)は、中等度の認知症(dementia)があり、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に入居中である。16時頃、KさんがL介護福祉職に、「仕事は終わりました。家に帰ります」と伝えてきた。その後、L介護福祉職がKさんの居室を訪問すると、Kさんは、「早く家に帰らなくては…」と言いながらタンスから衣類を取り出していた。
【A】介護福祉職が居室を訪問したときに、最初にとる対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.衣類をタンスへ戻すように促す。
2.居室から出ないようにお願いする。
3.ここに入居したことを覚えていないのかと質問する。
4.ここは仕事場ではないことを説明する。
5.挨拶しながら表情や行動を観察する。
正解5
認知症対応では、利用者の主観を受容することが重要です。中等度の認知症で、本当に仕事を終えて、家に帰ろうと思っているということを考慮すると、選択肢1~4は不適切です。
【B】客観的事実を表す介護記録として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.16時頃、「仕事は終わりました。家に帰ります」という発言があった。
2.自宅のことが心配になって「家に帰る」という発言があった。
3.不安時に無断外出が心配されるため、様子の観察が必要と考える。
4.認知症(dementia)が悪化し、ここがどこなのかを理解していないようだ。
5.帰宅願望があたったが、特に問題はなかった。
正解1
1.見聞きしたことをそのまま具体的に記録してあり客観的事実です。
2.「自宅のことが心配になって」は介護福祉職の想像です。
3.これは介護福祉職の主観です
4. 以前の様子が書かれていないので、認知症が悪化しているかどうかわかりません。介護福祉職の推測であり、客観的事実ではありません。
5.「帰宅願望があたった」という表現は、Kさんの内面的な欲求や思いを介護福祉職が解釈したものです。実際にKさんが「家に帰りたい」と思っているのかどうか、何かをしたいために家に帰ろうとしているのか、Kさん自身から直接言葉で表現されない限り、明確には分かりません。
さらに、「特に問題はなかった」という部分も介護福祉職の判断や見解を述べているに過ぎず、客観的な事実の記録とは言えません。
介護福祉職が利用者と信頼関係を形成するためのコミュニケーション技術として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
1 利用者の意見に賛成できなくても同意する。
2 「〇〇ちゃん」と親しみを込めてお互いを呼び合う。
3 介護福祉職からは質問をせずに受け身の姿勢で聞く。
4 介護福祉職の価値判断に従ってもらう。
5 介護福祉職自身の感情の動きも意識しながら関わる。
正解5
1.例えば、「コロナなんかうつらないから買い物に行きたい」など、利用者がそういう意見、気持ちを持っているということは受け止める必要がありますが、同意できない場合もあります。
2.利用者の家族が不快に思う場合もあるので、これは不適切です。
3.受け身の姿勢で聞き役に徹した方がいい場合もありますが、質問することでコミュニケーションが深まる場合もあるので、適当ではありません。
4.基本は利用者主体で、利用者の自己決定を尊重した支援を行う必要があります。
5.これは適切です。介護の仕事をやっていてイライラしたことがないって人はほぼいないと思います。自分の感情を意識することで、イライラして、感情的になりそうなら、他のスタッフにスイッチするなどできます。
次の事例を読んで、【A】【B】の問い答えなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
〔事例〕Fさん(85歳、女性)は中等度の認知症(dementia)がある。同居していた娘の支援を受けて生活してきたが、症状が進行してきたために、介護老人福祉施設への入所が決まった。入所当日、介護福祉職はFさんの付き添いで娘が来た時に初めて会った。介護福祉職が、「はじめまして、よろしくお願いします」と挨拶をすると、娘は少し緊張した様子で、「お願いします」とだけ答えた。娘は、介護福祉職の問いかけに応えるまで時間がかかり、また、あまり多くを語ることはなかった。持参した荷物の整理を終えて帰宅するとき、娘が寂しそうに、「これから離れて暮らすんですね」とつぶやいた。
【A】
初対面の娘と関係を構築するために介護福祉職がとる対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 友人のような口調で話す。
2 相手のペースに合わせて、表情を確認しながら話す。
3 会話が途切れないように積極的に話す。
4 密接距離を確保してから話す。
5 スキンシップを用いながら話す。
正解2
1.初対面で友人のような口調で話すと、相手に不快感を与える可能性があるので不適切です。
2.これは適切です。
3.Fさんの娘さんのペースに合わせる方が適切です。
4.初対面で密接した距離で話すと、相手に不快感を与える可能性があるので不適切です。
5.これも初対面では不快感を与える可能性があるので不適切です。
【B】
帰宅するときの娘の発言に対する、介護福祉職の共感的な言葉がけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「心配しなくても大丈夫ですよ」
2 「私も寂しい気持ちは一緒です」
3 「元気を出して、お母さんの前では明るく笑顔でいましょう」
4 「お母さんに毎日会いに来てください」
5 「お母さんと離れて暮らすと寂しくなりますね」
正解5
この言葉がけは娘の寂しさに共感を示しており適切です。
1.この言葉は安心させようとするものですが、娘の現在の感情や寂しさに直接的に共感しているわけではないので、適当ではありません。
2.介護職員は別に寂しくありません。
3.励ましている感じはありますが、娘の寂しさに共感的ではありません。
4.娘の生活状況がわからないので、適当ではありません。また、娘の寂しさに直接的に共感しているわけでもありません。
Gさん(55歳、男性)は父親と二人で暮らしている。父親は週2回通所介護(デイサービス)を利用している。Gさんは父親が夜に何度も起きるために睡眠不足となり、仕事でミスが続き退職を決意した。ある日、Gさんが介護福祉職に、「今後の生活が不安だ。通所介護(デイサービス)の利用をやめたいと考えている。」と話した。Gさんが「利用をやめたい」と言った背景にある理由を知るためのコミュニケーションとして最も適切なものを1つ選びなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
1 開かれた質問をする。
2 「はい」「いいえ」で答えられる質問をする。
3 介護福祉職のペースに合わせて話してもらう。
4 事実と異なることは、訂正しながら聞く。
5 相手が話したくないことは、推測して判断する。
正解1
1.デイサービスの利用をやめた方がGさんの負担が増えるので、その理由を知るために、自由に答えてもらう開かれた質問をするのは適切です。
2.理由を知りたいので、閉じられた質問より、選択肢1の開かれた質問の方が適切です。
3.Gさんのペースに合わせた方が、Gさんが話しやすいので適切ではありません。
4.訂正しながら聞くことで、Gさんが話す意欲を低下させる可能性があります。事実と異なっていても、まず、否定も肯定もせずに最後まで聞くことが重要です。
5.推測で判断するのは適切ではありません。
利用者と家族の意向が対立する場面で、介護福祉職が両者の意向を調整するときの留意点として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
1 両者が話し合いを始めるまで発言しない。
2 利用者に従うように家族を説得する。
3 利用者と家族のそれぞれの意見を聞く。
4 家族の介護負担の軽減を目的にして調整する。
5 他職種には相談せずに解決する。
正解3
利用者と家族が対立する場合は、どちらかの意見を通すのではなく、両者の意見を聞いて、両者が納得できる落としどころを調整するのが基本です。
運動性失語症のある人とコミュニケーションを図るときの留意点として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
1 絵や写真を使って反応を引き出す。
2 大きな声で1音ずつ区切って話す。
3 手話を使うようにする。
4 五十音表でひらがなを指してもらう。
5 閉ざされた質問は控える。
正解1
運動性失語症(ブローカ失語症)は、イメージが言葉になる過程で障害が起こり、話すことがうまくできず、文字を書くことができません。
ただし、言語の理解は比較的保たれているため、閉じられた質問や絵や写真などの視覚化された情報の活用が有効です。
また、文字を読む能力も比較的良好なことが多く、ひらがなよりも漢字を読むことの方が得意であることが多いといわれています。
1.適切です。
2.聴覚に障害があるわけではないので、逆にわかりにくいです。
3.言語の理解は比較的保たれていて、聞いて理解することはできるので手話は必要ありません。
4.自分の頭の中のイメージを言語にすることが難しいので、適切ではありません。
5.むしろ閉ざられた質問の方が答えやすいです。
介護記録を書くときの留意点として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
1 数日後に書く。
2 客観的事実と主観的情報は区別せずに書く。
3 他から得た情報は情報源も書く。
4 利用者の気持ちだけを推測して書く。
5 介護福祉職の意見を中心に書く。
正解3
1.時間が経つと記憶がぼやけてしまうので、できるだけ当日に記録します。
2.区別する必要があります。
3.これは適切です。主治医からの情報なのか、家族からの情報なのかで判断が変わってきます。
4.気持ちだけを推測して書くのは、不正確である確率も高く、適切ではありません。主観を入れて書く場合は、利用者の発言や行動と合わせて書くことが必要です。
5.介護記録は、利用者に対しての客観的事実を中心に書くのが基本です。
報告者と聞き手の理解の相違をなくすための聞き手の留意点として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第33回介護福祉士国家試験)
1 受け身の姿勢で聞く。
2 腕組をしながら聞く。
3 同調しながら聞く。
4 不明な点を確認しながら聞く。
5 ほかの業務をしながら聞く。
正解4
一般常識問題です。
介護福祉職が利用者とコミュニケーションをとるときの基本的な態度として、最も適切なものを1つ選びなさい。(第34回介護福祉士国家試験)
1.上半身を少し利用者のほうへ傾けた姿勢で話を聞く。
2.利用者の正面に立って話し続ける。
3.腕を組んで話を聞く。
4.利用者の目を見つめ続ける。
5.緊張感が伝わるように、背筋を伸ばす。
正解1
この姿勢は、利用者の話をしっかりと聞いていること、また関心を示していることを伝えるものとして、コミュニケーションの際に推奨される姿勢の一つです。
2.参考 ➡ 対面法と直角法
3.威圧感を与えるため適切ではありません。
4.適度なアイコンタクトはコミュニケーションの際に重要ですが、持続的に見つめ続けることは、圧迫感を与える可能性があります。なので適度に視線をそらすようにすることが必要です。
5.緊張感を与えず、リラックスした状態でコミュニケーションをとれるほうが望ましいです。
介護福祉職によるアサーティブ・コミュニケーションとして、最も適切なものを1つ選びなさい。(第34回介護福祉士国家試験)
1.利用者の要求は、何も言わずにそのまま受け入れる。
2.利用者から苦情を言われたときは、沈黙して我慢する。
3.利用者を説得して介護福祉職の都合に合わせてもらう。
4.介護福祉職の提案に従うことが利用者の利益になると伝える。
5.利用者の思いを尊重しながら、介護福祉職の意見を率直に伝える。
正解5
アサーティブ・コミュニケーションは、相手の気持ちや立場を尊重し、異なる意見を受け止めながらも、自分自身の気持ち・意見・主張についても正確に、率直に伝えるコミュニケーション方法です。
またノン・アサーティブ・コミュニケーションは、自分の考えや気持ちを言わずに黙って我慢したり相手の言いなりになったりして、相手を優先しようとするコミュニケーションの方法です。
1.これはノン・アサーティブ・コミュニケーションです。
2.これはノン・アサーティブ・コミュニケーションです。
3.4.これらはアグレッシブ・コミュニケーションです。
アグレッシブ・コミュニケーションは、自分の考えや気持ちを一方的に主張したり、相手に対して威嚇的な態度をとったりして、自分を優先しようとするコミュニケーションの方法です。
選択肢3の「利用者を説得して介護福祉職の都合に合わせてもらう」は、自分の都合や意見を他者に押し付ける様子を示しています。これは自分の権利や意見を優先して、他者の感情や権利を尊重しない姿勢となるため、アグレッシブ・コミュニケーションと言えます。
選択肢4の「介護福祉職の提案に従うことが利用者の利益になると伝える」も、自分の考えや提案が最も良いと断定し、それを他者に受け入れさせようとする態度を示唆しています。このような一方的なアプローチは、他者の意見や権利を尊重していないため、アグレッシブ・コミュニケーションと言えます。
次の事例を読んで、ABの問に答えなさい。(第34回介護福祉士国家試験)
【事例】
Jさん(75歳、男性)は先天性の全盲である。これまで自宅で自立した生活をしてきたが、最近、心身機能の衰えを感じて、有料老人ホームに入居した。施設での生活にまだ慣れていないので、移動は介護福祉職に誘導してもらっている。ある日、介護福祉職がJさんを自室まで誘導したときに、「いつも手伝ってもらってすみません。なかなか場所を覚えられなくて。私はここでやっていけるでしょうか」と話してきた。
【A】
Jさんの発言への介護福祉職の共感的理解を示す対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.Jさんの発言にうなずく。
2.Jさんの発言のあと沈黙する。
3.Jさんの話の内容を短くまとめて伝える。
4.Jさんの立場に立って感情を推し測り、言葉で表現して伝える。
5.Jさんの気持ちが前向きになるように、励ましの言葉を伝える。
正解4
共感的理解とは、相手の立場や感情を深く理解し、その感情や考えを尊重する態度を持つことです。
1.うなずくことは傾聴の姿勢ではありますが、全盲のJさんには伝わりません。
2.全盲のJさんにはジェスチャーや表情は伝わりません。発言のあと沈黙してしまうのは共感的な態度とはいえません。
3.これは要約で、共感的理解を示す対応ではありません。
5.励ましの言葉も大切ですが、共感的理解とは少し異なります。この場合、Jさんの現在の感情や悩みをそのまま受け入れるのではなく、前向きな方向へと導こうとする態度が示されています。
【B】Jさんの不安な気持ちを軽くするための介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.いきなり声をかけると驚くので、肩にふれてから挨拶をする。
2.誘導時の声かけは歩行の妨げになるので、最小限にする。
3.角を曲がるときには、「こちらに」と方向を伝える。
4.トイレや食堂などを、一緒に歩きながら確認する。
5.食堂の座席は、Jさんの好きなところに座るように伝える。
正解4
実際に自分の感覚で歩いてもらってトイレや食道の場所を確認できると、不安の軽減につながります。
1.これは逆で、いきなり体に触れる方が驚いてしまうため、声をかけてから肩などに触れるようにします。
2.周囲の状況を具体的に伝えてもらう方が安心できるため、最小限ではなく必要に応じて声をかけなければなりません。
3.「こちら」や「あれ」などの指示代名詞では視覚障害者には伝わらないため、右、左、直進5メートルというように具体的に伝えることが重要です。
5.施設での生活にまだ慣れていない状況では、好きなところに座れと言われてもとまどってしまいます。Jさんの希望を聞いて適切な席に誘導することが必要です。
次の事例を読んで、ABの問に答えなさい。(第34回介護福祉士国家試験)
【事例】
Kさん(83歳、女性、要介護3)は、10年前の脳出血による後遺症で高次脳機能障害がある。感情のコントロールが難しく、興奮すると大声をあげて怒りだす。現在は、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用しながら、自宅で長男(60歳)と二人暮らしをしている。
長男は、会社を3年前に早期退職し、Kさんの介護に専念してきた。顔色が悪く、介護による疲労を訴えているが、「介護を続けて、母を自宅で看取りたい」と強く希望している。別居している長女は、長男の様子を心配して、「母親の施設入所の手続きを進めたい」という意向を示している。
【A】
訪問介護員(ホームヘルパー)が、興奮しているときのKさんとコミュニケーションをとるための方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.興奮している理由を詳しく聞く。
2.興奮することはよくないと説明する。
3.冷静になるように説得する。
4.事前に作成しておいた日課表に沿って活動してもらう。
5.場所を移動して話題を変える。
正解5
高次脳機能障害で感情のコントロールが難しいと書かれているので、興奮している状態のとき、選択肢1~4のように理由を聞いたり、説明したり、説得したり、日課の活動をしてもらうというようなことは難しいと考えられます。
場所を移動し、話題を変えることで、落ち着く可能性があるので選択肢5が他の選択肢と比べてベターです。
【B】
長男に対する訪問介護員(ホームヘルパー)の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.長男自身の意向を変える必要はないと励ます。
2.Kさん本人の意向が不明なため、長男の希望は通らないと伝える。
3.これまでの介護をねぎらい、自宅での看取りを希望する理由を尋ねる。
4.自宅での生活を継続するのは限界だと説明する。
5.長女の言うように、施設入所の手続きを進めることが正しいと伝える。
正解3
長男のこれまでの介護を肯定し、ねぎらうことが信頼関係の形成につながります。
1.長女は施設入所を望んでおり、意見が異なるため、家族で相談する必要があると考えられます。
2.Kさん本人の意向が不明なのはその通りですが、長男の希望が通らないかどうかもわからないので適切ではありません。
4.長男は介護を継続して、自宅で看取りたいと強く考えているため、一方的に限界だと伝えるのではなく、その意思を尊重しつつ、今後どうすればよいのかを話し合う必要があります。
5.長男の希望を全否定することになり、適切ではありません。
利用者の家族から苦情があったときの上司への報告に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第34回介護福祉士国家試験)
1.苦情の内容について、時間をかけて詳しく口頭で報告した。
2.すぐに口頭で概要を報告してから、文書を作成して報告した。
3.結論を伝えることを重視して、「いつもの苦情です」とすぐに報告した。
4.上司が忙しそうだったので、同僚に伝えた。
5.自分の気持ちが落ち着いてから、翌日に報告した。
正解2
まずは要点をまとめて完結に伝え、詳しい内容は文書等で報告するようにします。
1.いきなり事細かに時間をかけて報告するのではなく、まず要点を簡潔に伝えることが重要です。
3.「いつもの苦情です」というのは報告者の主観が入っているので、状況や理由などを客観的に報告しなければなりません。
4.苦情の内容は、同僚ではなく上司に伝えるべきなので、適切ではありません。
5.対応が遅いと、利用者家族の不満も強くなるので、苦情の内容は、時間をおかずにできるだけ早く上司に報告する必要があります。
利用者の自宅で行うケアカンファレンスに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。(第34回介護福祉士国家試験)
1.検討する内容は、インフォーマルなサポートに限定する。
2.介護福祉職の行った介護に対する批判を中心に進める。
3.利用者本人の参加を促し、利用者の意向をケア方針に反映させる。
4.意見が分かれたときは、多数決で決定する。
5.対立を避けるために、他の専門職の意見には反論しない。
正解3
利用者のニーズや意向を聞き出し、適切なケアを行うためにも、利用者自身やその家族が参加することは重要です。
1.インフォーマルなサポートは、家族や近所の人などのサポートで、フォーマルなサポートは介護サービスなどです。適切なケアを行うためにはどちらも検討する必要があるので、この選択肢は不適切です。
2.ケアカンファレンスの目的は、批判ではなく、利用者によりよいケアを提供できるように検討する場です。
4.ケアカンファレンスでは、多数決よりも共同での合意形成が求められます。利用者の最善の利益を考慮しながら、参加者全員の意見や専門的な知識を活用して合意を形成することが重要です。
5.各専門職が持っている知識や経験を最大限に活用するためには、オープンな意見交換が必要です。